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『人間の建設』No.15 数学も個性を失う №3

小林 ‥‥‥岡さんの数学の世界の世界というものがありましょう。それは岡さん独特の世界で、真似することは出来ないのですか。
岡 私の数学の世界ですね。結局それしかないのです。‥‥‥ほんとうの詩の世界は、個性の発揮以外にございませんでしょう。各人一人一人、個性はみな違います。それでいて、いいものには普遍的に共感する。

小林秀雄・岡潔著『人間の建設』

 小林さんが、前段の対話で出た、数学の個性という問題について、数学者岡さんの世界に対象を絞ってなお聞いていきます。
 に対して、岡さんが「私の」「それしかない」と明確な言葉で返しています。数学こそ個性の発揮される世界だといわんばかりに。

 私ごとですが、学校時代あまり数学が得意といえず、むしろ苦労した口です。このような凡人レベルでは個性も何もあったものではありませんね。

 さて、そんな凡人読者にもわかりやすいように岡さん、もう少しかみ砕いて、詩の世界になぞらえわかりやすくしていただけました。すぐれた詩の世界はまさに個性の花開く世界。このたとえならなんとなくわかりやすい気がします。

 そういう岡さん、随筆をものしたし、作句もされました。数学者であり、文人でもあったひとです。

 個性はみな違っている。違っていてもいいものには「普遍的に」共感すると岡さんは言います。普遍的とは、辞書によれば「あらゆる物事にもれなく当てはまるさま」、または「きわめて広範にもれなく行き渡るさま」とあります。

 個人の世界が、逆に何事にももれなくひろい範囲に、となるのが不思議な気がしますが、ただ違っていればいいというわけではないんでしょう。岡さんの言うには、「いいもの」には共感が芽生えると。

 では、いいものとは何か。それは、他人の真似ではないもの。だから個性が際立つほど味があって面白いから共感を呼ぶということだと思います。(※1)

 話はなお続きますがそれは次回に。


――つづく――

※1. 難しいのは凡人が無理に個性を出そうとすると変な自己中心のもの、へたをすると醜悪な「無明」というものになってしまうのですね。

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