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先延ばし癖と真剣に向き合ってみる

※今回はいつもより長めです。スクロールして全体像を眺めてから読むことをおすすめします。まとまった時間がとれるときに読んでみてください。


久しぶりのnoteです!

noteはいつも書きたいけど優先順位が低いため、書き出しては途中で離脱するということを繰り返していました(書きかけの記事多し)。

このnoteもめちゃくちゃ先延ばしした挙句書かれたものです。当事者性抜群だね。


ADHDとしての中心的な問題って何だろう?と考えてみると、やっぱり先延ばし癖について考えることは避けては通れないかなと思います。

やる気が出ないから、気持ちが乗らないから、目の前に気になる事があるから、頭ではやるべきことを分かっているのに、どうしても着手できず、気付けば締め切り直前になって、もういいやと50-60%くらいの完成度での提出を目指しざるを得なくなり、過去ぐうたらしていた自分を恨むということを繰り返してしまう。酷い時は締め切りに間に合わすことができず、社会的信用を落としてしまうことも

やる気の出ないことは、極力やめちゃえばいいよと思う反面、どんなに自分に合った良い環境にいたところで、興味のないタスク、やる気の出ないタスクは降ってくるわけで、それらとどう上手く付き合っていくか考える必要が出てきます(以下、個人や組織における目標や目的を遂行するためにやるべき課題や仕事のことを、ここではタスクと呼ぶこととします)。

薬の効果で浮き彫りになった「先延ばし」癖

Twitterでちょこちょこ言及しているようにコッピーちゃんはADHDのお薬を飲んでいます。コンサータと比較した結果、効果が持続するため特発的な眠気が出にくいかつ勉強する時との相性が良かったアトモキセチンを使用しています。

アトモキセチンは、うっかりミスが多い、授業に集中できない、やりたいことがあると深く考えず衝動的に始めてしまう(そして発生したタスクにあとあと後悔する)といった、いわゆるADHD の症状として謳われるような「不注意・衝動性・衝動性」には効果を実感しました。良くも悪くもあらゆる行動にブレーキがかかりやすくなった気がします。勢いで移住してみたり、起業するなどのような大胆な行動を取るような可能性もない気がします。

一方で、そういうADHD症状が取り除かれた結果、困りごととして、やる気のコントロールの出来なさや、それによる先延ばしが浮き彫りになりました(自分を動かすアクセルとして薬を使いたいならば、コンサータの方が機能してくれるようです。私はお腹がくだってダメだったので諦めました)。

もちろんこれらも実行機能の役割なのでもともとあったADHD症状のひとつなのですが、今までは問題が渋滞しすぎていて、核の問題としてイマイチ知覚できていなかった気がします。
こればっかりは対策しなきゃどうにもならん、と腹を括るようになったわけです。

一般的に、やる気は待っていても生まれず、まず手を付けてみることが大事だなんて言われますが、その「手を付ける」に辿り着くまでの心理的ハードルが半端じゃない。

先延ばしに関する対策本を読んでみても、
「やると決めた時間に必ずやりましょう」「隙間時間を利用しよう」とかそれができたら対策本を手にしてないよ!と言いたくなることだったり、
「1日の行動を記録をしてみましょう」とかそれ自体のハードルが高く、相当の決意とリマインドが必要だったり
実行機能が上手く機能しないことで困ってるのに、実行機能を使って工夫しましょう!みたいな、そんなの無茶だよという無力感や苛立ちを感じてしまっていました。


ということで、なぜやる気が出なかったり、先延ばししてしまうのか?ということを出発点に、ADHDの脳の癖に合わせた対策について真剣に考えてみました!


1.報酬系の機能不全

これはよく指摘されていることなので、意識している方も多いかもしれませんが、ADHDの人は報酬系が正常に機能しにくいと言われています。

報酬系とは、『欲求が満たされたときや満たされるとわかったとき、あるいは報酬を期待して行動しているときに活性化し、快感をもたらす神経系。脳内報酬系』のこと(google辞書より)。

何らかの物質的・出来事的な報酬をゲットしたときに快楽を感じる脳の神経回路だと思ってください。

その報酬系が上手く機能しないと、以下のような問題が発生すると言われています。

報酬の強化が低下し報酬を魅力的と感じる効果が持続しない,遅れて得られる報酬を待つことが出来ず衝動的に代替行動を起こす(遅延回避),短期的に報酬を得る選択肢がない場合は他の事象に注意を逸らして「待つ」感覚を紛らわそうとする

