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「児童労働について全く知らなかった」桐村さんがACEに入った経緯【ACEトークvol.9:後編】

2022年1月31日にYouTubeライブ配信した「ACEトーク」のレポート記事です。こちらは後編です!noteの前編はこちらから。

ACEを知る前、「児童労働」を知っていても、問題意識は全くなかった

杉山(司会):本当に海外出張が当たり前だったんだろうな、ヨーロッパと東南アジアも含めて、特にヨーロッパへの出張は結構多かったんですね。
世界を夢見てたっていうのは、やっぱきらびやかな側面だったのかなと思うんですけど、その傍らで、児童労働の問題に2016年ぐらいに出会ったということですよね。
それ以前から社会問題に興味はあったのか、ということと、大学とかでそういった問題に触れる機会はあったのかということをきかせて下さい。

桐村:実はね、全くなかったんです。

青井・杉山(司会):ほーう!

桐村:ただ、私が子どものころから既に日本は高度経済成長期に入ったと言われていて、先進国の仲間入りしたんだろうなあ、恵まれた国なんだなという意識はありました。
世界には貧しい国があるんだろうなというのも漠然と分かってたし、日本人に生まれてラッキーだなという思いも持っていました。

ただ東南アジアとかインドでボリュームゾーンの婦人服を企画・販売する卸会社さんがあって。スーパーのお客さんが多いんですけどね。
当時商社って原料を扱う商売が圧倒的に多くて、製品を手掛けることはあまりなかったんです。 私がいた会社は輸入のハイエンドの商品に加えて、スーパーに並ぶような量販品なんかも製品やってるお前のとこの部でやれ、みたいなことで言われて。
その時にインドやりたい人いるかって聞かれて、イタリアとインドが同じ“I ”で共通してるからいいかぁって、わけのわからない理屈でインド担当になりました(笑)。インドも結構好きでしたね。

杉山(司会):あら! そうなんだ!

桐村:すごくエキゾチックで、日本じゃ経験できないことがある国ということで、それで楽しんでいたんですけど。
そこでは、子どもも仕事をしていたんです。学校に行くくらいの歳の、10歳前後の子が使われて。見本を持ってこさせられたりなんかしていました。
当時は何にも疑問を感じなかったんです。子どもたち学校に行かずに仕事の手伝いしてるなんて、偉いなみたいな感じで。
イタリアでも田舎に行くと、80年台~90年前後位には児童労働している子どもたちを見かけていました。

杉山(司会):そうなんですね。でもそれが問題であると認識しない限りは、問題意識を持つことは難しいのかもしれないですね。

ふとしたことからエースと出会って、ACEのホームページを見てこんな現状だったんだと気づいたとのことですが、 そもそもACEに行きついた理由と、子どもが働くことは問題であるとこう強く痛感した瞬間をもし覚えていたら教えてもらいたいです。そもそもACEと出会ったのは、たまたま?

桐村:うん、たまたまです。

投資会社時代に感じた違和感

桐村:実はその前は10年ほど投資会社にいて、私も個人的に昔から株をやっているなかで、いい仕事をしてる会社を応援したいっていう気持ちがずっとあったんです。
投資会社に行ったらそういう経験もできるというのがあるんだけど、企業を支援してサポートして成長するお手伝いをするという仕事に憧れがあったし、結構リターンもある、年収もよさそう。っていう単純な憧れがあって入ったんだけど、それなりに面白い仕事でもありました。

IRの仕事って結構、投資家の人に神経も使うし、難易度が高い仕事だったけどやりがいはありました。ただ根本のところでね、なんかこれ違うぞという思いをずっと持っていたんです。企業価値を上げる・事業が伸びる支援をする・バリューアップのお手伝いするというその一方で、結局は自分たちが稼ぐことが優先されているなと。

投資のスキームって、どうやってお金を入れてそれでどうやって企業価値や業績をあげるといったお手伝いをするかということなんですが、往々にしてそんなに将来につながるようなビジネスは伸びないけども、一時的に売上があがって株価があがって、この辺で潮時だっていう時に株を売って投資会社は儲けるということが多いんです。
これで仕方ないのかなという思いがあったんです。でもあるとき、あるスキームで、これはちょっといかんだろうと。合法的だけどこのやり方はないなと思うことがあって。

それからいろいろ、面白くないこともあって、世の中のためになってるのかなと疑問を持ちながらこのまま続けるよりも、世の中のためになることをなんかしたいなと。
そこから日本酒の話につながるんですけど。

杉山(司会):なるほど、そうなんですね!

ネットサーフィンでたまたま見たACEの活動が、児童労働問題について目覚めるきっかけに

桐村:どういう道でこれから生きていくかといったときに業界を底上げする、そういうお手伝いをすることができればなと思って、日本酒応援の任意団体を立ち上げて、それでNPOも一つの選択肢だなと思う気持ちが芽生えたんです。
そうこうしてる時に、時間があるときにネットサーフィンして、色々な団体を調べる中でACEに出会いました。それまで児童労働のことってそんなに意識したことなかったのに、児童労働の存在、児童労働をなくすために仕事をしているみなさんの仕事ぶり、熱い思いを語る記事を見て、どんどん惹き込まれました。ホームページを2時間ぐらい見てたかな、わりと細かく隅々まで見ました。

