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【嫌われる勇気】アドラー心理学の、本当におもしろいところを語る。

この記事では、私が個人的に面白いと感じた、アドラー心理学の由来・考え方について紹介する。

『嫌われる勇気』はベストセラーになり、読んだ人も多いと思う。しかし、それ以上に踏み込んでいない人も多いのではないだろうか。もしくは名前だけ聞いたことがある、なんて方もいると思う。

嫌われる勇気では、断片的に単語が紹介されるような形態をとっているので、根幹として何を言わんとしているのかがわかりにくいように感じられる

そのような方々のために、アドラー心理学の由来やポイントをかいつまんで紹介しようと思う。

アドラー心理学を知らない人はきっかけに、もう知っている人は復習に読んでいただければ幸いだ。

※素人が書いた記事なので、厳密な定義などが誤っている場合があります。大目に見ていただければ幸いです。

アドラーの思想の発端は、「大道芸人の努力」

心理学者として知られているアドラーだが、実は、もともと内科医だった。

内科医として開業し、多くの患者に治療にあたっていたアドラー。アドラーの診療所の近くには、遊園地があり、その中の見世物小屋などで働く大道芸人がアドラーを訪れていた。

彼らは、並外れた技能や身体能力をもっていたにもかかわらず、実は、生まれついての虚弱に苦しんでいたこと、後にその弱さを努力して克服していったことなどを、主治医のアドラーに語った。

アドラーはこの話を聞きながら、身体や環境におけるマイナスな影響(劣等感)をなんらかの形でカバー(補償)しようとし、それが行動、さらには性格形成にまで影響を与えているのではと考えたのだ。

これが、アドラー心理学のきっかけとなるアイデアである。

(個人的にはこの気づきにすごく興味深さを覚える。普通であればただ、治療をして一生を過ごしてしまいそうだが、この「気づき」から発展させて、一代心理学・哲学体系を築き上げるのだから、すごい。。)


「劣等感」「補償」が性格形成のシステム

この「劣等感」と「補償」という概念だが、あらゆる生物の成長・進化の過程に見て取ることができる

たとえば、

・体力があまりない少年
→体力をつけようとトレーニングし、大道芸人に

・脳の一部が欠損し、身体が動かなくなる
→脳の他の部分が機能を補い、身体が動かせるようになる

・あばら骨が折れてしまう
→他の骨が発達し、あばら骨の機能を担うようになる

・視力が生まれつき悪く、物事をよく観察するように
→有名な画家に(驚くことに、これがよくあることなのだ!)

・爬虫類がもっと強くなるために巨大化
→ティラノサウルスに

そして、この作用が人間の性格形成にも現れているのではないかとするのが、有名な「ライフスタイル」の考え方だ

ライフスタイルとは、その人の人生への対処、人生設計、人生プログラムといったものである。ライフスタイルは、およそ5歳〜小学校時代に選びとられ、その後の一貫した行動原理になる。

たとえば

・小学校のクラスで馬鹿にされた
→「自分は人に優しくあろう」というライフスタイルをとる

・両親があまり料理がうまくなかった
→自分で自炊するために「料理をうまく作って楽しむ」というライフスタイルをとる

・親にスポーツがうまいと褒められた
→「人から賞賛されるために運動能力を高める」というライフスタイルをとる

などである。

ライフスタイルは、普通に生きていると自覚することが難しいが、思考・記憶・感情・行動・夢の裏に一貫して流れているものである。

人間は他の動物とは違い、赤ちゃんの時代には必ず養護者が必要になるので、必ず劣等感を感じると考えられている。そのため、「劣等感」「補償」というシステムは人間であれば必ず搭載されている機能である。

また、さらにその洞察を発展させ、アドラーは人間の文化・歴史は劣等感の賜物であるであると考える。

・馬のように速く走りたい→車をつくる
・健康でいたい→医療が発達する

といった具合だ。

ということで、劣等感は、正しい方向に向かえば、状態を向上・改善に向かわせるものなのだが、しばしば間違った方向に進むことがある。


ライフスタイルはしばしば「誤る」

ライフスタイルは同じものは存在せず、各人にユニークである。

そのため、「正解のライフスタイル」というのは存在せず、すべてのライフスタイルが多かれ少なかれ誤りが含まれているわけだが、大きく誤った方向にとってしまうパターンがある。

たとえば、

・クラスメイトに馬鹿にされた
→「世界は恐ろしいところで、家にいた方が安全だ」をとり、ひきこもりになってしまう

・両親に性的虐待をうけた
→「男女関係がおそろしいものだ」というライフスタイルをとり、人と付き合うことができなくなってしまう

・自分の好きな趣味を馬鹿にされた
→「人に同調しなければ仲間外れにされてしまう」というライフスタイルをとり、過度に人目を機にするようになってしまう

・自分が病気になると親が極端に甘やかした
→「人の注意をひくには体調不良になる方がいい」というライフスタイルをとり、うつ病になる。(アドラー心理学ではうつ病もライフスタイルの表現の一種と捉える)

といった具合だ。

このようなライフスタイルは見ての通り、目的と手段関係としては必ず論理的になる。正しい手段なのだ。

このようなライフスタイルの誤りは一貫して目的側にある。そのため、実際的な治療では、何のためにその手段(ライフスタイル)をとっているかを理解し、よりふさわしい目的に再方向付けするということをする。

(ちなみに、アドラーはライフスタイルがよいかどうか判断するために、共同体感覚という概念を用いたが、ここでは説明を省略する。のちに紹介する関連書籍を参考されたい。ざっくりいうと、他人に貢献するライフスタイルが一番健全だよね、って感じのことを言っている。)


ライフスタイルは「選び取るものである」という希望

ここからが興味深いところだが、アドラーはライフスタイルは「選び取るもの」だとし、いつでもこのライフスタイルは変えられるものだとした。

これが、「いつでも今この瞬間から人は幸せになれる」という言葉の所以だ。

一貫してある、アドラーのからのメッセージは以下のようなものである。

人生の課題を前にして、遺伝や環境などのさまざまな理由を持ち出して課題に挑むのをためらうことをしてはならない。


おわりに(書籍紹介)

とざっくりだが個人的におもしろかったところを解説した。

残りはアドラー心理学の理解を深めるおすすめ書籍を紹介する。

入門編にはやはり以下2冊だろう。体系的な説明はないが、物語形式を撮っているので、圧倒的に読みやすい。アドラーに触れたことのない人は読むといいだろう。

上記2冊を終わったら、ぜひ他書籍も参考にされたい。カウンセラーに向けた文章ではあるが、以下2冊は理解を深めるにおすすめだ。


次は、この記事で紹介した、自分の「ライフスタイル」に気づくための方法を記事にしようかと思う。


❏参考文献
・岸見 一郎 、 古賀 史健(2013)『嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え』 ダイヤモンド社.
・岸見 一郎 、 古賀 史健(2016)『幸せになる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教え』 ダイヤモンド社.
・八巻 秀, 深沢 孝之他(2017)『臨床アドラー心理学のすすめ──セラピストの基本姿勢からの実践の応用まで』 遠見書房.

・Alfred Adler (原著), 岸見 一郎 (翻訳)(2010)『人生の意味の心理学〈上〉―アドラー・セレクション』 アルテ.

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