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「ゲッティング・レディー」

「GETTING READY」

訳してみると「準備をする」っという意味になるらしい。

「Get ready to~」で「~の準備をする」になり、「getthing ready to~」で「~の準備をしている」というニュアンスになるわけか。

さらに調べてみると「Get ready」の「準備する」の意味合いから転じて、「覚悟しろ」という意味でも使われるそうだ。

深いですね。

言語というものは。

もっと英語を勉強していきたいな~。

それはさておき、唐突に何故「GETTING READY」の事に触れたのか…。

自分の好きなブルース・シンガーにフレディ・キングというシンガーがいる。

フレディ・キング。

本名フレディ・クリスチャン。

1934年、テキサス州ギルマーの地で生を授かったブルース・マン。

50年にシカゴに移り住み、音楽活動を開始する。

同世代のオーティス・ラッシュやバディ・ガイらと切磋琢磨し、ギターの腕を磨いていった。

56年に初録音をする。

60年にジェイムズ・ブラウンも在籍していたキング・レコードと契約を交わし、その傘下のフェデラルで活動をする。

66年までフェデラルに在籍しており、「ハヴ・ユー・エヴァー・ラヴド・ア・ウーマン」や、R&Bチャート5位のヒットを飛ばした「アイム・トア・ダウン」、インスト・ナンバーの「サン・ホ・ゼ」にエリック・クラプトンが在籍していた頃のジョン・メイオール&ブルース・ブレイカーズにカヴァーされた「ハイダウェイ」などヒットを飛ばしていく。

動画はエリック・クラプトン在籍時のブルース・ブレイカーズによる「ハイダウェイ」。

その後69年にアトランティック傘下のコティリオンでR&Bやファンクの影響を反映した「フレディ・キング・イズ・ア・ブルース・マスター」を発表し、70年代にレオン・ラッセルのシェルター・レコードに在籍する。

件のアルバム「ゲッティング・レディ」を発表したのはシェルター・レコード在籍時の71年にリリースされた。(録音は70年)


アルバムはレオン・ラッセルとドン・ニックスがプロデュース。

時代はロックが隆盛を誇り、R&Bやソウル、サザン・ソウルやファンクなど多様なサウンドが音楽に彩りを与えようとしていた頃。

B.B.キングのモダンなブルースや、R&Bなどに影響を受けたブルースを展開していたフレディはその時代の空気感を巧みに取り入れた作品作りをしていく。

名インストナンバー「ハイダウェイ」も61年に発表したバージョンから、よりファンク色の強いバージョンを69年発表の「フレディ・キング・イズ・ア・ブルース・マスター」で披露したりしている。

プロデューサーの影響もありつつ、フレディも多様なジャンルの音楽性を好んでいたのだろう。

「ゲッティング・レディー」はR&Bやソウル、ファンクやロック色も感じるブルース・アルバムに仕上がっている。

親指と人差し指にサム・ピックをつけ、フィンガー・ピッキングと共に紡ぎ出されるフレディのギタープレイは小気味の良い音を立てて、チョーキング(弦を押し上げたり、下げたりして音程を変化させる方法)や、ビブラート(弦を押している指を震わせて音を立てる方法)でもってブルースの奥ゆかしい部分を表現するフレディのギター・サウンド。

時に豪快に、時に繊細にそのギタープレイはエリック・クラプトンなどに影響を与えている。

アルバムでは存分にフレディの奏でる卓越したギタープレイが聴ける。

存分にブルースなフィーリングを醸しつつも時にロッキンなニュアンスでもって豪快に繰り広げたり、ファンキーなノリで聴く者の心を揺さぶるような歓喜に満ちた側面を感じさせてくれたりする。

動画などでフレディの演奏シーンを視聴していると、汗をかきながら声を絞り出しギターに向き合っている姿を見る事ができる。

「ゲッティング・レディー」はそんなフレディ・キングの姿にピッタリなアルバムなのかとも思っている。

さて、アルバムの題名でもある、訳すると「準備する」というタイトル…。

自分なりに考察してみると、ブルースのみならず多様な音楽に接近したブルースを展開していたフレディ・キング。

時代の音を取り入れ、各レコード会社でうまく当時の流行のようなサウンドを咀嚼し自らのブルースを形作っていく。

それはある意味フレディによるブルースの幅を広げていくのと同時に、ブルースの可能性も追求していたような気もする。

「スワンプ・ロック」(ゴスペルやブルースなどのアメリカ南部産の音楽に影響を受けたロックのジャンル、1960年末~1970年代前半位が隆盛)の有名ミュージシャンでもあるレオン・ラッセルの設立したシェルター・レコードに身を置いたのも、更に自分の追い求めるブルース道を押し広げるための選択だったのかもしれない。