ちょうどその時スタッフを募集しているっていうことを知ったので、フルタイムじゃなくても雇ってくれるチャンスがもしあるんだったら、その話を聞く口実に一回会いに行ってみようと。
ひょっとしたらNPOってどういう仕事をしている組織なのかということについても、多少は理解が進むかもしれないと思って、ちょっと不純な動機も少しあったんですけど、話を聞きに行きました。
その時はあんまり真剣に職員になるつもりはなかったんです(笑)
週に何日かでも仕事を受託して手伝って、っていう話になればいいけど、広報の経験があっても児童労働撤廃の活動をする団体でどうやって仕事するんだろうってイメージが全然沸かない。

そういう状態で話を聞いてみたら、ますます惹きこまれたんです。

「話を聞いてみたら惹きこまれてしまって。」

桐村:その時は代表の岩附さんと当時事務局長の白木さん、もうひとりの理事の方3~4人の方と一緒にお話をして、「素晴らしい活動だ!」ということになって。
これ、もしも「来ませんか」という話になったら真剣に考えていいなと思ったんです。

それまでは全く児童労働を意識 できていませんでした。
学校に行かずに働いている子どももいるんだろうなということもどこかで聞いて、知識としては分かっていたかもしれないけど、僕の心の中で、マインドシェアという意味ではほとんどなかったです。

でも、話を聞いて、一気に惹きこまれました。

杉山(司会):そうだったんですね。
私は桐村さんの一年先輩というか、2015年に入って、で、桐村さんは2016年に入ってこられて。その時の記憶は鮮明に覚えているんです、なんかACEっぽくない人が入ってきた…!って(笑)

桐村:それはどういう意味ですか(笑)

杉山(司会):いつもちゃんとYシャツ着て、ネクタイを締めてっていうのがカッコイイなーって、本当にバリバリのビジネスマンだったんだなあって思ったのを思い出してました。(笑)

今、桐村さんはこれまでのキャリアとか、ご自身で株をやっていたときの疑問を活かして、社会をよりよくしていこう・変えていこうということをACEの中で展開していますよね。それで、企業価値を上げるためにどういった社会貢献ができるかっていうのを、桐村さんを中心に対話を重ねて、ソーシャルビジネス推進事業がこの5~6年で本当に勢いが増してきたように感じています。
これまでと違う業界でどうやって広報やったらいいのかという思いがあったにしても、桐村さんの前職の経験が今のACEでの活動にすごく活かされているんだな、すごくいい出会いを持ったなーと思いました。

桐村:そう言ってもらえて嬉しいです☺

杉山(司会):本当にすごく素敵だなと思ってそれがやっぱり、これから紹介する桐村さんの軸に繋がってくるなと思っているんです。

自分の思いに正直に。

杉山(司会):桐村さんが今まで過ごしてきたところの軸にあるもの、大事にしてるものはこちらです!

桐村:若い時って自信がないことも多いし、自分の考え方とかやり方は正しくないんじゃないか、と思うこともあったし、実際間違っていたことも多かったんです。
でも世の中のイロハが分かってきたら、もう迷ったり遠慮して言いたいこと言わなかったりしてる暇はないなと。人生そんなに長くないということに気づきました。
100%正しい人なんていないです。「間違ってるかもしれないけど、少なくとも今この瞬間自分がこうあるべきだ、これが正しい」と思ったことがあれば、若い人でもどんどん意見を言ったらいいと思うんです。

投資会社の時の話につながるんですけど、企業価値をあげるって一体何なのか、どうやって価値を測るのかというと、結局お金が物差しになっているんです。投資をする人たちの発想の根本にあるのは、株主として、その会社が将来事業を生み出す利益から、いかに多くの配当を受け取るかということです。その将来の価値を今の数字に置き換えたらどうなるか、現在価値っていうんですけど 、そういうことを考えるんですね。
割引率っていう、お金を持っていたら金利がついてどんどん価値が上がっていくという考え方が根本にあって。将来受け取れる価値を逆算して、現在受け取れるとしたらどの程度の価値になるかという、ディスカウントレートというもので今の価値を測るという考え方です。

割引率(ディスカウントレート)

桐村:でも、それって本当はおかしいんです。
だって今はマイナス金利の時代でしょ。だから、今の価値の方が実は将来の価値よりも高いかもしれないですよね。
2020年の5月ぐらいに原油相場が「マイナス!」37ドルとか38ドルまで下がったってニュース、覚えてますか?今は原油が上がって、灯油代も高くなってますよね。だから我が家は石油ファンヒーターは使ってません。(笑)
1バレルあたりマイナス37ドル、という時代がつい最近あったということは、世の中何が起こるかもう分からないんです。だから投資会社の一方的な価値の算定の仕方も、実はおかしいんじゃないかというのを感じていますし、今はますますその思いが強くなっています。これから企業価値といっても今までの、20世紀21世紀初頭の考え方と違う測り方がされるような時代になるという気がします。

杉山(司会):なるほど。だから、なんかちょっと違うんじゃないかなって思ってそこに一石を投じようとしているんですね。まさに自分の思いとか考えに正直になって動いているんだなぁ。

今日のACEトークは本当に桐村さんのキャリアがどんなふうに活かされてきたかということを聞けて、キャリアのヒントになるようなメッセージがすごくいっぱいありましたね。私も桐村さんの生き方から学ぶことがすごくたくさんありました。
ありがとうございました!

最後までお読みいただいてありがとうございました!
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第9回ACEトーク「商社・バイヤーを経てNGOに再就職スタッフ」桐村康司さん出演回

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