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なんでも口に入れる子ども

なぜ赤ちゃんは、なんでも口に入れるの?

赤ちゃんが何でも口に入れるのは、世界を探索するための発達過程の一部です。赤ちゃんの口は非常に敏感で、目や手に比べてより多くの感覚情報を集めることができるのです。



生後4~6ヵ月:ものをつかんで、口に運べるようになる

生後4~6ヵ月ごろになると、手の協調運動と筋力が発達し、手で物をつかんで口に運び、探索することができるようになります。この行動によって、赤ちゃんは物の大きさ、硬さや柔らかさ、味、形などを知ることができ、脳に感覚運動発達のための追加情報を与えます。

生後6~11ヵ月:最も口に入れる時期

このような物を口にいれる探索行動は、生後6ヶ月から11ヶ月頃に最も多く見られます。

1歳半から2歳頃:口ではなく、手を使うようになる

1歳半から2歳頃になると、手の協応が徐々に発達し、手が物体を探索する主な手段となるため、口を使った探索行動は減少します。

また、成長とともに、言語能力や認知能力も発達し、物体をより効果的に理解できるようになり、さまざまな探索手段を使えるようになってきます。

2歳をすぎても、なんでも口にするのはなぜ?

この記事では、2歳を過ぎても口腔感覚を求め続ける子どもがいる理由を探り、食べ物以外のものを口に入れる理由と、それをサポートする方法について説明します。

日本の文献と海外の文献の内容の違い

英語で書かれている最近の文献では、幼児のなんでも口に入れてしまう行動、口唇口腔感覚を求めて、指をしゃぶったりする行動は、2歳以降はやめさせるべきであるとなっています。

日本の文献(育児、心理系)では「5、6歳までには自然に治る」という内容が多いようです。しかし、小児歯科のウェブサイトでは、早期に指しゃぶりをやめさせるべきだとしています。

ここでは主に英語の文献で紹介されていた、口の中にモノを入れる弊害と、その対処法について書いていきます。

2歳をすぎても、食べ物以外のものを口に入れる理由は?

赤ちゃんが自分の周りの世界を探検しようとするとき、物を口に入れるのは自然なことです。しかし、2歳を過ぎても、なんでも口に入れてしまう子がいます。なぜなのでしょう?

1. 発達に遅れがあるため

2歳をすぎてもまだ、使って探索している場合、その原因は発達の遅れが原因かもしれません。

「実年齢」と「脳の発達年齢」の差

例えば、実年齢が3歳であっても、脳の発達が1歳半程度である場合、1歳半の子と同じように、頻繁にモノを口の中に入れ、口を使って探索しているかもしれません。
子どもの行動は通常、実年齢よりも、発達年齢を反映しています。ですから、この場合、同年齢の子供と比較すると、発達により時間が必要かもしれません。

2. 自分を落ち着かせるため

 吸うことはとても落ち着きます。赤ちゃんが自分を落ち着かせ、調節するために使います。物を噛んだり親指をしゃぶったりする行為は、どんな状況や未知の事態に直面しても、自分を落ち着かせ、衝動や感情を自分で鎮めるのに役立ちます。
ですから、2歳以降も指しゃぶりを続ける子は多いです。これは子供が、動揺している、疲れている、圧倒されているサインかもしれません。また、自分自身を落ち着かせるための、その他の方法を知らないためかもしれません。

3. 歯並びに問題

歯並びに問題がある場合もあります。 歯が生えてくるところなのかもしれませんし、虫歯や感染症の兆候である可能性もあります。 特に指しゃぶりの癖が2歳以降も続く場合、今後の歯の健康のためにも、歯科医の診断をお勧めします。

詳しくはこちら。

4. 異食症

異食症の子供は、食べ物だけでなく、あらゆるものを口に入れます。 タバコの吸い殻、レゴ、土、石など何でもです。 このような子供たちは、食べられるものとそうでないものの区別がつきません。

学習障害と異食症

調査によると、学習障害のある人の4%から26%に異食がみられ、学習障害の程度が重くなるほど、異食が起こる可能性は高くなります。 米国立自閉症協会は、異食が起こる理由として、医学的、食事的、感覚的、行動的なものが考えられると指摘しています。

異食症とは?
食物ではないものを執拗かつ強迫的に摂取する病状です。土、粘土、チョーク、髪の毛、紙、石鹸、絵の具の欠片、布、その他の食べられないものなど、通常食べ物とはみなされないものを「食べたい」という強い異常な渇望を持ちます。異食症はあらゆる年齢の人に見られますが、幼児、妊婦、特定の発達障害、知的障害、精神疾患を持つ人に最もよく見られます。

