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food skole 第二回目のメモ

この春休みにふと思い立ち、オンラインで学んでおります。
前回の記事はこちら

**ここからは参加中に自分でメモしたことや検索した内容の記録です**

第2回目の講師は、株式会社ファーメンステーションの酒井里奈先生。
テーマは「発酵でつなぐ都市と地域」

発酵と腐敗

まずは用語の確認。どちらも自然界の微生物が、そこにある物質を変化させちゃう活動。でもそこに「人間の視点」が加わることで分類される(かなり恣意的)。

発酵:人類に有益なもの
腐敗:人類に有害なもの

微生物自体は、ただそこで生きているだけで、そんな区別はどうでもいいのではあるが、人間からしたら「使えるもの」になるのか「ゴミ」になるのか、かなり影響が大きい。

そしてこれは、文化によってもかなり恣意的になる。例えば、世界でも有名な「くさい食べ物」は、おそらく、それが発酵でできているのだと感じる人たちにとっては「珍味」であり、そうは感じられない人たちによっては「もはや食べ物ではない」になってしまう。

発酵は善玉菌、腐敗は腐敗菌、とも言われるが、たぶんこの「善玉」「腐敗」という区分も人によるもの。つまり、本人が有益だと思えばそれは「発酵」だし、有害だと思えばそれは「腐敗」という、人による自分のための分類。

発酵の駅:ファーメンステーション

ファーメンステーションは、発酵:fermentation(ファーメンテーション)と駅:station(ステーション)をかけ合わせた造語。

使用されない資源が「駅」を通過すると別なものに生まれ変わって出発していく、というイメージ。「発酵」という技術、「発酵」という考え、微生物が活躍する「ファーメンステイション(駅)」を通過したら必ず良くなる。

独自の発酵技術で『循環型社会』を構築する研究開発型企業。
未利用資源を発酵・蒸留してエタノールを製造している。

サステナブルなエタノール

エタノールはアルコールの一種で、消毒、添加物、消臭剤、化粧品などに幅広く使われている。今、使われてるものは「発酵由来」と「石油由来」がある...これ、この間のナチュラルワインでも同じようなことがあった!

ファーメンステーションでは、有効活用されていない資源を発酵して、蒸留して、アルコールエタノールを作る。具体的には、休耕田を再利用し、お米からエタノールを作っている。農家さんの声と発案で始まった。

お米から作る過程において、途中までは日本酒と一緒、蒸留の途中までは焼酎と一緒、そこから濃度を上げてエタノールに。お米から作られるエタノールはとてもいい香り。

ごみゼロと地域循環

そして、ごみゼロ。発酵後の米カスは鶏の良い餌になる。その餌を食べた鶏はいい卵を産み、そしていいウンチをする。そのウンチが肥料になり、ひまわりが育つ。そのひまわりから油を搾る。

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画像引用:ファーメンステーションwebサイト

地域でぐるぐると、一つの良い資源をどんどん回す。
そして回るのは資源だけではない。人も回る。ファーメンステーションと地域の取り組みの視察が増えて、地域に人が国内外からやってくる。そこにイベントが起こる。地域の物産や、南部鉄器の販促にもつながる。

ごみゼロ循環が広まった理由は、関わる農家さんや関係者が自発的に始めたからだった。農家さんが自分なりにやってみたら、なかなか良かった=口コミで輪が広がる。

酒井さん自身は「与えられた宿題をやろう」という気持ち。技術的に難しい点は、色々な人に聞きながら技術力を上げてきた。「作っている人を応援したくなる、社会参加とアクション」というスタンス。

理念:「価値がない」「無駄」って思われているものを、むちゃくちゃ価値があるものに変身させる

ファーメンステーションには、技術がある。そして目の前には資源がある。

米だけではなくて、製品を作った際に出る果物の搾りかすや皮、廃棄される部分を高品質なエタノールに変えていく。
発酵で出たカスをさらに再利用する。良い原料しか使っていないので、カスだって高品質。石鹸やスプレーなど、エタノールの良さを伝えるための製品作りも行う。

いい製品なのに売れない、なぜ?

