見出し画像

第四話:良い記事体広告(タイアップ広告)とは?

前回は、NG例から考える「良い記事体広告」ということで、NG例を列挙していくことで良い記事像をあぶり出していこうという試みだったのですが1例あたりが盛り上がりすぎてしまい、2例しか挙げられず何もあぶり出されないまま終わってしまいました。こういう、ゴールから逆算せずに行き当たりばったりで書いて破綻するというのが一番やっちゃいけないパターンです。あ、これで3例目ですね。もっとある気がしますが、先に進めます。

今回は良い記事体広告(≒タイアップ広告)の条件を挙げていきたいと思います。前回の反省を踏まえて、テンポよくいきます。

その①:ゴールに向けて、読後の読者の感情を逆算して構成されている

まずひとつめは、3つ目のNG例の裏返しです。記事体広告とは、記事という体裁をとってはいますが、あくまで「広告」です。なので、その目的も広告コミュニケーションによって達成する目的とイコールなはずです。では広告におけるゴールとは何かというと「態度変容」です。あれ、買ってもらうことじゃないの?というのも間違いではないのですが、その「購買行動」を引き起こすための根っこになる「お買い物ポリシー」を変えることで、再現性の高い購買行動(=リピート買い)を引き起こそうという考えです。都度都度の気分によって買う商品が変わってしまっては、商品の売上は積みあがっていきませんから。このお買い物ポリシーを「態度」といい、「態度→行動」という構造になっています。

上述のように、記事体広告のゴールは「読後に、読者が態度変容している状態」です。具体的な作業としては、その商品カテゴリにおける現状の読者のお買い物ポリシー(BEFORE)を想定して、そのBEFOREとAFTERの認識差を埋めるための気づきを記事に埋め込んでいく。これが逆算して記事を構成していくということです。具体例を入れ出すとまた長くなるので、事例編は別途記事にまとめます。

その②:新しいブランド文脈を生んでいる

これはNG2例目の「白文字系」の裏返しですが、そのメディアでしか表現できないようなそのブランドの価値や見せ方を発掘することです。メディアに記事体広告を依頼する広告主が期待しているのは「このメディアが編集部のフィルターを通してうちの商品をどう見るか」ということで、決してオリエンシートの内容を全部盛り込んでくれよとは思っていません。渡せる情報は全部渡したうえで、メディアがそれをどう解釈するか、どう読者に向けて料理するかに期待しているのです。

広告主サイドのブランド担当者はそのブランドに1年中、長いときは5年とか10年とか、そのブランドのことを考え続けている人です。それはある種「子育て」にも似ていて、女性担当者の中には「このコ」と言って我が子のようにブランドを愛し育てている人も結構います。その人でも気づかなかった「うちのコのこんな魅力を引き出してくれるなんて!」という提案ができれば、それは結構強い感動を伴うので、リピート出稿につながることも多いです(担当者の態度変容=メディアバイイングの購買ポリシーの変更を促すことに成功した状態)。

話は脱線しますが、オリエンの場で「このコ」モードで愛するブランドの生い立ちや魅力、憎きいじめっ子(競合ブランドとか)の話を聞かされたら、もう一気にそのブランドのファンになっちゃいます。普段の何気ない買い物の裏には、様々なブランド担当者の熱い想いがある。そんな素敵な気づきを得られるオリエンの場にたくさん出席できるのは、メディアの一番の特権です。

その③:今すぐやってみたい!を大量生産している

これはNG1例目の「揉み手構文(いかがでしたか一族)」の裏返しです。これは記事体広告に限りませんが、良いコンテンツの条件の1つとして「今すぐやってみたくなる」という特性があります。「ですよね」「いかがでしたか」的な受け手のご機嫌取りは何も生みませんが、GOOD IDEAへの接触によって生まれた「それおもしろい!」は「今すぐやってみる」という行動を引き起こします。簡単なのはレシピ紹介や〇〇の意外な活用法紹介ですが、これだと単発の行動喚起はできても態度変容には至らないことが多いでしょう。もう少し根っこの価値観を揺さぶるアプローチができれば理想です。

実例をひとつ入れます。ある通信資格講座の案件です。ペン字資格とか野菜ソムリエとか、新年などの節目をきっかけに何か始めてみようかなと考えたこともあるのでは。他のメディアは「この春、新しいことを始めよう→ペン字資格とろう」とかそんな文脈でした。それペン字じゃなくても言えるんじゃね?的な。それじゃわざわざ資格は必要ないわけで。何か他のアプローチはないものかねと思って考えた結果、資格というのは他人が「キャラ化」するのに便利なカジュアル称号だということに目をつけました。「あの子、カワイイよ」よりは「あの子、カワイイけど実は野菜ソムリエの資格持ってるよ」の方が紹介しやすいし覚えやすい。「なのに構文(AなのにB)」ほどシンプルかつ最強なレトリックはないので(エスプリークの「おとな。but カワイイ。」とかね)、自分の興味のあることで「一生のキャラづけの根拠」が作れる。だから読者への提案としては「この春、一生モノの得意技を作りましょう」としました。得意技を発揮してる間は人間幸せですから、得意技を資格で強くキャラ化することで、一生「見せたい自分を見せられる」状態を作れる。それが2万円と少しで手に入るなら、興味ある分野の体系化された知識も身に着くしお得ですよね。これは圧倒的に読者にウケました。競合媒体比で3倍くらいROI(投資収益率)が高く、複数回のリピートにもつながりました。

おわりに ~態度変容は難しい~

というわけでテンポよくと言いつつ、あまり筆者自身の執筆態度に変容が見られず、結果前回同様の執筆行動を繰り返すという結果に終わりました。が、このことからも分かるようにそうそう人間の態度というものは変わりません。直接コミュニケーションでも難しいものを、メディアを介した間接コミュニケーションで変えるのはなおさら難しい。でも、だからこそやりがいのある仕事であるともいえます。

重要なのは、ただ記事をあげればよいという考えではなく、読者の「やってみたい」をかきたてるために、読者の興味関心を踏まえた「解」を考え尽くすことです。広告会社の仕事が、広告主の「企業内」から一歩離れた立場でテレビなどのマスアプローチ(デモグラ属性ターゲット)における最適表現を発案する事なら、メディアはクラスターアプローチなので、その一歩奥の「興味関心クラスター」ごとの具体的な最適表現にまで落とし込み、確実に「自分ゴト化体験」を増やす。これが、タイアップにおけるメディアの仕事です。

関連記事


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?