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馬馬馬っーん!ウマ男の日々

アウトドアが流行っている最近、僕もキャンプやスノーボードが好きです。けど、もっと好きなことがあります。乗馬です。

乗馬といえば、金持ちの道楽。
競馬、旧世代の交通手段、騎馬兵、赤兎馬 etc…
乗馬自体を身近に感じる人は少ないはず…

僕も、米国はカリフォニア州に留学行くまではそうでした。
20歳の頃、ひょんなことから大自然の中で乗馬を強いられて、海 山 川 原っぱで乗馬してヒャーハーした実話になります。

強いられた出会い、やらされたはずだったけど…
あの時の経験があったから今の僕がある。


糞命的な始まり

10代も終わりの終わり、僕はカルフォニアの文化と風を感じたくて、なんとなく留学を決意。ホストファミリー選考のアンケートで、一言欄になんとなく「Love animal」と書いたら、クレイジーカントリーファミリーと巡り会いました。

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場所はハンボルト、カルフォニアの北部でレッドウッドという高いでかい木々をはじめとする大自然とヒッピーで有名な地です。簡単に言うと、田舎町です。

ホームステイで約半年間、個性的な家族との生活。彼らが、僕の生活を良くも悪くも色鮮やかにしてくれました。

ホストファーザーのリチャード(常識人)
ホストマザー 通称オババ様(狂野人、しかし何故か憎めない)

あとは、仲良し小太り兄弟犬2匹
綺麗なハチドリから触るな危険のコウモリを献上してくる、猫2匹。
鶏が10羽(途中、スカンクに食われて半分に。南無)
馬4頭、うち1頭は僕の相方となるアンター。
と暮らしていました。

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そんな彼らの第一印象は、臭い。う○この匂いでした。空港でリチャードとオババ様に迎えられて、車で三十分。海沿いのハイウェイから見る小々波、窓から入る潮風にカリフォニアの風を感じた。グネグネの山道を超えると、牧場が広がっていた。大きな牛たちを眺めていると、すぐに停車。

「ようこそ!ここが私たちの家よ!!」
オババ様は満面の笑み、僕は困惑顔混じりの作り笑顔をしていた。

だって臭いだもん。玄関の横に積もられた馬糞の山が原因。カリフォニアの風は糞まみれの生活となった。

初日からすぐ、乗馬した。いや、させられた。
強制乗馬の発端は、こうだ。
家の案内→家のルール→馬について、じゃあ乗ってみなさい。

僕は笑いながら、ノーセンキューと言ったよ。長時間の飛行機、時差で疲労困憊だったからね。けど、秒で断られたよ。こうして、ほぼ毎日僕は乗馬した。

馬に乗るということ

簡単に乗馬について説明すると、

まず、馬に鞍と手綱を付けます。
鞍にはシート、付属しているアブミは足を掛けて、安定して乗れる運転席。
手綱は、馬とのコミニュケーションとるハンドル。

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緩いと外れて命の危険が、キツめだと馬の身体に危険が。繊細な作業だと言われて、おばば様に着けてもらっていました。

他にも、蹄のうんこ取り除いたり、ブラッシングをしたりと信頼を深めます。乗馬において、一番の魅力は馬という生き物に乗ること。

彼らは、綺麗好きで知能が高くて、個々に性格もあり気分屋。汗もダラダラとかきます。川が軽く濁るくらいの大量の糞と小便もします。匂いに敏感な僕は、匂いと川に溶け流れる光景にやられて、一口ゲロをしたことがあるのは内緒ですよ。

いざ、馬に乗ると世界が変わります。高い、目線にあったものを見下ろせる。感じる、馬の鼓動息遣い全てが、僕の股と足から伝わります。

はじめは、馬が怖かった、
しかし「あなたが怯えていると、馬も恐れて心を開かないわよ」とオババ様に言われ、懸命にコミュニケーションを取りました。

徐々に、こいつ草食いたがっているな、小便タイムか、高まっているな荒ぶっているな。と気持ちがわかるように。

まさに一心同体、この感覚が乗馬の醍醐味です。

さて乗馬には、通常3段階あります。
常歩 ゆったりと歩く。トコトコ。ポニー乗馬レベル

速足 早歩き。タッタッ。体が揺れます。腰を使って馬のリズムに合わせて上下する必要があり、未熟者はキン○マが潰れます。マジで痛いです。時代劇とかで良く見るレベル。

駈歩 走り。パカラパカラ。上下前後にめちゃ揺れます。腰を上げて、立っている状態です。競馬選手状態。

普通の乗馬ならば、これで済みます。僕の冗談みたいな乗馬は、さらにハードでした。

ハンボルトで馬に乗るということ

通常なら、これらを踏まえて牧場などで楽しみます。
僕は道なき大自然で、
山では「あれはクマの糞よ、まだ新しいから近くにいるわ、最高に興奮するわっ!」と笑顔のオババ様に、マジでドン引き。
海では、砂浜を疾走。気分は砂漠越え。トップレスの女性がいたり、海は最高だったなぁ。
林では、人を殺せる虫がいるから気をつけてと言われて泣きそうになったり、倒れている大木をジャンプ。
雨上がりの森で、馬が滑り2m共に落下。

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ちなみに森や林と言っても、ハンボルトの木々はレッドウッドツリー。かの名高いセコイアの木のことである。
太いし高い、あなたが想像している10倍くらい高い。平均80mくらいある。そんな巨木に囲まれているところに、陽はあまり差し込まない。まるで腐海の森、風の谷のナウシカ。ひたすら色とりどりな緑のみ。不思議なことで、太陽の日差しがない緑は怖いんですよ。

