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『人間の建設』No.31 美的感動について №1〈芥川龍之介〉

岡 芥川は詩という言葉が好きでした。しかし詩という言葉の意味は説明していない。わたしが大学を出て2年目に芥川は死んだのですが、私たち芥川の同好者が寄って話をするとき、最も話題になるのは、芥川の呼んでいる詩とは何だろうということでした。それは直感と情熱だというふうに説明すればわかるのじゃないかと思ったのです……。
小林 詩というものも、僕ら、若いころと、それから近ごろと、考えが違ってきましたね……。昔はずいぶん受け身でしたよ……。それがこの頃では次第に逆になりまして、私の方からいろいろ想像を働かすのだな。

小林秀雄・岡潔著『人間の建設』

 ここで岡さんは芥川龍之介の呼ぶ詩とは何かについて、「直観と情熱」と説明します。

 直観と情熱、どこかで聞いたと思いましたら、この対談の最初の方「国を象徴する酒」の節で見ました。すこしふりかえってみましょう。

岡 よい批評家であるためには、詩人でなければならないというふうなことは言えますか。
小林 そうだと思います。
岡 本質は直感と情熱でしょう。
小林 そうだと思いますね。
岡 批評家というのは、詩人と関係がないように思われていますが、つきるところ作品の批評も、直観し情熱を持つということが本質になりますね。

 岡さんは、文学や芸術にも深い興味と造詣をもっているようで、この方面で小林さんの批評というなりわいにつながるものがあります。

 また、自身も随筆も多くものしました。小林さんがその中の『春宵十話』を批評した縁でこうした対談が実現したのですね。

 その小林さんに対して、冒頭の対話につづけて岡さんはこういいます。

岡 今日初めてお会いしている小林さんは、たしかに詩人と言い切れます。あなたの方から非常に発信していますね。

 じつは、冒頭の対話に先立ってこういうことを岡さんは言っています。

岡 ……そして直観と情熱があればやるし、同感すれば読むし、そういうものがなければ、見向きもしない。そういう人を私は詩人といい、それ以外の人を俗世界のひととも言っているのです。 

 昔、詩人というものについて、「詩人とは成るものでは無く、そう生まれつくものだ」という言葉をどこかで読んだか聞いた記憶が私にはあります。

 その真偽について私にはわかりませんが、「直観と情熱」という岡さんが言い、小林さんが肯定したものが詩人や批評家の本質とすれば、生まれによらずだれでも「詩人になる」ことはあながち不可能なことではないと思料するのです。

――つづく――

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※mitsuki sora さんの画像をお借りしました。


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