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NEWS PICKUP: 自然とデザインをつないで考えるためのヒント 12月

自然とデザインをつないで考えるためのヒントをピックアップしました。デザイン、アート、ビジネス、環境活動、サイエンス等の領域を横断し、ACTANT FORESTメンバーそれぞれのリサーチに役立ったニュースを集めています。

今回は、過去にnoteやニュースレターでも掲載したリワイルディングや、ミヤワキ・メソッド、先月、英国で開催されたカンファレンス「Design for Planet」の情報をお伝えします。

01:森のためのサブスクリプションサービス

「Ecologi」は、植林を中心とした地球危機に対応するプロジェクトに小額投資できるサービス。英国ブリストルをベースにする創業者は「地球のためのサブスクリプションサービス」と謳う。SnapchatやAirbnbなどに早くから投資していたGeneral Catalystが出資したこともニュースになった。月額5.6ユーロから始められ、毎月12本の植林と年間1フットプリント(10.6トンの二酸化炭素に相当)を削減するプロジェクトに使われることを約束している。植林は、どの国のどの木を植えたのかまでわかるようになっている。また、「週に1日乳製品を食べない」「地元のお店で買う」「自転車を使う」などの自分自身のエコ生活を見直すことも助けてくれる。2019年に始まり、すでに35,000人のユーザーがいる。12月にBCorp認証も取得。


02:森の住人がオーナーシップを持つコミュニティフォレスト

森に住み、生活を営んでいる人たちが「オーナーシップ」を持って森の管理をするほうが、大きな組織が外から管理するよりもメリットが大きいという研究成果が出ている。アフリカのコンゴでは、2016年に「コミュニティフォレスト法」が制定され、例えば2018年末には、300名の住民が5,000haの森林の管理を任されることになった。こうした取り組みは、メキシコやインドネシア、ネパールなど各国に広がりつつある。また、コミュニティを中心にした活動は「しっかりとしたガバナンスとビジネスモデルがある限り」、森林にとっても、生物多様性にとっても良い結果をもたらしているそう。こうした取り組みやしくみは、都市の中のもっと小さな森や里山の運営にも参考になるかもしれない。


03:英デザイン・カウンシルが「Design for Planet」を提唱。カンファレンスのアーカイブも。

11月上旬、英デザイン・カウンシルが主催するサステナビリティフェスティバルがスコットランド東部のV&A Dundeeで開催された。テーマは「Design for Planet」。デザイナーとサステナビリティの専門家が一同に会し、増幅する気候変動の危機に対して、両者が協業するためのヒントとなるトークやワークショップセッションを繰り広げた。約50人のゲストの中にはドーナツ経済学の著者Kate RaworthやDark Matter LabsのIndy Joharらも。オンラインとオフラインで開催された同イベント、リアルタイムで見逃してしまった方はwebサイトでアーカイブ視聴もできるようだ。産業革命以来、イギリスのデザイン戦略を担ってきた組織を前身とするデザイン・カウンシルの動向は、世界のデザイン潮流を予見する良いリソースだ。


04:ルイ・ヴィトンがロンドンにつくるミヤワキ・メソッドの小さな森

ロンドンの中心部、チェルシーの一角にルイ・ヴィトンら3団体によって240㎡の小さな森がつくりあげられた。都市部をリワイルド(再野生化)する試みとして、ルイ・ヴィトン、カドガン、リワイルディングコンサルティングのSUGiのパートナーシップでつくられたこの森は、ミヤワキ・メソッドに基づいている。以前noteでも紹介した、植物生態学者の故・宮脇昭氏が考案した植林方式だ。宮脇氏は今年7月にご逝去されたが、死後もなお彼のメソッドは世界の小さな森づくりに貢献しつづけている。


05:サイエンス×アートで探る、サステナブルな共生に向けたプロトタイプ

ドイツ工学アカデミー、Forecast、カールスルーエ造形大学、ZKMの4機関が主導する3か年のプロジェクト「Driving the Human」。科学と芸術のコラボレーションを通じて、サステナブルな共生のためのプロトタイプを開発しようという試みだ。その一環として、10月中旬にベルリンで「Driving the Human: 21 Visions for Eco-social Renewal」が開催された。そこで発表されたのは、世界中から公募・招聘された科学者やデザイナー、アーティストによる21の実験的コンセプト。テクノロジーと自然、AI、サーキュラーエコノミー、知の交換と産出の新たな様式、先住民の知恵、細菌から惑星までにおよぶモア・ザン・ヒューマンの視点……と、インスピレーションに富む多様なテーマが並ぶが、ここから7つのプロジェクトが選ばれ、来年からプロトタイプ開発に進むという。3日間のイベントの模様や参加者のトークは、オンラインでも視聴可能。今後の経過にも、引き続き注目したい。


06:「Rewilding Britain」財団推計 国土5%のリワイルディング化が2万人の雇用を創る

英国の土地の5%をリワイルディングすることで、田舎に20,000人の雇用を生み出せるという報告を、公益財団「Rewilding Britain」が発表した。現在の集約型農業を推し進めることに比べ、50%多くなる推計だ。ツーリズム従事者や、大型草食動物など動物の再導入に関わる専門家などの雇用が増え、生物多様性や環境保全にも貢献する。かつ、従来型の農業も毀損しない。この予測は、リワイルディングプロジェクトが進む国内27の地域の分析に基づいている。過疎地域では、数名でも就業者が増えるインパクトは大きい。周りを活性化させるし、ボランティアの数が9倍になったところもあるそう。現在、そういった地域の総面積は、英国の0.2% 。この割合を5%にするのが財団の目標だ。


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