そんな自らのブルース道に一つ結実した結果として表れたのが「ゲッティング・レディー」であり、作品として完成しつつも「準備する」とあるのは更なる高みを目指しているために敢えて「準備する」としたのかな。

作品は最高の出来でありつつも、ある意味自分の決意表明のような感じのタイトルだったのかもしれない。

いや、全くの検討外れな考察かもしれませんが💦

まあ、自分のタイトルに関する考察は良いとして「ゲッティング・レディー」は、仕事前や仕事終わりに夜に聴いてもピタリとはまるような好きな作品だ。


アルバムオープニングナンバーの「セイム・オールド・ブルース」。

ドン・ニックスプロデュース。

バックで鳴り響くピアノやオルガンのキレイな音色、フレディの叙情的なリード・ギターに感情を昂らされ情熱的な歌声が印象的なソウルフルなブルース・ナンバー。

途中で入る女性コーラスが更に曲の雰囲気を盛り上げる。

雨が朝から降りつづけ、太陽が見えてきても雲に覆われ、やがて雨が降っていく。

それは古いブルースみたいなものだと、一人の人間の哀愁を感動的なナンバーで昇華させる演奏はブルースのプリミティブな部分さえ感じてしまう。

心に沁みるナンバーです。

エルモア・ジェイムズの代表曲「ダスト・マイ・ブルーム」をアコースティックギターでカヴァーしたフレディ・キングの「ダスト・マイ・ブルーム」。

本家エルモア・ジェイムズはオープン・チューニング(開放弦の状態で鳴らした時に、GコードやDコードなどの音が鳴るように調律する手段)でスライド・ギターをかき鳴らすスタイルで披露されているが、フレディの小気味良いアコースティックギター音がまた一味違う魅力を放っている。

「その場を去る事」という意味であるらしい「ダスト・マイ・ブルーム」。

まあ、朝起きたら彼女の元を去るみたいな感じなのだが、フレディバージョンの軽快な感じがその足取りを表現しているようにも聴こえる。

ブルースの定番曲「キー・トゥ・ザ・ハイウェイ」。

ビッグ・ビル・ブルーンジーの作品で数多くのアーティストにカヴァーされている。

フレディバージョンはファンキーに仕上がっており、ハモンドオルガンやベース音、ドラムスのハイハットやスネアのリズムが心地良い。

フレディの「イヤ~!」の声から始まり、ファンキーなフレディのギタープレイが耳に残る。

凄くギター音を揺らすビブラートが聴いた感じが絶妙な感じがするんですよね。

恋人と別れ家を出て、ハイウェイをわたり歩く一人の人間の物語。

その寂しさを表裏一体に表現するフレディのリード・ギターと歌声は聴き応えたっぷりです。

ドン・ニックス作の作品で、連打したリズミカルなピアノ音が特徴的なディープなソウルを醸すご機嫌なナンバー。

熱を帯びたフレディのギタープレイがそのリズムを強調させる。

チョーキングの「キ~ン!」って音が聴いてて心を鷲掴みするんですよね(笑)

途中でフレディの「アウッ!」って掛け声も、ファンクっぽくて最高です。

何より演奏をしているのが楽しそうな雰囲気が伝わって、テンションの上がるナンバーです。

他にも印象に残るナンバーは多く、ブルースをより多様なジャンルにフィットさせて「フレディ・キングのブルース」として作り上げられた好きな作品。

残念ながらフレディ・キングは1976年に42歳で心不全により急逝してしまうが、その影響は他のアーティストにも与え偉大さみたいなものも伺える気がする。

これから暖かくなるにつれて気分も変わってくるであろう時期。

そんな時期にも良いんじゃないかと思うフレディ・キングの「ゲッティング・レディー」。

自分達も来たる春に向けて準備をしていかねば!

なんちゃって。

記事を最後まで読んで頂き誠にありがとうございます!


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