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『国民のための憲法改正③』 日本において、一院制導入(参議院廃止)を検討すべき理由


はじめに.

国会議員達の身を切る改革を考える上で、本当に参議院は必要なのか?という論点は、再考する価値があります。

ですので、今回のnoteでは、まずは海外の二院制度について、概観し、本当に参議院は必要なのかという事について、私なりに検証させていただこうと思います。

何故、二院制の国のみに着目するかと言うと、二院制の国の制度を概観し、その機能と権限を確認する事で、二院制はどういうメリットや機能を持つのかという事を考え、それが重要では無ければ、一院制で問題ないと言う事が出来るためです。

それでは、本編をご覧ください。


1.各国の上院議員制度

世界の議会、一院制が6割 先進国は二院制が主流

まず、一般論として、一院制を採用している国の方が割合としては多いのですが、以下の画像の通り、GDPが高い先進国、つまり、民主主義が発達している国は、二院制を採用している事が多いと言われております。

それでは、実際に、各国の上院議院制度を見ていきます。


①イギリス

まず、イギリスの上院議院は、通称貴族院と呼ばれており、選任方法は、任命制(非公選制)で、貴族身分の者が議員となり、しかもその任期は終身であるとされております。

ですが、貴族院の持つ権限については、法案の成立を1年遅らせる遅延権に限られるとされており、事実上の名誉職と言っていいでしょう。

つまり、イギリスは、実質的には、一院制であると言う事も出来ます。


最後に、簡単な補足をすると、貴族院の議員となる資格を持つ人々としては、世襲貴族・聖職貴族・一代貴族が挙げられ、現在、全778議席の内、世襲貴族の議席は92議席、聖職貴族は26議席であり、残りの660議席は、一族貴族が保有しております。

一代貴族は、政府の任命により、貴族としての階級が付与された人々であり、大多数がベテラン政治家である他、上級公務員や企業役員、医者、学者等国家の功労者が任命される事もあるそうです。

なので、庶民院(下院)は、度々、貴族院の廃止や貴族院議員の公選制の導入等の改革を実行しようと試みておりますが、貴族院自体が、イギリス国内で大きな影響力を持つ議員で構成されている事もあり、そのほとんど失敗に終わっているとの事です。


②フランス

まず、フランスの上院議院は、元老院と呼ばれております。

選任方法は、以下の引用から解る通り、間接選挙制となります。

元老院の議員は、間接選挙により選出される。
選挙人は、当該選挙区の下院議員、州・県・コミューンの議会代表で、大多数が地方代表である。
2003年法改正により、任期は6年(3年ごとに半数改選)、被選挙年齢は30歳以上となった。2010年現在では定数は343名(在外12名)である。
地方政府の議員等との兼職が認められており、実例も多い(参議院憲法調査会平成17年海外派遣報告参照)。
名実ともに地方の代表の院である。

議会制の動向~主要国における近時の動き~


そして、元老院の持つ権限としては、以下の引用の通りです。

(1)両院関係の優劣第五共和制憲法の下で各院にほぼ対等な関係が与えられているのが、通常法案の審議権表決権である(もっとも後に述べるように、最終的に国民議会の優越が認められる局面がある)。
これに対して予算法案社会保障財政法案の先議権、さらに内閣不信任の権限は国民議会に属する(憲39条2項、49条2項)。
一方、地方公共団体の組織を対象とする法案や在外国民の代表機関に関する政府提出法案については元老院にその先議権が与えられる(憲39条2項)。

主要各国議会の現状

通常の法案や予算については、監査権限に限る等、ほぼ実権を持ちませんが、その一方で、上院議員の選出方法を見ても解る通り、上院議院は、各地方の代表という役割になっているため、地方に関する法案等については、先議権は持っているようです。

しかし、先議権を持っているだけで、地方に関する法案等の場合であったとしても、上院と下院で成立を揉めた場合は、首相が協議を開催するものの、最終的には、国民議会(下院)が優先されるため、日本の参議院程、フランスの元老院の権力は強くないと言う事が出来ます。


③アメリカ

アメリカの上院議院の選出方法は、下院と同様に、単純小選挙区制(公選制)となります。

しかし、議席の各州への配分方法については、各議院で制度が異なり、下院議院では、各州の人口に比例して、議席数が配分されますが、上院議院では、各州等しく2議席配分されるため、一般的に、"上院議員は、各地方の代表である"と称される事が多々あります。

また、上院議院の持つ権限においても、下院と完全に同等とされており、下院の優越権が無いため、他国に例が無い程、上院議院の権限は強いと言えます。

つまり、下院で法案が可決されたとしても、上院で否決されてしまった時点で、完全に廃案となります。


④ドイツ

ドイツの上院議院は、連邦参議院と呼ばれており、完全に、上院議員質は、州政府の代表となるような制度となっており、選出方法としても、各州の憲法等に基づき、各州の一存によって、議員を自由に選出する事が出来ます

また、連邦参議院の権限については、連邦参議院の同意が必要とされる、各州の利益を害する法案については、権限を持つものの、年々連邦参議院の権限は縮小されているとのことです。

つまり、フランスと同様に、下院の権限が強く、ほぼ実質的には、一院制と見做す事が出来ると言えます。


⑤イタリア

最後に、日本の参議院制度と非常に類似していると言われている、イタリアの二院制制度について、取り上げさせていただきます。

イタリアの上院議院の選出方法としては、下院議院と同様とされますが、その権限においては、下院の優越権が認められていないなど、日本の参議院よりも強力な権限を、上院は有しております。

イタリアにおいても、第二次世界大戦後に、議会制度改革なされ、「対等で対称的な二院制」という理念の下、日本と似たような上院が確立されましたが、その事が、イタリアの政治の機能不全を招いていると指摘されております。