獲得できる報酬が「イマイチだな…」と思っていると、楽をするとか目の前の快楽を優先させてしまう訳です。

目の前の快楽に逃避してしまう人は、逃避行動としてどのような癖があるか自覚する必要があるのでしょう。また取り除くだけでなく、その課題をなぜ自分がわざわざやりたいのか、得られる大きなメリットは何か、ということを意識することも大事だと考えられます。

さらによく言われている「自分への小さなご褒美を設定する」ということは、目の前に十分な報酬を作るという点で有効であるといえます。


2.時間的展望の持てなさ

まだまだ締め切りまで時間があると思っていたのにもう日数がない!気付いたら3日!というときがありますよね。発達心理学的には、これは「時間的展望」の持てなさから説明できると思います。

時間的展望とは、

レヴィン(Lewin, K.)「ある一定の時点における個人の心理学的過去および未来についての見解の総体」


と言われており、過去や未来をどのように捉えるかということが、現在の私たちに影響を与えるということを理解しているということです。
子どもの頃は、明日や来週などの短い期間しか思い描くことができない一方、青年期になると、半年後や来年、さらにより遠い将来のことをイメージすることができるようになります。

この時間的展望にはいくつかの側面があり、

①遠い未来や過去を想定すること、具体的で建設的・現実的な将来を想定することなどの側面

②過去や現在や未来に対する感情が肯定的か否定的かという時間的態度

③過去・現在・未来のどれが自分にとって重要かという時間的指向性

④時間の流れを速く感じるか遅く感じるかという時間知覚

の4つがあると指摘されています。

ADHD者における実行機能不全として注目されるような見積もりの立たなさは、①に該当していると考えられます。眺めてみると、④も関係ありそうですね。

締め切りにリアリティが持てなくて、いよいよやばい、という瞬間が訪れるまで動けないのならば、緩やかな拘束力を持つ小さな締め切りを作っておくことで(上司や先輩に約束をするとか)、焦りの感情がもう少し早く訪れるようになるかもしれません。

さらに「③過去・現在・未来のどれが自分にとって重要かという時間的指向性」について、


私は過去の出来事が浮かんできやすいです。記憶が連想ゲームのように取り出されやすく、またその時の感情も追体験しやすいので、非常に過去に囚われやすい傾向があるなと自覚しています。ということで、自分から過去を思い出して懐かしんだり後悔するまでもなく、過去の記憶と共に生きているので、過去にフォーカスしやすい(過去は重要であると感じている)と思います。さらに、未来の心配事に囚われ、精神状態が悪くなってしまい集中できないということもあると思います。

このような人は、現在というものがないがしろにされやすい、ということを自覚することが必要です。

たとえば、ブームになっているマインドフルネスでも「今この瞬間に集中しよう」というのは、そういう後悔や心配ごとに囚われることからいったん離れる必要があるからです。今この瞬間にフォーカスすれば、負の感情に支配されにくくなります(身体がめちゃくちゃ痛い!とかはあるかもしれませんが)。マインドフルネスは、怪しげに思えるかもしれませんが、呼吸の出入りに集中して、5‐10分程度今この瞬間を味わい、同時に思考の流れを観察しようというものです。ADHD症状を軽減する上でとくに効果があると言われています。

今この瞬間にフォーカスして、いったん過去や未来は置いておく、ということをすると、目の前のタスクに意外とすんなり向かえるようになるかもしれません。

3.能力不足であることが潜在的に分かっている

まだ早い早いと1日延ばしに延ばしておき、ある時期になると手のひらを返したように、もう遅い、なんとか一時しのぎの形式だけ整えようと焦る状態のことを「のんきとあせりの交替」と呼びます。

この状態の根底には、自信のなさや不安があると考えられています(準備を始め、問題に立ち向かうと自分の能力が明らかになってしまうから)。
タスクに対して自信がない、不安だという気持ちがあるために先延ばしにし、さらにそのことで時間が進んでしまい焦る、という悪循環が生じているわけです。

経験の無さで分からなくて、精神的ハードルが上がって先延ばししてしまっている時が確かにあるなぁと思います。

そして能力不足を自覚してそこをカバーできるなら良いのですが、不得意さと興味のなさは時に関連していたりします。

面白くないと思ってしまったことへの努力が苦手で、パフォーマンスが低くなりやすいという性質を自覚して、あらかじめそういう作業は回避する・断るというのも非常に大事だなと思っています。

