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#44|5 2020年8月27日 日が昇る

 寝坊しなくて良かった、そんな安堵から1日が始まった。ほとんどない荷物をまとめてフロントにカードキーを置いてチェックアウトを済ませた。朝6時のマドリードはまだ夜が明けていない。街灯に照らされながらメトロの駅に向かう。来たことのない地区だったが、マドリードであるというだけでどこか馴染みあるような気がしていたせいか、これから向かうパンプローナへの最後の「家」であった。
 バラハス空港も早朝ではあるが、成田よりも混んでいた。搭乗口近くで生ハムとチーズのサンドイッチを買って、カフェ・ソロと一緒に食べた。コン・レチェにするか聞かれたところで「あ、スペインに来たんだな」と再認識する。今思えば搭乗口がターミナルの一番端だったので想像つきそうなものだったが、タラップまで歩いていく方式で、飛行機はプロペラ付きでかなり小さな機体だった。このご時世にソーシャル・ディスタンシングも何もないだろうと思いながら乗り込むが、他の乗客も皆同じくらいの歳で、おそらくN大学の学生たちだろうと思った。席に着くと隣の人に話しかけられた。早口のスペイン語で何か聞かれたが、かなり早いうえにマスクと機内の騒音が相まって全く何も理解できなかったので、英語は話せるか、と聞くと、話せる、N大学の学生か、と聞いてきた。そうだ、と答えると、おそらくこの機内はほとんどがそうだろう、と言った。離陸してからは会話はなく、僕はイヤホンで音楽を聴きながらkindleで読書をした。着陸したところで、空港からはバスが出ているか聞いたが、わからない、たぶんあるが、前に来たときはタクシーを使った、と言っていた。荷物の受け取りを待つ間に簡単に自己紹介をした。Aはパナマ出身で、2年生だという。街までタクシーの相乗りをしないか、と誘ってくれたので快諾した。正直慣れない土地でのバスは難易度が高い、と思っていたので運が良かった。
 Aは途中で下車し、いくらかタクシー代を置いていった。結局家の前までは約15ユーロほどだったので思ったよりもずっと安かった。タクシーが着くとほぼ同時に大家がバイクで到着した。部屋を案内してもらい、大体の必要なことを教えてもらった。同居人は前情報通り、2人いるが、どちらもすぐに出ていく予定らしい。
 最低限の必要なものを買いに近所のデパート、El Corte Inglés(エル・コルテ・イングレス)に行った。道のりは地図上は五稜郭公園のように見える星型の公園を抜けていく。歴史的建造物の跡地のようだが、詳しくはまだ知らない。これを見たら素晴らしいね、と言うだろうな、と思いながら歩いた。戻ってくると、同居人の1人が挨拶に来た。ハンガリー人の男で名前がかなり聞き取りにくかったが、連絡先を交換するという裏技で確認した。同じN大学の博士課程の所属で、物理が専門らしい。スペイン語よりは英語の方が得意のようで、まず最初にスペイン語で、英語は話せるか、と聞かれた。5分ほど英語で世間話をした。

(8/28 23:17 パンプローナ自室にて執筆)


現在、海外の大学院に通っています。是非、よろしくお願いします。