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〈リサーチ編〉安全な建物の探し方~耐震診断について~

前回の記事では、建築基準法の耐震基準の変遷について書き、「旧耐震基準」より「新耐震基準」の方が建物としての安全性が高いことを書きました。
しかし、旧耐震基準だからといって、一概に危ない建物というわけでなく、「耐震診断」という方法により、その安全性を確認することができます。

耐震診断とは?

耐震診断とは、旧耐震基準で設計された既存の建物が、新耐震基準に相当する耐震性を有するかどうかを調査し、その安全性を確認する方法です。

「建築物の耐震改修の促進に関する法律(通称、耐震改修促進法)」という法律に定められており、学校や病院といった多くの人が利用する公共性の高い建物では、この耐震診断が義務付けられる場合もあります。

マンションや戸建のような個人住宅では耐震診断が義務付けられることはほとんどありませんが、所有者の判断により実施し、建物の安全性を確認することができます。

旧耐震基準の建物であっても、この耐震診断の結果、安全性が認められれば何も心配することはないのですが、大きな地震に対して安全性が低いという結果になることもあります。その場合は、「耐震改修」という手法で建物を補強することで、新耐震基準に相当する耐震性を確保することができます。

しかし世の中の実態としては、旧耐震基準の建物であっても、この「耐震診断」や「耐震改修」が実施されていないことの方が多いようです。

国土交通省による全国のマンションを対象とした「平成30年度マンション総合調査結果」によると、耐震診断、耐震改修の実施状況について下記のように報告されています。

旧耐震基準に基づき建設されたマンションのうち耐震診断を行ったマンションは34.0%となっており、そのうち「耐震性があると判断された」割合は40.8%であった。
また、「耐震性がないと判断された」マンションのうち、「耐震改修を実施する予定はない」割合は38.1%であった。

これを見ると、既存の旧耐震基準の建物で、耐震診断や耐震改修が実施され、安全性が確認されたものを見つけることは、なかなかハードルが高いように思えます。

ためしに大阪市内のマンションで、耐震診断実施済みのものを探してみました。HOME'SやSUUMOなどの大手不動産検索サイトでは、自由にキーワードを指定して物件を検索することができます。HOME'Sで「耐震診断」をキーワードに指定して検索したところ、下記の物件が見つかりました。

HOME'Sでの「耐震診断」のキーワード検索結果

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実際に検索してみると、耐震診断、耐震改修を実施しているマンションは少なく、上記の物件紹介文を見てわかる通り、不動産屋さんとしてはそれを物件の売りとしていることがわかります。

また、不動産取引の前に実施される「重要事項説明」において、「耐震診断の実施の有無」は不動産屋さんから買主に伝えなければいけない項目となっています。旧耐震基準の建物の購入を検討する際には、耐震診断について不動産屋さんに聞いてみるのがよいでしょう。

建物の安全性が日々の生活の安全や安心に直結するのはもちろんですが、資産として建物を考えた場合、頑丈な建物には高い資産価値があるといえるでしょう。次回は建物の安全性の他にも、「物件の資産性」という観点から記事を書いてみたいと思います。


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