僕はデアデビル

サクッと書きましたが、一つ一つで小説を書けるくらい乗馬エピソードがあります。泳ぎ、山登り、崖下り、飛び越し。これも滅茶苦茶怖い。
それこそ毎日命がけで乗馬しました。そんな大げさな!と思うかもしれませんが、落馬事故は珍しくなく下半身マヒ、打ち所悪く死亡事故も起こります。

僕自身もマジで死んだと走馬灯を見た乗馬事故経験が二度あります。

一度目が、ナポレオン事件
速足で森林を駆けている時です。愛馬のアンターの様子がおかしい。いつもより、ブルンブルンと鼻息が荒いなぁ。少し興奮しているなと思っていると。
突然足を止め、その場で上下左右に動き始める。西部劇で暴れる荒馬状態。ラウンドワンのスポッチャにある、闘牛マシーンを想像していただきたい。

僕は必死に、手綱とタテガミを掴む。速度が速くなる。必死に止めようとするが、言うことを聞かない。そして、前足を上げて立ち上がる。ナポレオンの有名な絵の状態。落ちる。落ちたら死ぬ。僕は両足で鞍をホールド。たぶん、わずか数秒の出来事だったが僕には永遠に感じた。
そして、無事生還。前足を下げて、いつもの4足歩行に戻る。全身から冷汗が流れる、僕の息が荒いことに気付く。僕はまだ生きていると実感した。

「まるでカウボーイね、さすがだわ! あなたは最高のデアデビルよ!」
心配とは程遠い、興奮状態のオババ様。

※daredevil デアデビルとは、無鉄砲 がむしゃら 命知らずな人という意味です。

生還にホッとして、神に感謝していた僕には、この人狂っている。シンプルにそう思いました。

二度目が、オババ様許すまじ事件
道なき道を駈歩で全速力で走っている時だった。
パカラッパカラッ、オババ様の後を追いながら僕と愛馬アンターはリズム良く空気を切って、森を駆けていた。はじめの頃の恐怖は消えていて、乗馬にも慣れていた。
パカラッパカっパカラ。ん?何かリズムがずれてきたな。と思った時には、遅かった。右から、地面が迫ってきている。僕は落馬した、正確には足がアブミに引っかかり20メートルくらい引きずられた。西部劇の罰で良く見るあの状態に。必死に腕で頭を守ったのは覚えている。
落馬の原因は、鞍だった。いつもセットしていたオババ様が、ゆるく着けていたのだ。そのため、鞍が振動で右に回転、落馬。

奇跡的に、軽い打撲のみ。何が起きたか分からず、放心状態の僕に

「怪我がないなんて、なんてスゴイ運動神経だわ!さっすがデアデビル!乗馬の神様に好かれているのよ!!」

僕はニコッと笑い。ただただ、横たわっている真上に見える木々を眺めて、殺意に近い憤りを落ち着かせた。
そして、鞍を自分で着けるようになった。


この気持ちって…

そんな狂野人のオババ様、
最初に、「うちの馬たちはお利口だから蹴らないのよ。」と言ったオババ様は、3ヶ月後に見事フラグ回収。愛馬に蹴られて鎖骨を骨折しています。

ここで、初めて乗馬がない生活が舞い降りる。あぁ恐れがない生活は最高。久々のアニメ映画漬けの生活を満喫。のハズだったのに、数日で乗馬をしたくなった。

死にかけた経験や恐れはいつの間にか、興奮に。怖いほどの緑は、最高のシチュエーションに。ゾクゾクするスリルは、最高の体験に。認めたくなかったけど、乗馬が大自然が最高なんだって気がついた。

その日、リチャードと海岸沿いをゆっくりと乗馬散歩する。
馬の上に乗り、その高さと浴びる潮風に心地よさを実感する。僕のカリフォニアの風は馬の上にある。

当たり前だけど、
好きって、気づいたら好きになっている。

その日から、帰国までの2ヶ月ほどはあっという間だった、本当に一瞬。
不思議なことに、好きなことをしている時って、時の流れが狂うんですよね。

帰国から7年。僕は未だに大自然で乗馬している夢をみます。身体の全細胞が、あのスリルを忘れられないのでしょう。

好きに真っ直ぐに

この記事を書きながら、分かったことがある。

お金について。


僕のホストファミリーの家は裕福ではなかった。
車はバックが出来ず、パーキングの時は僕が押して後退させていた。ハイウェイで車の前から煙が出て止まったこともあった。
廃棄の野菜をもらって食べていたし。テレビはブラウン管の骨董品。ご飯も質素なものが多かった。そこら辺に生えている花も食わされたこともあった。

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当時の僕は、あぁお金に困っているからホストファミリーしているのか。馬飼うの辞めればいいのにとか思っていた。学生の僕には、お金と豪華に生きる生活が全てだと思っていたのだろう。

社会に出た頃から、
好きなことを見つけて、それを中心に生きる。
それが、どんなにむずかしいことかと考えるようになった。興味を持てない人、言い訳まみれの人(これは僕だな)、老後趣味も生きがいもない人…

オババ様は、乗馬と自然を愛して、それを軸に生きている。
少し豪快だけど真っ直ぐに。
その喜びや楽しさを僕に教えてくれたのだ。

今僕が考えるお金より大切なこと、
好きをたくさん見つけて、バババッーンと真っ直ぐに好きに生きる。
そして、その好きを誰かに教えて共感してもらう。

まさにオババ様の生き方じゃん、馬馬馬っーん!


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