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#1. パイは良いもの? 悪いもの? 〜ココロの不思議な世界〜

「パイは良いものですか? 悪いものですか?」

普段の生活でこんなことを質問されることは、あまりないでしょう。

どう答えますか? 

「甘くて美味しい。子どもの大好物。パイは良いもの!」「ダイエット中なので、高カロリーのパイは敵!」「正直、良いとか悪いとか聞かれても困る・・・」

ここに、言葉をマスターする人間のココロの働きが隠されているというお話です。

答えは、良いも悪いもなく、ニュートラルです。パイに限らず、私たちを取り巻く世界には、良いも悪いもなく、ニュートラルなものがたくさんあります。

でも、これがニュートラルでなく、その言葉を聞いたとたんに、ポジティブ/ネガティブな感情を抱くとき、私たち人間は、知らず知らずのうちに、アタマの自動操縦モードを使っているのです。(ん? 自動操縦ってなんだ?)

では、ここで、質問を変えてみましょう。「パイについて想像してみてください。あなたは、目で、鼻で、舌で、感触で、耳で何を感じますか?」

きっと、「生地がサクサク」「甘い匂い」「りんごのシットリ感」など、パイそのものの特徴を思い浮かべるでしょう。つまり、パイという物理的なモノには、良い悪いの価値はないのです。

でも、ダイエット中なら、パイはあなたのカラダに悪いものになるし、登山などで激しくエネルギーを消費したときなら、カラダに良いものになります。つまり、パイが良い・悪いの価値をもつのは、そのときの文脈(コンテクスト)で変わりますよね。

この文脈(コンテクスト)は、その時の状況や周りの環境など、自分でコントロールできないもので決まる場合もあります。でも、この文脈を、私たちが言葉の働きを利用して自ら作り出している、と聞いたらどう思いますか? 

ん? 文脈を自分で作る? (哲学的で分かりにくい!)

文脈(コンテクスト)って何?

パイだと少し実感が湧きにくいので、「ピース」でみてみましょう。あなたは何を想像しますか?

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思い浮かぶのは、物理的な特徴(2本指が立っている、ネールしてるから女性かな?)だけでしょうか?

「子どもの頃、写真をとる時にしてたなあ〜。そういえば、幼なじみの○○ちゃん元気かなあ?」「平和の象徴だ。でも最近はテロやデモが多くて物騒な世の中だなあ。」というように、物理的な特徴以上に、ピースにまつわるいろんなものを簡単に想像しますよね。

パイと同じように、2本指そのものはニュートラルな刺激でしかありません。でも、私たちのアタマは、ピースに関係する一般的な出来事や個人的なエピソードを簡単に引き出します。

おそらく、パイよりもピースの方が、政治的・社会的な意味合いを含めやすいモノだからでしょう。このように、私たちのアタマは、自動的にフル回転させて、ニュートラルな物事に意味づけを行う作業をしています。そして、この作業を通して、アタマの中でできたものも文脈(コンテクスト)なのです。

「あの人、何考えているかわらない」「あの人、アタマの回転が早いよね」といいますよね。このとき、わからない、とか、早いと感じる相手の思考回路そのものが、その人の作り上げた文脈なのです。

この文脈づくりは、私たちが生まれたときから、アタマの自動操縦モードを使って無意識にやっています。これが、うまく機能するときもあれば、うまく機能しないときもあります。

「うまく機能しないときがあるので、私たちは、時々(結構、いつも?)悩みをもつのです」と聞いたら、どうでしょうか? (ますます謎めいてきますね・・)

では、どうして人間は、こんなことをしているのでしょうか? こんなことができるのでしょうか? 興味のある方は、一緒に学んでいきましょう。(次回に続く)


--本記事のイラストは、著作権フリー及び著者の承諾済みのものです--

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