しかし、その一方で、2001年に憲法改正が実施され、大幅な地方分権が成功し、"元老院は州を基礎として、選出する"という一文が明記される等、日本よりも改革は進んでいると言えます。

ですので、まだ実効的な上院制度の改革は実現出来ていないものの、現在進行形で、上院制度の改革を模索し、実際に試みている状況にあるとのことです。


2.日本の参議院について思う事

参議院議員の松川るい氏及び今井絵理子氏のフランス研修に関する投稿

まず、現在の日本の参議院は、新人議員や新興政党の穴場となっており、それらの新興勢力に、政党交付金や議員歳費を提供する以外、大した役割を果たしていないと言うのが正直な所でしょう。

ちなみに、アメリカの上院議院についても、被選挙権が与えられるのは満30歳以上という要件があったり、任期も6年であったりしますが、何故そうなっているのかと言うと、"上院議院は、政界のベテラン議員達によって占められるべき"という意図であったからです。

つまり、政界のベテラン議員達に、6年間と言う社会情勢に作用され難い長い任期を与える事により、腰を据えてじっくり下院の政治に助言して貰おうという趣旨で成立したのが、元々のアメリカの上院だという事です。

確かに、日本は完成されたアメリカ上院の制度を真似ただけですが、今の日本では、元タレント元ニュースキャスター等、何故手厚く身分が保障されるのかが解らない人材が、次々に参議院議員となっているので、その元々のアメリカの上院議院の趣旨から大幅に逸れている訳です。


また、衆議院の優越権はあるものの、参議院の権限は無駄に強いため、一度参議院が否決すれば、再度衆議院で、出席者の3分の2の賛同という特別決議を経なければ、法案が通らないため、改革が進まない大きな要因になっております。

実際、"ねじれ国会"と呼ばれる状態が生じ、議会の活動が停滞してしまう事も起こりました。

現に、これまでの戦後の日本政治を見ても、議会主導の改革がほとんど行われておらず、憲法改正に至っては、憲法改正発議すら、一度も行われておりません。

なので、今後、国の大きな転換を図る上で、一院制にした方が有利なのではないかと考えられる訳です。


一院制となれば、憲法改正も含む、あらゆる改革がスピーディーに行われ、誰がやっても変わらないと言われるような政治停滞を打破する事が可能となるでしょう。

さらに言えば、日本の政治家は、改革が行いたがらない風潮があるので、逆に、一院制の方が丁度良いのではないかとも考えております。

ただし、次章で述べるように、保険として、二院制自体は残し、地方政府の代表としての新上院議院制度に転換しても、良いと思います。


3.新二院制度の提唱

二院制度を維持する場合の一つの方向性として、ドイツのように、各都道府県の首長47人を上院議員とした地方代表制の上院制度に変えるのも一つの手であると思います。

その場合の大きなメリットとしては、各都道府県知事達は、既に膨大な給与や退職金を貰ってますから、各上院議員の給与や手当てを一切払う必要が無くなるという事です。

仮に、各都道府県知事が、各地方の公務で忙しい場合であっても、代理人が出席出来る制度を設ければ良いだけです。

その新上院議院の権限については、議論の余地があると思いますが、仮に今の参議院の権限を維持されたとすれば、東京や一部の都会のみが優遇されないように防ぐ大きな効果があるので、役割や存在意義が明瞭となり、議員の経費も一切かからなくなるので、自分ながらに有意義な改革だと考えます。


まとめ.

現状の参議院制度は、日本の政治改革を阻む要因の一つとなっているので、参議院の権限の縮小など、政治改革を実効的に行うために、改革を考える余地が大いにあるでしょう。

そもそも、参議院の成立に至った経緯を見ても、参議院の役割自体も不明瞭であり、存在意義もよく解らないと言うのが、正直な所です。

と言うのも、今の参議院と言うのは、GHQが日本を一院制にしようとしたものの、"何か根拠がある訳ではないが、二院制にしたい"という日本政府の意向から、導入された議院であって、設立当初から、存在意義や役割が不明瞭だった訳です。

ですので、戦後からそのまま、何の意義も役割も定められず、現在までに至る訳です。


さらに、高い経費(議員歳費)がかかっている参議院議員達をただ放置するのでは、イタズラに税金が無駄になってしまうだけでしょう。

なので、選挙の機会を国民に付与する役割とするならば、任期を2年~4年に変更したり、衆議院の監督機能に限らせるなら、給与や手当も減らせるでしょうし、議員秘書も必要無い訳です。

また、3章で述べたように、上院議員を、各地方の代弁者とするような制度改革も、考える余地があると思います。


以上を総括すると、私は、今の参議院制度を放置すべきではないと思っております。

何度も言うように、現参議院制度は、政治改革を阻み、大きな政治停滞を産んでいる要因の一つであるからです。

また、現状では、元タレント元アイドルが参議院議員となっており、参議院の任期は6年もあり、その間、高い給与や各種手当で、手厚く身分が保障されている現状を考えると、その手厚い待遇を受けるのに相応しくない参議院議員が山程いると言っても過言では無いと思えるからです。

そして、一院制への転換等、参議院制度の改革については、今後の政治に大きな影響を与える可能性が高いため、それを我々国民が、再考する意義は大いにあるのです。


参考文献.

・二院制議会の比較政治学――上院の役割を中心に

・二院制の比較研究: 英・仏・独・伊と日本の二院制

・議会制度―議会法学入門

・現代議会制度論―日本と欧米主要国

・国会を考える

議会制の動向~主要国における近時の動き~

主要各国議会の現状


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