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住民同士の交流を生む資源回収ステーション ~資源出しという日常的行為をきっかけにして生まれる交流。子どもからお年寄りまでが集うスポットを訪ねました。

 兵庫県神戸市長田区にある市立ふたば学舎は、閉校した小学校の校舎を活用した地域コミュニティー施設。ここの2階「エコエコひろば」に2021年11 月、資源回収ステーションが設置され、以降、連日多くの住民たちで賑わっている。同市や連携団体・企業と共に取り組みを進めるアミタホールディングス(本社・京都市)の佐藤博之社長に話を聞いた。 

「ごみ資源化とコミュニティー活性化を同時にかなえる場を『MEGURU STATION®』と名付け、18年に宮城県南三陸町、19年には奈良県生駒市で社会実証を行いました。さらに21年にここ神戸市、22年には福岡県大刀洗町(たちあらいまち)でも実施し、神戸市と大刀洗町では実証期間終了後も継続や拡大展開が決まっています」

資源回収ステーション イメージ図

井戸端会議が生じる場所 

 取り組みの発端となったのは、東日本大震災で甚大な被害を受けた南三陸町での活動だという。現地に事務所を置き、循環型地域モデルの構築・実践を目指して15年、家庭や事業所の生ごみなどからバイオガスと液体肥料を生成する施設「南三陸BIO(ビオ)」を開所。前処理(分別)施設を設けず、各家庭で細かに資源を分別してもらって回収し、製造したガスと液体肥料は住民に還元した。

「循環が目に見えるとやる気も出ます。住民一人一人の意識の高まりにより、異物混入の極めて少ない生ごみを集めて再資源化することができました。また、分別した資源の集積所では、来る方々の間で自然と会話が生まれ、資源出しをきっかけとした井戸端会議が始まるのを目にしました。資源の回収拠点がコミュニケーションの場にもなる。これをさらに高度化させれば、資源循環のみならず、地域が抱える多くの課題の解決につながるに違いないと仮説を立て、開始したのがMEGURUSTATION® の社会実証です」

居場所と出番が大切

 人々が思い思いに過ごせるよう、ステーションには資源回収ボックスの他、くつろぎ・交流スペースや、無償で持ち込み・持ち帰り可能なリユースコーナー、子どもたちが遊べるキッズスペースなども設置。また、最初から運営側で全てを作り込まず、住民自身が自由に参加できる余白を多く残してある。そうすることで、住民たちが自分事として能動的に動くようになり、例えば生駒市のステーションでは、運営を自ら手伝ってくれたり、団らんスペースの薪ストーブの横で子どもたちに薪割りを伝授したりする人も出現し、住民同士の交流がより一層活性化した。
         
「人や社会とつながりたい、何かの役に立ちたいという欲求を皆が少なからず持っています。〝居場所と出番〟を感じてもらえるようにすることが、コミュニティーづくりでは肝心だと思います」

 資源出しは誰もが関わる日常的な行動。例えば地域の催しなどには、テーマに合致した特定の人ばかりが集まりがちだが、「資源出しに来たついでに」となれば、コミュニティー参加への心理的ハードルも低い。実際、ステーションにはあらゆる世代のさまざまな人たちがやって来る。

「孤立しがちな高齢の方や、子どもたちも気軽にふらりとやって来ます。つながりの希薄化が叫ばれる中、世代間交流が頻繁に行われ、介護予防や子育て・見守り支援にも役立つ場所となっています」

放課後の子どもたちの居場所としても機能

いずれ暮らしのインフラに

 外部企業との連携も進む。21年10月には、循環型経済を推進する企業が集まり、佐藤社長を代表幹事とするJ −CEP(ジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ)が設立された。メンバーのライオンなどが、水平リサイクル(使用済み製品が同じ用途の製品に生まれ変わるリサイクル方法)の実現に向けた試みを、ふたば学舎の資源回収ステーションで行っている。

「これまでの社会実証を経て、MEGURU STATION® が地方でも都市でも通用する仕組みだと分かりました。いずれは全国的に展開し、コンビニを超える拠点数を有する、暮らしのインフラになればと願っています」

ふたば学舎資源回収ステーション
住所:兵庫県神戸市長田区二葉町7-1-18 ふたば学舎2階 エコエコひろば内
10:00~12:00、13:00~17:00 月・水曜休み


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