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カンパネルラさよならなんて言わないで


何を見た?
何を観た?
何を聞いた?
何が聴こえた?

一列に並んでまちを歩く
ガタンゴトンと
まるで子供の
電車ごっこのように
歩む速度
流れる景色は
車窓からの眺めだった

町の人が手を振る
青空
すれ違う車
路地
宿場の屋号
神社
見る観る感じる考える
風景と言葉が流れていく
3人の車掌がやって来た瞬間
野沢駅待合室は
銀河ステイションに変わっている
遠くから聴こえるバイオリンとゲタの音
カランコロン
何かが?
誰かが? 
やってくる
旅はすでに始まっている


時間が濃縮されている
時計店である筈なのに
其処は食堂車だった

演者

観客
その中間のアナタであるワタシ
あちらとこちらとそちら
境界線が曖昧な程に白昼夢のように
TRIPする
わたしの非日常は誰かの地続きの日常 

シャボン玉が飛んでいる
子供達がシャボン玉だとはしゃいで
捕まえようと腕を伸ばす
なんの変哲もないシャボン玉を
幻想的だと意味を考えてしまう
乗客達は
あちらとこちら
その狭間を行ったり来たり
意味より今ここに

車掌達は一言も喋らなかった 
まちあるきのガイドたる説明も
乗客との軽妙洒脱なコミュニケーションも
前と後ろ
前と横と
常に一定の距離を保ち
身振り手振りで誘導する
止まって
ゆっくり
OKOK
一つ一つ 
手の滑らかな動きが丁寧で
不安は感じない
笑顔なのだろうと分かるからマスクの内側は
顔が見えなくても表情が見える
コロナ 渦 における
最大限のおもてなし
それを
体現しているようで

カコの部屋には
さよならが溢れていた
さよならだけが人生だ
なんて
左様なら
わたしは
生きているから
さようならが言えるんだ

ゲンザイの部屋には
混沌が溢れていた
みざるきかざるいわざる
愛と勇気だけが
友達だった
貴方の視線が痛い

ミライの部屋には。。


野沢から野沢へ旅をした
終着駅から
一歩踏み出した
さっきまでと変わらないはずなのに
違和を覚える
車窓から眺めていた町を
自らの足で歩きだしたときの
地に足がついた感覚

旅は時間や距離では測れない
120分で
おそらく
2キロメートルにも満たない距離を
確かに旅をしてきた


歩く
止まる
見上げる
音がなる
言葉が聴こえる

わたしの視点が車窓に変わった瞬間
銀河ステイション
さようなら

雨ニモマケズ 風ニモマケズ