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《サス経》今年初めの教訓

 おはようございます、レスポンスアビリティの足立です。今日の新月に合わせて今年初めてのメールマガジンをお送りします。今年もほぼ新月と満月に旬のサステナビリティに関する情報をお送りしますので、ご参考にしていただければ嬉しく思います。
#この書き出しでわかるように、この記事は今年最初に発行したメールマガジンの記事の転載です。

 個別にメールで年賀のご挨拶を差し上げた方も多いと思いますが、まだの方はこちらをご覧いただければと思います。
2024年 新春のご挨拶

 さて、今年は元日から能登半島で大地震が発生するなど、大変な始まりとなってしまいました。まだ行方不明の方が多くいらっしゃることに、そして非常に多くの方がこの極寒の中で困難な避難生活を余儀なくされていることを思うと、本当に心が痛みます。心からお見舞いを申し上げます。

 私たちは地震を含めて、つくづく天災が多い国に住んでいることを痛感せざるを得ません。私たちの社会の持続性を考えるときには、やはりこの天災という要素を考慮せざるを得ないでしょう。

 29年前の阪神大震災、そして13年前の東日本大震災、いずれも大変な被害を残しました。その犠牲が沢山の教訓を残し、私たちの社会はよりレジリエントに、そしてサステナブルになりつつあるのだと信じたいと思います。

生かされなかった教訓

 しかし現実にはその教訓の全てが生かされているわけではなく、残念ながら既に忘れ去られてしまったもの、あるいはうやむやにされているのではないかと疑われるものすらいくつかあります。

 その最大のものが原発です。言うまでもなく東日本大震災では、福島第一原発が地元の方々にはもちろん、そしてその電力を利用する地域にも、さらには風下を中心とした様々な地域に多大な被害を与えました。しかも恐ろしいことにその廃炉作業は思うように進んでおらず、一体いつまでかかるのか、またそのためにどれほどの費用が必要なのかすら判然としません。それどころか、場合によっては今後また二次災害が起きないとも限らない、綱渡りの状態が続いています。

 この事故をきっかけに全面的に脱原発に踏み切り、既にそれを完了した国もありますが、当の日本は、いつの間にか原発を復活させ、さらには当初の設計寿命よりも延長した運転を認める決定まで行っています。

 今回の地震が起きた時にも、やはり原発のことが心配になりました。本当に不幸中の幸いだったのは、今回もっとも大きな被害を受けた珠洲市の方々の英断です。珠洲市にはかつて珠洲原発の建設計画がありましたが、地元の方々の反対運動の結果、2003年に計画は凍結されています。地元の方々の先見の明に感謝するしかありません。

 もう一つ幸運だったことは、震度7に襲われた志賀原発はちょうど定期点検中であったことです。そのため大きな事故には至りませんでしたが、これがもし運転していたらと考えると本当にゾッとします。

 なぜなら、志賀原発では変圧器からは合計2万リットル以上の油が漏出して外部電源の一部が失われてしまい、使用済み燃料プールから放射性物質を含む水が床面にあふれ出るなどしたからです。点検中だったので原子炉の事故にはつながりませんでしたが、本当に危機一髪だったと言わざるを得ません。

 今回の地震の全貌はまだわからない部分も多くありますが、人工衛星の観測によれば、85kmにもわたって海岸が最大4mも隆起し、海岸線は最大200メートルも海側に進んだといいます。当然、海沿いの道路も寸断され、避難や救助の妨げとなっています。

不作為は無責任

 こうした大規模な地形の変化がある確率で確実に起きる国で私たちは暮らしています。もちろん、気候危機も深刻さを増しており、私たちはさらに対応を加速しなくてはいけない状況です。しかし、気候危機については安全な解決方法があることはわかっています。それにもかかわらず、損得勘定だけで安易な、そして極めて高いリスクのある原発にこれ以上依存する必要はあるのでしょうか? それはあまりに危険な「賭け」にしか思えません。

 被災された方々を救出するために、今も懸命の努力が行われていることや、ボランティアとして活動をはじめた企業や個人が多くいることに本当に心を打たれます。直接的な行動はできなくても、募金をしたり、自分たちの本来の活動をしっかり続けることで間接的に応援している方も多いでしょう。

 こうした助け合いの精神が確実に存在していることは、本当に日本の素晴らしい点だと思います。けれども、起きていない災害を想像したり、そのために備えること、協力することには万全と言えるでしょうか。もし起きてしまったらどれほど悲惨で深刻な災害になるかがわかっているのに、それを事前に防ごうとしないのは無責任な不作為であると言わざるを得ません。

将来世代のためにより良い未来を

 まず今は救援であり、そして復興でしょう。それを応援することでしょう。けれども、将来世代を含めたすべての人々の幸せを願い、公平性を大切にするサステナビリティの視点からすれば、目の前の利益のために一部の地域や将来の世代に大きなリスクを押し付けることはいかなる時も看過できません。

 年初から大変硬い話となり恐縮ですが、サステナビリティに関わる活動は、私たちの大切な子どもたちや孫たちに明るくより良い環境や社会を残すための素晴らしい活動です。こんなにやり甲斐があって、楽しい仕事はないと私は思います。それに役立つような情報や視点を、今年も新月と満月に合わせてお送りしたいと思います。

 目の前の課題に対処しつつ、本質を見失わず、長期的な目標の達成に向けて歩む速度も緩めず、この一年を有意義なものにすべく、お互いに力を合わせて進んでいきましょう。

 今の辛いことをより良い未来に変えていく、その力が私たちにはあると信じています。

 サステナブル経営アドバイザー 足立直樹

※この記事は、株式会社レスポンスアビリティのメールマガジン「サステナブル経営通信」(サス経)483(2024年1月11日発行)からの転載です。


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