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小説

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#骨肉腫

アミタの観た夢 (x-9)

アミタの観た夢 (x-9)

 高野山の宿坊で一泊二日の日程で行われた、そのマッサージのワークショップは、テクニックをみっちり学ぶというようなものではなかった。

 相手の身体を触りながら、自分の手の赴くところ、止まるところ、相手の深い息や、こわばりの弛緩、そのようなエネルギーを読み取りながら、直感的に進めていくマッサージの入門コースとでもいったものだった。

 「帰ったらすぐに自分のパートナーや友人と学んだことを交換しましょ

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アミタの観た夢 (Xー7)末尾推敲版

アミタの観た夢 (Xー7)末尾推敲版

 無骨で不気味な、脚の長さほどもある金属棒を見せられ、「君の脚の骨は残念ながら病気なので取り除くけれど、これからは君の脚の骨の代わりになってくれる」という説明を受けたとき、奈津子は息を呑みこむばかりで、その金属棒に手を触れることはできなかった。
 ただ、目に映ったその質感から、得体のしれない恐怖を覚えた。奈津子がその時、最初に心配になったのは、そんな大手術を受けて、自分は将来、赤ちゃんを産むことは

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アミタの観た夢 (Xー7)

アミタの観た夢 (Xー7)

 無骨で不気味な、脚の長さほどもある金属棒を見せられ、「君の脚の骨は残念ながら病気なので取り除くけれど、これからは君の脚の骨の代わりになってくれる」という説明を受けたとき、奈津子は息を呑みこむばかりで、その金属棒に手を触れることはできなかった。
 ただ、目に映ったその質感から、得体のしれない恐怖を覚えた。奈津子がその時、最初に心配になったのは、そんな大手術を受けて、自分は将来、赤ちゃんを産むことは

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アミタの観た夢 (Xー6)

アミタの観た夢 (Xー6)

 奈津子の高校時代、癌は今以上に不治の病として畏れをもって取り扱われていた。本人に「告知する」べきかどうか。そのことがしばしば議論の的となり、人々は自分なら告知してほしい、自分なら知りたくないとその意見が割れているような有様であった。
 まだ若い担当医は奈津子にではなく、その母に「骨肉腫」という足の骨の癌の名前を告げ、治療としては左足の切断が最も相応しいと意見した。切断の決断は早ければ早いほど、転

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アミタの観た夢 (Xー5)

アミタの観た夢 (Xー5)

 木立の中の急峻な坂道を抜けると武奈ヶ岳山頂近くのなだらかな丘陵が開けた。青々と茂る草地の中を縫う道が山頂に続いている。速足になってあと一息を駆ける。
武奈ヶ岳山頂、標高一二一四.四〇Mの碑。その隣にはここに到った人々の積んだ石の小さな塔があった。青空に向かって開けた遮るもののない吹きさらしの中、奈津子の髪が風になびいた。
 山々は大阪、京都、滋賀の三府県をまたいで三六〇度に広がっている

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アミタの観た夢 (Xー4)

アミタの観た夢 (Xー4)

 その年のワンゲル部の夏休みの遠征は、京都府と滋賀県にまたぐ比良山の武奈ヶ岳アタックに決まった。標高一二一四メートルの武奈ヶ岳の登頂は、近畿では中学校のワンゲル部にもよく選ばれるコースであり、けっして困難なものではなかった。
 ただ中学校のワンゲル部では滋賀県側から途中までロープウエイ、リフトを使って中腹に到り、そこから歩き始める方法を選ぶ場合があった。曲りなりにも高校のワンゲル部ではそんな軟なル

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アミタの観た夢 (Xー3)

アミタの観た夢 (Xー3)

 心の中の陰鬱な雲間に陽が射した。
 第一志望の進学校の合格発表のために張り出された模造紙の列の中に、大勢の人たちの頭越しに自分の番号が見えたのだ。念のために手元の受験番号と発表された合格者番号を見比べて何度か首を上下した。間違いない。
 同じ中学から受験した友達が走ってきた。彼女も合格したらしく、手と手を取り合って、無邪気に飛び跳ねた。後で思えば、そのとき、左足の太ももに鈍痛が走った気がした。だ

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アミタの観た夢(X-1)

アミタの観た夢(X-1)

(「アミタの観た夢」は、脳性麻痺の沙織が「健常者」と恋愛するのを夢見て生きる物語ですが、途中でふたりの他の人との出会いを経て、考えに波が生まれます。
その他のふたりの部分はいわば挿入的な小説のような形になります。
その部分をモデルの取材を経たばかりの今、先に形にしようとするのが、Xシリーズ、Yシリーズです。
最後には全部ひとつの小説に紡ぎます。)

 奈津子が五歳のとき、両親が離婚した。まだ二六歳

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