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忘れられない恋などなくて

脳みそが活性化している夜にしか文章を書けないでいるから、いつまでも君を忘れられていない。そんな思いは戯言に過ぎなくて、忘れられない恋なんてものはないはずなのだ。時間と共に記憶は薄れ、痛みは消え、日常は日常として進んでゆく。いつか別の人に好意を抱いて、また心を寄り添い合わせたり離れたりを繰り返す。異性が薬であって、それ以外は全てクレイジーで済まされる。音楽は耳から摂取するシャブであり、映像は目から取り入れる覚醒剤であり、恋愛が精神安定剤に過ぎない。かといってそれらは全て一時的な特効薬で、慢性的に服用するようなものではないのだ。だから、忘れられない恋なんてない。

それでも、忘れられない恋なんて形容されるのは、結局のところ、自覚的に忘れないようにしているからなのだろう。それはそれは実に恥じるべきことで情けないことなのだけれど。あの人と出会えたことが私を変えたから。一度は好きになった人で一応思い出なのだから。1番変な人だったから。忘れられない理由なんてものはいとも容易く思いつくのだが、譲りきれない思いはサイダーのように湧き上がってくるのだが。

所詮、私は自分に酔っているのだろう。なんともない人間に恋をして、別れた。ただ、それだけのこと。選択肢なんてきっと幾千幾万とあって、それを知らないだけであること。恋愛経験の数少なさから、それを価値のあるものだと勘違いして依存しているだけであること。分かっているよ、そんなことは。早く次に歩き出した方がいいことも分かってる。

それでも、忘れられないのは、忘れたくないのは、君を知ってしまったから。恋をして、明日を待ち望んでしまったから。今もまだ恋をしているのだから。いつかのきっとに期待をして。ただそれだけのこと。

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