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国の借金が増えるほど、より増税が必要になる


1.国の借金の残高が増えると何が問題なのか?

1-1.税収に対する国債償還費の比率が上がる

まず、財務省のホームページから、令和4年度一般会計歳出・歳入の構成をまとめた画像を引用いたします。

会計の原則から、歳入と歳出の額は等しくなります。

そして、以上の画像から、歳出にある国債費が24兆3393億円(22.6%)であり、歳入にある税収は65兆2350億円(60.6%)となります。

そこで、22.6% ÷ 60.6% を計算すると、大体1/3弱になるとお分かりになると思います。

解りやすく例えると、月収18万円の人がいたとします。

そして、債務償還費(元本分)と利払い費(利息分)を合わせると、毎月の借金返済額は6万円で、それを差しひいた12万円が家賃や食費等の経費に回せる状態となり、借金の総額は約1200万円となります。

現状は、問題ない財政状況と言えるでしょう。

ここで、国債発行額を増やして、毎月の借金返済額が18万円になってしまったらどうでしょうか?

月収18万円が、すべて、借金の返済に使われる事になり、追加でどこからか借金をしなければ、家賃や食費を払う事が出来なくなり、実質的に経済破綻状態となります。

実際の社会では、月収18万で、その全てが借金の返済に消え、借金の総額が1000万の経済状態の人に、お金を貸してくれる会社はありません。

国家のスケールに話を戻しますと、国債費が増えすぎてしまうと、税収(収入)に対しての比率が多くなってしまうので、税金を上げるか、社会保障や公的サービスなどの支出を削るしか手段がなくなってしまいます。

税収=国債費となった段階でも、追加で借金をすれば良いという主張もありますが、日本国債を発行したり、海外政府からお金を借りれば、更に借金の残高が増える事となり、将来的に支払わなければならない利息と元本の額が増えていき、借金がさらに勢いを増してダルマ式に増えていく事が想像できると思います。

そして勿論、国の借金が増えるという事は、市中の円通貨の流通量増加を意味しますから、その分円安が進行します。


1-2.日銀が利上げをする事が難しくなる

まず、長期金利というのは、金融機関が1年以上のお金を貸し出す際に適用する金利のことで、長期金利の代表的な指標として、10年物の国債利回り(国債金利)の値が使われています。

現在、長期金利は、日銀が保有する日本国債の総額でコントロールされています。

どういう事かと言いますと、長期金利を下げたい場合は、日銀が保有する国債の総額を上げ、長期金利を上げたい場合は、日銀が保有する国債の総額を下げているという事です。


次に、実際の日銀の国債保有残高の話に移りますが、

以上の画像から解るように、2013年のアベノミクス(量的緩和政策)を境に、日銀の国債保有残高が大幅に上昇しており、2022年現在の長期金利は0.180%となっております。

ここで、仮に日本でインフレが進行してきたので、金利を上げる事になった場合を考えます。

長期金利(国債の金利)を上げると、1-1.で述べた、国債の利払い費(利息分)が上がってしまう事になります。

そして、国債の金利を上げると言っても、完全に日銀が金利をコントロールしているという事ではなく、最終的に市場がその値段を決めているので、金利の上がり方が緩やかに上がるのではなく、急激に上がってしまう場合もあり、その場合、一気に国債の利払い費(利息分)が、税収を上回って、前述した財政破綻状態に到達してしまう可能性もあります。

現在の日銀の国債保有残高は、約517兆円と既に高額なため、金利を上げるにはかなり上記のリスクが高い状態であり、私は今後大きなインフレが起こっても、日銀が金利を上げられないではないかと考えています。

そして、日本の借金の残高が増えれば増えるほど、日銀の国債保有残高は上がりますから、そのリスクも増していくことになります。


1-3.外交上の観点からも問題

現在、日本は、アメリカ合衆国・欧州連合・イギリス・スイス・カナダとの間で、期限無期限・金額無制限の通貨スワップ協定を締結しています。

ですから、日本一国だけ、通貨を発行しまくると、通貨スワップ協定を結んでいる他の国々が、迷惑を被る事は間違いありません。

さらに、その海外の国々から、遺憾の意思表示だけされるなら良いですが、最悪の場合は、通貨スワップ協定の破棄日本への経済制裁に繋がる可能性もあります。


実際、2010年6月のG20首脳会議(トロント・サミット20)にて、"2013年に少なくとも財政赤字を半減し、16年に政府債務のGDP比を低下させること"を目標として合意がなされました。

