今ある姿を
ポール・ウェラー。
以前少し記事に書かせて頂いた「モッド・ファーザー」の事。
2005年の初秋の頃に発売された「アズ・イズ・ナウ」で初めてそのサウンドに触れた。
当時ポール・ウェラーに関する事は、ザ・ジャムのフロントマンで解散後はスタイル・カウンシルを率いていたという予備知識しかなかった。
そう、何かのコンピレーション・アルバムでザ・ジャムの「イートン・ライフル」を聴いた事がある程度でした。
まあ、イートン・ライフルが個人的に凄く気に入ってて、その流れでソロになってからの作品を聴いてみたいなと思ったのと、当時バリバリ聴いていたOasisのメンバーがコラボしたり、尊敬しているみたいな事を雑誌などで語っていたので必然的に興味を持っていた。
そして2005年の9月終わりというのに残暑が厳しかった頃。
とあるCDショップで見つけたのがポール通算10作目となるアルバム「アズ・イズ・ナウ」
スーツスタイルで腕を組み、サングラスをかけて貫禄たっぷりにカメラアングルな佇まい。
「これが俺だよ。何か文句あっか?」
まるでそんな事を主張するがための佇まい…。
そう、いわゆるジャケ買いですね。
ジャケットのその滲み出る渋みや、一人の成熟したシンガーの自信のようなものが見受けられてポール・ウェラーを聴いてみたかったし、すぐに購入した記憶がある。
ポール・ウェラー当時47歳。
そのジャケ姿にあこがれて自分もこんな40代後半を迎えたい!って思ってたっけ。
現在40代を迎えてその年齢に近づきつつあるが…
まあ理想と現実はってやつですね(*'ω'*)
自分の事はどうでも良いとして、この「アズ・イズ・ナウ」という意味を、アルバムのライナーノーツに書かれてある説明書きを参考にして書き記してみると…
大体の意味合いは、自分なりの解釈も付け加えて今ある姿を、今あるままに、っといった感じだそうだ。
その当時の音楽性を思う存分に作品に落とし込み、今ある自分の音作りを感じて欲しい。
きっとそんな思いで作品を作ったのであろう。
ザ・ジャムやスタイル・カウンシルを経て辿り着いたソロとしての境地。
ソロ・アーティストとしての立場を確立し、己の音楽性を追求する道を邁進していたポールは「アズ・イズ・ナウ」前後で2004年に「スタジオ150」というカヴァー作品をリリースし、2006年には「アズ・イズ・ナウ」のツアーの様子を納めた「キャッチ・フレイム」というライブ音源のアルバムを発表している。
「スタジオ150」で過去の自分と向き合い、そして受け止めその後に発表した「アズ・イズ・ナウ」で今ある自分を発信し、その結果として「キャッチ・フレイム」ではソロの作品のみならず、ザ・ジャムやスタイル・カウンシルの曲もカヴァーしている。
過去を振り返らず、新しい作品に注力してきたポールにとってこの2004年~2006年にかけての流れって割と重要だったのかも…。
なんちゃって。
「アズ・イズ・ナウ」を手にした自分は早速CDプレイヤーで作品に耳を通してみた。
ザ・ジャムの「イートン・ライフル」しか知らなかったので、パンキッシュで、どこかクールな感じのものを想像していたのだが…
作品全体を通して一聴して感じた感想が多様なタイプの曲が収録されており、大人な、正しくアルバムジャケットにある姿のようにスタイリッシュな雰囲気を持つ、ポール・ウェラーの今が凝縮されたものなんだと感じた。
もっとロッキンなのかと思ったら、いやいや普通にカフェでかかっていてもおかしくないやん、って感じか。
なので若干の肩透かしを食らったような感じにはなったが、でも聴けば聴くほどに渋いし、晴れた日の青空の元で聴いたら気持ち良さそうな清々しさもたたえ、陽陰のバランスが取れた素晴らしい作品だと思っている。
UK独特のニュアンスも感じさせるギター感満載の曲もあれば、ピアノに主軸を置いたレイドバックしたヨーロッパ的なサウンドもあったりと、多様さはポール・ウェラーの歩みそのものなのかもしれない。
サックスなどのホーン隊の絡みもよく、サウンドに厚みを持たせている。
目立たず、かと言って奥に引っ込みすぎず…
