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僕の好きだったひと 2


君はいつも寝坊をした。

週末が来るたびに、私は君の扱い方を学んでいるようだった。

期待なんてもうしない。起きれたら褒めてあげよう。
それぐらいの気持ちでないとこの人の彼女は務まらない。

私は起きたタイミングでまずメールをするようになった、返信はない。

朝食を済ませ、シャワーを浴び、メイクを始めながら電話をかける。
繋がらない。まだ起きていない。

今日も電波越しに彼を起こす方法が見つからないまま
メイクを終えて、電話をかける。

やっぱり、無理だな。

私は車に乗り、君の家まで走らせる。
デートの日のワクワク感なんて、いつの間にか置いてくるようになってしまった。
君が私を迎えにきたのは、付き合う前だけだったかもしれない。
掠れゆく記憶が正しいのか、書き換えられたものなのか。

「今日もまたダメかなー」
心の中で呟いていたのか、声に出していたのか、今ではもう忘れてしまった。
でも、いつもどこか諦めていた。

地元で暮らしている私たちは、二人とも実家暮らしだ。
彼のお母さんに玄関を開けてもらい、「すみません、、」と言いながら
彼の部屋へと上がっていく。

ベッドには、起きる様子もない彼がすやすやと寝息を立てている。
もちろん待ち合わせの時間はとうの昔に過ぎている。
きっと彼には待ち合わせという概念がないのだろう。
概念のない人に、「待ち合わせ」という言葉を使う私自身が間違いなのだ。

そう思わせるほど、君は私が来たことにすら気づかない。

私はベッドの側まで近づき、怒りながら君を揺する。

「もうー、起きてよー、時間だよー?」

君はやっと私に気づき、驚いて開けた大きな目をすぐに閉じて
またベッドに埋もれながら満面の笑みで小さくつぶやく。

「ふふっ、、すき」

私がダメな女だと実感する瞬間である。
怒りも悲しみも、どんな感情も、この怠惰野郎の幸せそうな笑顔に、
甘ったるく囁く声に、負けるのだ。

「んー、、ねえ、こっちにきてよ」

私の腕を引っ張る彼に、

「じゃないの、準備してよー、お出かけするのっ」

と抵抗するも虚しくベッドへと引きずり込まれる。

今日もまたこの景色。
ベッドのすぐ近くにある窓から、気づけば西日が差し込んでくる。

いつもそうだ、
いつも君の匂いに包まれて、見慣れた部屋で夜になる。

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