宮内窓花( みやうちまどか)

書くことが好き。感じたことを感じたように書いています。

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最近の記事

肩にふれた手のひら

その朝はいつもより10分くらい早めに家を出て駅に向かった。 毎日が仕事に追われる日々。 頭の中で今日やるべき事を考えながら電車に乗り、座ると同時に軽く目を閉じた。 慌ただしく、とても欲張りな毎朝の時間。 朝食にお弁当、洗い物、犬の散歩、化粧、長い髪を念入りに整える、そして帰宅時に嫌気がささぬようリビングを整えて出かけるまで、短い時間にあれもこれもと詰め込む。 どれも自分自身が、あきらめたくないのだから急ピッチは仕方が無い。 だから私にとって通勤はゆっくりできる大切な「自分の時

    • 会うということ

      親しい友人を病に奪われた。 現実を受け入れようと、綺麗な言葉で納得させようとしても「奪われた」という感情が最も正直なところだ。 葬儀の日お別れに行くと、彼の笑顔は映像となって壁に映し出され、見上げる私と目が合った。 「ねぇなぜそんなところにいるの?ねぇこっちだよ。みんな来るよ。」 次々と喪服を着た仲間が到着しても「自分は誰の葬儀に来てるいるのだ?」と、この思いが付き纏っていた。 「お顔を見てお別れができるそうですよ」 その言葉に葬儀会場の中へ進み、場にそぐわない「我先に」

      • 剥離骨折と娘の習い事

        知り合いの中学生の息子さんが剥離骨折をしたことをきっかけに、若い頃の自分を思い出していた。 私には剥離骨折の経験があるわけでは無い。 ただこの息子さんと同じ痛みを私は遠いあの日、あのお母さんたちに与えてしまっていたのかも知れない、そう思ったのだ。 骨折した息子さんは中学生になってバスケ部に入り 希望に胸を躍らせて毎日真面目に部活に出ていた。 しかしそこで彼は小学生の時からバスケットボールをやってきている「スポ少」の同級生と自分との、力の差を思い知ることになる。 「ス

        • 還暦夫婦

          天気の良い休みの朝 私にはきまって行きたい所が有る。 本当ならば、まずは平日にできない家事を片付けなくてはいけないのだが、その後ろめたさを消すように布団から跳ね起きて支度をする。 そこは沼沿いのカフェ。テラス席は絶好のロケーションで、気持ちが清々するのだ。 夫もこのカフェを気に入っていて、誘うと必ず賛成する。 車で40分程走り、ここでコーヒーを飲む。だが毎回特に話すことは無い。長年連れ添った夫婦は、食事やお茶の度に、あれこれと話をしたりしないものなのだろうと思う。しかしやっぱ