僕の好きだったひと 7
きみと別れて一年が経ち、
彼と付き合って二ヶ月が過ぎた。
きみはこれまでの人生で、
最も辛い時期を支えてくれた人だった。
どうしようもなくズタボロで、
一年中泣き続けていた私のそばに唯一いてくれたのがきみだった。
渋谷の路上で、涙が止まらなくなってしまったあの日も、
私をタクシーに乗せて、ずっとそばにいてくれた。
あの日、指輪をくれたんだよね。
きみが身につけていた指輪。
どの指にはめてもぶかぶかで、笑ったな。
「俺がずっと身につけてきたものだから、
これで少しは安心できる?」
って。
ぶかぶか過ぎるからネックレスにして
肌身離さずつけていた。嬉しくて、愛おしくて。
そんなきみと別れて一年が過ぎた。
私は新しい彼が出来たよ。
まだ付き合い始めたばっかりだから、まだまだお互いのことを知っていく段階で
彼のことは全然わかってないんだけど。
きっといい人だよ。
いろんな私を見せても、きみのように
そばにいてくれると思うんだ。
仲良くやっていけそうな気がするよ。
ふと、鏡に写る自分を見て、過去の出来事が頭をよぎった。
人生最大に最悪で、人生を最もズタボロにしたあの出来事、
あの時の私を知っているのはきみで、
そんな私を知らない彼とこれからの人生を歩んでいくのだ。
言う必要なんてないと思う。
言ってもいいけど、過去のことをわざわざ彼に共有する必要はない。
だけど、あの悲しみに寄り添ってくれたのはきみなんだと、
あの頃の私を受け止めて、そばにいてくれたのはきみしかいないんだと、
涙が止めどなく溢れてきた。
私の悲しみを知らない彼と、これからの人生、歩んでいくのだ。
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