宮内窓花( みやうちまどか)

書くことが好き。感じたことを感じたように書いています。

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記事一覧

肩にふれた手のひら

その朝はいつもより10分くらい早めに家を出て駅に向かった。 毎日が仕事に追われる日々。 頭の中で今日やるべき事を考えながら電車に乗り、座ると同時に軽く目を閉じた。 …

会うということ

親しい友人を病に奪われた。 現実を受け入れようと、綺麗な言葉で納得させようとしても「奪われた」という感情が最も正直なところだ。 葬儀の日お別れに行くと、彼の笑顔…

剥離骨折と娘の習い事

知り合いの中学生の息子さんが剥離骨折をしたことをきっかけに、若い頃の自分を思い出していた。 私には剥離骨折の経験があるわけでは無い。 ただこの息子さんと同じ痛み…

還暦夫婦

天気の良い休みの朝 私にはきまって行きたい所が有る。 本当ならば、まずは平日にできない家事を片付けなくてはいけないのだが、その後ろめたさを消すように布団から跳ね起…

肩にふれた手のひら

肩にふれた手のひら

その朝はいつもより10分くらい早めに家を出て駅に向かった。
毎日が仕事に追われる日々。
頭の中で今日やるべき事を考えながら電車に乗り、座ると同時に軽く目を閉じた。
慌ただしく、とても欲張りな毎朝の時間。
朝食にお弁当、洗い物、犬の散歩、化粧、長い髪を念入りに整える、そして帰宅時に嫌気がささぬようリビングを整えて出かけるまで、短い時間にあれもこれもと詰め込む。
どれも自分自身が、あきらめたくないのだ

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会うということ

会うということ

親しい友人を病に奪われた。
現実を受け入れようと、綺麗な言葉で納得させようとしても「奪われた」という感情が最も正直なところだ。

葬儀の日お別れに行くと、彼の笑顔は映像となって壁に映し出され、見上げる私と目が合った。
「ねぇなぜそんなところにいるの?ねぇこっちだよ。みんな来るよ。」
次々と喪服を着た仲間が到着しても「自分は誰の葬儀に来てるいるのだ?」と、この思いが付き纏っていた。

「お顔を見てお

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剥離骨折と娘の習い事

剥離骨折と娘の習い事

知り合いの中学生の息子さんが剥離骨折をしたことをきっかけに、若い頃の自分を思い出していた。

私には剥離骨折の経験があるわけでは無い。

ただこの息子さんと同じ痛みを私は遠いあの日、あのお母さんたちに与えてしまっていたのかも知れない、そう思ったのだ。

骨折した息子さんは中学生になってバスケ部に入り
希望に胸を躍らせて毎日真面目に部活に出ていた。

しかしそこで彼は小学生の時からバスケットボールを

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還暦夫婦

還暦夫婦

天気の良い休みの朝
私にはきまって行きたい所が有る。
本当ならば、まずは平日にできない家事を片付けなくてはいけないのだが、その後ろめたさを消すように布団から跳ね起きて支度をする。
そこは沼沿いのカフェ。テラス席は絶好のロケーションで、気持ちが清々するのだ。
夫もこのカフェを気に入っていて、誘うと必ず賛成する。
車で40分程走り、ここでコーヒーを飲む。だが毎回特に話すことは無い。長年連れ添った夫婦は

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