そして、その際、"日本政府は、プライマリーバランスのGDP比を、2015年度においては2010年度比で半減し、2020年度には、プライマリーバランスを黒字化する"という国際公約を結ばされています。



2.国の借金を増やすべきではないという事ではない

2-1.適量な国債発行によるインフレは必要

2022年現在は、海外各国においてもインフレが起きているので、それに相対して日本人の賃金上昇を引き起こすために、日本でもインフレが起きた方がいいと言われておりますが、実は、国の借金を返済するにも、インフレが起きた方が都合が良いのです。

インフレが起きれば、必然的に物価は上がり、その分消費税や相続税といった各税収が増える事になります。

そうなると、月収18万円の人が、月収30万になった一方、借金返済額は6万円のままということになるので、一気に借金返済に有利になる事がお解りだと思います。

ただ、インフレだけ起こりますと、得をするのは政府側だけで、物価が一方的に上がる状況では、市民側には一切恩恵がありません

ですので、インフレに伴い、日本人の実質賃金を上昇させることが必要になります。

2-2.実質賃金を上げるには、減税と社会保険料の減額が必要

端的に言って、日本の実質賃金が上がらない理由は、"日本国民の日本政府に対する信頼が無い"からです。

2020年に発生したコロナウイルスの不況時にも、消費税を下げなかったり、常日頃、増税を画策するような政府の発言も相まって、ほぼすべての日本人に、"政府は常に増税の機会を伺っている"と考えられてしまっています。

企業は、一度給料を上げてしまっては、容易に下げる事が出来ず、日本においては解雇も容易ではないので、給料を上げた途端に、増税や社会保険料増額が実施されてしまうと、一気に経営が傾いてしまう可能性を考えるので、現状において賃上げが実施される可能性はほぼ100%ありません

この国民からの不信を解消するには、消費税の減税や社会保険料の減税を実施し、行動を示すことで、国民からの信頼を勝ち取る以外ないでしょう。

さらに、消費税の減税や社会保険料の減税を実施する事で、全ての企業にはその分の費用が利益となりますから、その全額を従業員の給与に回す事も可能となるので、賃上げを促進する上で非常に有利です。


結論.

社会保障の給付と負担の現状と国際比較

他のnoteでも述べていますが、日本の借金の大半の原因は、主にお年寄りの社会保障費にあります。

Wikipedia「日本の福祉」からの引用になりますが、1961年国民皆保険と国民皆年金が実施された事で支出が増え始め、1973年に田中角栄内閣によって、老人医療費無料制度の創設(70歳以上の高齢者の自己負担無料化)、健康保険の被扶養者の給付率の引き上げ、高額療養費制度の導入、年金の給付水準の大幅な引き上げなどの大幅な社会保障の拡充がなされたようです。

その証拠に、章頭にある画像のグラフでは、1961年に支出額が上がり始め1973年からはその上がり幅が一気に広がっています

そして、増えた社会保障支出に対応するために、1989年に消費税が導入されました。

2022年現在では、毎年約140兆円の社会保障費が支出されており、これから2025年を境に、2040年まで、その額はさらに上がると考えられています。

ですから、1章の観点から、何らかの工夫を行い、主にお年寄りの社会保障費を減らす事が、日本の財政破綻の一番の対策になると考えています。

そして、2章の観点から、賃上げに伴う適度なインフレは必要なので、賃上げ効果が見込める対象に財政出動を行う事が必要で、減税や社会保険料の減額は勿論、若者を対象に保障を拡充したり貧困若年層に対して、現金給付を適度に行う事も必要だと考えております。


今回の記事は以上となります。
お読みいただき、ありがとうございました。


参考文献.


日本をダメにした財務省と経団連の欺瞞 by 三橋貴明



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