みたいな感じか。
ファンク色に満ちた曲もあり、途中にパンキッシュな短いインストを挟み次曲に映ったりするなど作品の幅は広く、ポール・ウェラーの美学みたいなものさえ感じてしまう。
アルバムは日本盤でボーナス・トラックを挟む16曲で構成されている。
そんな中で一部好きな曲の動画を付けてみました。
ポール・ウェラーが思いっきりギターをかき鳴らし、印象的なリフでスタートする1曲目の「ブリング・アンド・ウィル・ミス・イット」。
エレキギターサウンドの重なりが特徴的に感じ、ソリッドな響きが癖になる。
様々な音を追求してきたポールのモダニズム的なロック・サウンドともいえるのか。
「一瞬の出来事、見逃してしまうかもしれないぞ」
っと注意喚起する彼の自信の表れともいえるアルバム冒頭のナンバーだ。
3曲目の「カモン/レッツ・ゴー」。
軽快なテンポの元、これまたギターサウンドを前面に押し出したナンバーで、爽やかな風を切って走り去っていきたいような衝動に駆られる、颯爽とした曲だ。
行き先さえ決めてない、走りたいだけだと恋人に言い、その歌い方がまたカッコイイと思う。
ベース・ラインや、途中で入るコーラスもまた曲の雰囲気を醸すうえで良い仕事してると思ってます。
ザクザク刻むカッティング・ギターに疾走する8曲目の「フロム・ザ・フロアボーズ・アップ」。
アルバムからの先行シングルとして発表された。
抑揚をつけたポールの歌い方にギターもそうなんだが、リズム隊(ドラム・ベース)の音も前面に出ていてそれが凄く聴きやすいんですよね~。
ちょいとファンキーさも醸した好きな曲だ。
5曲目の「スタート・オブ・フォーエヴァー」。
フォーキーさを纏う優しさに満ちたナンバー。
二人の愛と永遠の始まりといったキーワードが綴られていて、ユッタリめな曲調のタイプにも、ピタリと寄り添うポールの声もまた一つの魅力でもある。
こういう曲もまた良いんですよね。
14曲目の「ベブル・アンド・ボーイ」。
動画ではライブ版を。
憂いを帯びたピアノの調べが、ポールの声と重なりあい、それがアイコニックなものにしている。
途中のストリングス隊の出番もあり、一抹の寂しさみたいなものさえ感じてしまう。
「少年と小石の違いが分かるかい」と尋ね、それが一人の人間の未来の歩みを歌っている節もある珠玉のナンバー。
ひたすらに美しい音色のする曲です。
っとまあザックリと好きな曲に絞ってアルバムの事を書いてみましたが、他にも印象的なナンバーはたくさん。
オリエンタルな雰囲気を持った曲などもあり、多種多様で聴き応えが凄くある作品だ。
過去も現在も一手に引き受けて今ある姿を堂々と披露した「アズ・イズ・ナウ」。
思えばジャケットは、ヨーロッパ的で伝統的な建造物の前に立ち、スタイリッシュな恰好をして、腕組みをして全身を映し出している。
伝統的なものとは過去のものとも言え、それは「ザ・ジャム」であり、スタイリッシュなものは、それがサウンドの特徴とも言えた「スタイル・カウンシル」の事を指しているのかもしれない。
こじつけではあるが、それを身にまとい、腕組みをして今ある姿をジャケットにしたのはある意味、全てを昇華し自らのフィルターにかけて構築した、自身のモダンなサウンドの自信の表れみたいなものなのかもしれない。
「これが今の俺だよ。」的な…。
大好きなアルバムだ。
ちなみにポール・ウェラーはいよいよ1月26日から来日公演をスタートさせ、2月3日・4日の東京公演にはオープニング・アクトとしてリア・ウェラーが出演する。
名前を見て分かる通り、ポール・ウェラーのお子さんです!
いや~、親子で一つのライブに競演って凄いですよね!
曲を一つ視聴してみたけど、お父さんに負けずオシャレで良い声してますよ。
R&B色たっぷりで良い曲です。
ポール・ウェラーも今年で御年66歳。
精力的に作品を発表し、過去との自分を更新し続けるその姿こそが、価値あるものにしているのかもしれない。
記事を最後まで読んで頂き誠にありがとうございます!
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