5.  感覚処理に問題がある場合

感覚処理に問題のある子どもや自閉症の子どもは、口唇・口腔感覚を求めて、吸ったり噛んだりできるものを積極的に求める傾向があります。
先に述べたように、吸ったり噛んだりする行動には、自分をなだめたり落ち着かせたりする効果があります。特に、顎は人体で最も強力な筋肉のひとつであるため、これらの行動は脳に強い固有感覚を生み出します。

そのため、刺激に敏感すぎて脳が圧倒されたり、あるいは刺激をあまり感じられないなど、感覚をうまく処理できない時に、モノを口にいれることがあります。

ものを口に入れる行動が、成長を阻害する

1. 運動機能(微細運動)の発達を妨げる

過度に口の感覚に依存し、年齢相応の探索を行わないと、手や指先の発達が妨げられる恐れがあります。手や指先のさまざまな感覚を使って物を探索する機会を逃してしまうため、微細運動だけでなく、全体的な認知の発達に影響を及ぼす可能性があります。

2. ボーっとしながら鉛筆を噛むのは、学習や発達の問題が隠れているサインかも

例えば、授業中に、子供が服の襟元や鉛筆のお尻を噛みながら、ぼーっとしている頻度が高い場合、潜在的な発達の問題があるのかもしれません。

3. 物の破壊

このような子供のクセを矯正しないまま続けていると、鉛筆、おもちゃが、噛みすぎによって壊れたり、すべての洋服が擦り切れたり穴が空いてしまうことがあります。

4. 社会的な影響

成長するにつれて、物を口に入れる行動は、社会的に不適切とみなされるようになります。これが仲間との交流や社会活動に支障をきたし、社会性の発達や他人との関係に影響を及ぼす可能性があります。仲間からからかわれたり、自尊心が傷つく体験をするかもしれません。

対処法

子供が口に物を入れたり、食べ物以外のものを口に入れたりする根本的な理由(医学的な理由、感覚的な理由、自慰的な理由など)を探り、まずはできることから対処していきましょう。

1. 力仕事/重たい物を持つ

顎の筋肉は人間の体の中で最も強い筋肉の1つであるため、子供は噛むことによって強い圧力が入力されます。ですからもし子供があらゆるモノをかじってしまいがちなら、深い圧力の口腔感覚入力を求めているのかもしれません。子供の毎日のルーチンに、買い物荷物を運んでもらったり、などのいくつかの重労働活動を取り入れたり、力を入れる必要がある遊びをしてみましょう。
こうすることで、必要な深い圧力がその特定の活動から入力されるため、常に噛む行動を置き換えるのに役立ちます。

2. 噛みごたえのある食べ物を与える

噛みごたえのある硬い食べ物は、子どもが求めているのと同じような深圧感覚を与えることができます。おせんべい、リンゴ、ナッツ、生野菜スティックなど、健康的なチューインガムなど歯ごたえのある食べ物や噛み応えのある食べ物は、最適な選択肢のひとつです。

スパイシー、酸っぱい、ミントのような風味の強いものや、噛みごたえのあるグミなども良い選択肢ですが、お子さんが口にする量には注意が必要です。

また、ヨーグルトなどの濃い液体をストローで飲ませるなど、強くストローで吸うことによって、顎の筋肉を鍛えることができます。

3. 振動玩具や電動歯ブラシを使う

電動歯ブラシは、口腔内に強い感覚を与えるのに最適です。食べ物以外の代替刺激法に良いですが、このような歯ブラシを全く好まない子供もいます。

振動する歯ブラシやブルブル震えるおもちゃは、子供が求めている深い圧力の口腔感覚を与えることができます。

4. 楽しい遊びを利用する

シャボン玉を吹いたり、笛を吹いたり、風車を吹いて回したり、風船を膨らましたりなどなど、口腔活動領域からの深圧入力を増やすと同時に、食べ物以外のものを噛んだり吸ったりするときの抵抗力を高めるのに役立ちます。


まとめ

赤ちゃんが物を口に入れる行動は、世界を探検する発達過程の一部であり、2歳までには一般的な振る舞いです。しかし、2歳を過ぎてもこの行動が続く場合、発達の遅れ、自己落ち着きの必要性、歯の問題、感覚処理の障害、または異食症の可能性が考えられます。それぞれの原因に対応するために、子供たちをサポートする様々な対策が存在します。子供の成長と発達を理解し、個々のニーズに合った適切な支援を提供することが重要です。


Reference


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