ひとつのタスク自体は大したことなかったとしても、なんとなく後回しにして、それが積み重なった結果、大きなめんどくさいタスクが生まれてしまった…なんでこともあるのではないでしょうか。

4.過程の不透明性

発達障害の人は、時間的見積もりが分からないと不安感を覚える傾向にあります。合理的配慮のひとつとして、まず全体像を捉えさせるというものがあったりします。

自身の性質として、全体像が見えない状態で1ステップ踏み出すということが、非常にハードルが高いことであるということを自覚した方がいいかもしれません。

とりあえずやってみるというのももちろん大事だと思います。しかし、自分は何をやっているんだ??感が否めなくなってしまったり、細部に囚われているうちに気付いたらぜんぜん違うゴールのことをこなしていたり、ということが起きてしまう恐れがあります

どこまでやったか読んでみて、なにをすれば終わりとできるのか考えると、次の行動が分かって自然とやってみようと思えたりします。これはいわゆるタスクの細分化にあたります。細分化は、「取り組むための予定を作る」からスタートでいいし、もっと言えば「カレンダーを眺める」からタスクとして入れていいと思います。

その際、残りの日数じゃなくて実際に割ける時間を知る必要があります。日数的にはたくさんあっても何だかんだ忙しくて、そのタスクに取り組めるような時間がない!ということは多いはずです。

とにかく「これならできる」レベルのタスクをこなしている間に気分が乗ってくるということが目的です。

1人でタスクを書き出す難しさがあるときは、計画するプロセスを一緒に誰かに見てもらったり話しながら、コーチングや家庭教師のような役割をしてもらい、監視役を作ると進みやすくなると思います。


5.対処方略まとめ

以上の内容から考えられる先延ばしへの対策をまとめます。

【自分を上手く操縦するコツをつかむ】

⑴違うことをやりたくなる前提で、邪魔になりそうなものを取り除くようにする

 例:テレビ、スマホや漫画など逃避に使うツールを全て取り除く
 →誰かに取り上げてもらうか電源を切る

⑵途中で違うことをしたくなったら、いったんメモをしておいて後でやる癖をつける

 ⇒しつこく浮かんでくる負の感情も辛い出来事も、メモしておいて「よしよし、あとで相手してあげるからね」といったん置いておく

⑶みんなが集中していて、さすがに自分もやらないと気まずくなる場所に行く

 ⇒家を出るまでのプロセスをなるべく簡略化して外出のハードルを下げよう

⑷メリットを確認しながら(目の前に報酬を作りながら)自分を説得して取り組む

⑸今この瞬間にフォーカスする練習をする(マインドフルネス)


【他者のサポートを活用する】

⑹締め切り前の小締め切りを作り出してチェックしてもらう

⑺外注できる部分がないか探す(実行機能の外部委託)

 ⇒外注の仕組み作りに力を入れる

⑻タスクの細分化をすることを頑張る

 ⇒一人で出来ない場合に細分化プロセスをお手伝いしてもらう


終わりに

挙げた方略は、あれもこれもと張り切ってやろうとせず、まずはいくつかにフォーカスして試してみてください。

見ただけで、これは無理!ってなる対策もあるだろうし、先延ばし癖について悩んでる方は、割とずっと悩んでいろんな方法を試しながら試行錯誤されてこられたと思うので、実際だめだったものもあるでしょう。

どんなに足掻いてみてもできないことってやっぱりありますよね。同じ目標を掲げてトライしては失敗し、また「こんなんじゃだめだ!」となり改善しようとして失敗する。もう十分頑張ったよ、頑張った、この先延ばししないという目標自体が私に向いてないや、と思うこともあると思います。

金銭的余裕がある人ならば、やりたくないことは全部委託しちゃえばいいと本気で思ってます。委託先がないなら、簡単なアルバイトを創出しちゃえばいいと思っている。でもみんながみんな、そうもいかないわけで。

やる気が出る締め切りギリギリまで動かないことを見越して、他の作業の負担を減らしておくということも一つの手段です。

自分に向いているかも?と思う対策やそのヒントがひとつでも見つかり、生活の中に取り入れてみてもらえたら嬉しいです!


参考文献

八幡憲明, & 石井礼花. (2011). 報酬系を通した注意欠如・多動性障害の病態理解. 日本生物学的精神医学会誌, 22(4), 253-256.

山口昌澄. (2006). よくわかる青年心理学. 白井利明 (編) ミネルヴァ書房


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