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半袖の肌が粟立つ朝8時 澄んだ空気のピントは9月

春の始まりは、世界の彩度が上がって気付く。
夏が来る時は、世界の彩度がさらに上がるのはもちろん、明度も眩しすぎるくらい一気に上がって視界はもはや白飛びする。

夏の終わりは、世界の彩度はまだ夏のまま。明度を落とす代わりにコントラストが強くなる。
夏の日差しが明るすぎて見えなかった世界が、くっきり見えるようになったら秋が来たなと思う。


街路樹の葉はまだ色褪せていないけど、空の青は少しだけ柔らかくなった。濃いコバルトブルーが、落ち着いた群青に変わった。厚く高くそびえていた雲は、薄く長く軽そうに伸びている。

学生時代は、毎日が思い出みたいだった夏が終わることがすごくすごく嫌だったけれど、働き始めてからは少しずつ、過ごしやすい秋を好きだと思えるようになった。


蝉の声を忘れていることに気付いて、腕を刺す日差しが痛いなと思わなくなったのは先週。顔をなでる風が湿気をはらんでいないと知ったのは今週。

学生時代の先輩と、この時期は秋の大会を思い出すねと盛り上がったのは一昨日。首元と袖元に、ひやりとする感覚を思い出したのは今日。


夏の間じゅうほとんどずっと稼働していた、部屋のエアコンを切った。
まだ衣替えには早いし、パジャマや通勤服は半袖のままだ。

オフィスの冷房は弱くなったから、薄手のニットを着ると暑い。長袖のシャツもまだ少し気が早いだろうか。七分袖のカットソーくらいがちょうどいい。それでもとにかく半袖では少し肌寒くなったと、今日気付いてしまった。

週末を過ごす服は、まだ夏の素材。でも色だけは秋にシフトする。白から生成りへ。ジーンズの青からデニム地のカーキへ。パーソナルカラーは秋一択な私の、少しだけ服を選ぶのが得意な季節。



一昨日SNSで盛り上がった先輩が、今朝は「秋晴れの朝の空気に、金木犀の匂いまでする!」とはしゃいで投稿していたのを見かけた。
遠く離れた私たちの故郷の街には、少しだけこちらより秋のフィルターがくっきりとかかっているらしい。

この街で、金木犀の香りに会えるのはいつだろう。
あんなに嫌だと思っていた夏の終わりに今立っているのに、明日からの朝が少しだけ楽しみに思えるようになった。少しだけ、また大人になれたのかなぁと思った。

寒いでも涼しいでもなく、気持ちいい過ごしやすい空気を、たくさん吸って今日も眠る。

何かを感じていただけたなら嬉しいです。おいしいコーヒーをいただきながら、また張り切って記事を書くなどしたいです。