エタノールの良さを伝えるためにファーメンステーションが行っている事業
1:製品を作って売る
2:原料を売る
3:OEM/ODMコラボ
4:企業コラボ:フードウェイスト・未利用資源の幅を米以外に広げる

サステナブルエタノールは、価格が高い。製造するすべての工程でコストがかかる。ロット数も小さいのでコストを下げることがなかなか難しい。

2~4の活動では、最近になって企業が「サステナブルだから」、「SDGsの取り組みが必要だから」、「世の中に求められているから」という理由で注目を始めている。ただ、物が悪かったらビジネスには絶対に繋がらないので、質がいい物があることが前提。

雑誌やメディアではサステナブルと言いつつも、足元はまだまだな感じ。ファーメンステーションの取り組みに対してのファンは多いが、それが製品の購買にはつながらない現実。

今までは、いい物だから買ってもらえればいい。これって、こんないい物だったんだ、と気がついてもらえればいい。酒井さんはそう思っていた。

でもふと。
同じくらい「サステナブルな物だから選ばれる」という現象が、消費者にも起きればいいのでは、と思った。

きっかけは、ウェットティッシュ。
1個170円。普通のものよりも値段が高い。普通だったら廃棄されるごみから作られたエタノールも自社生産だから品質の保証はバッチリ。でも、香りや使い心地に特徴がない。「こんなにいい香りです」「使い心地が抜群に違います」ということが言えない。

「他で売られているウェットティッシュより、ちょっと高いです。見た目も使いごこちもあまり変わりません。でも原材料や取り組み全てがサステナブルなんです」

これをどう売るか。

価格を安くするのは企業努力。一方で、これがゴミからできていることに「いいな」と思う人が増えたらいいな。対事業者では、サステナブルは購買活動のフックになる。では消費者は?

原材料が何でできているか、食品に対しては敏感になる人たちが増えたと思う。でもこれって、食べ物だけではなくて何に対しても大事なことなのではないか。では普段使っている消毒用エタノール、原料を意識しているだろうか。

エタノールは何からできているか、意識している人はいないし、答えにも辿り着きにくい。「石油由来」のエタノールが使用されていたり、「発酵由来」のエタノールであったとしても、そのほとんどが工業的な大量生産で作られた原材料を使って大量醸造した安価なエタノール。そういうこともあまり知らない。

体験、経験値の違い?

グループディスカッションの時、参加者の発言にハッとする。

「発酵」って目に見えない、本当に微生物レベルの世界
「モノの循環」は、また別の意味で大きすぎて目に見えない
それをどちらも可視化するのは、人としてのアクションしかない

もので見える、行動で見えるの「見える化」
見えていない人にどう見せるか

微生物のミクロの世界、資源循環のマクロの世界。どちらもサイズが小さすぎたり大きすぎたりで、正直よくわからない。

そのどちらも体感している酒井さんは、ミクロもマクロも両方がわかっている。これって実はすごい。

関わって、体感して、知っている人はわかる。
だから価値がわかる。
だから買う。

でも大半の人はそれがわからない。
そこをどう仕掛けていくのかが、ビジネスにおいて重要な視点なのかもしれない。

素性はどうであれ、「自分にいかに合うかどうか」が消費者は大事。
消費者がサステナブルを意識するのは、実は難しいのかも。
精神性を商品化していかないと、なかなか伝わらないのでは。

「サステナブル」という言葉が西洋チックで自分には馴染まない、「もったいない」は「節約」「我慢」になってしまって、なんだか楽しくない。

消費者の声:買い物は応援だ!

これは別の参加者の方々のコメント。確かに。

今回酒井さんの話を聞いて、こうして実際に体験している人から直接聞く話、これがとても効果があるのだと思った。酒井さんが楽しそうに話す「実際の体験」を「直接聞けた」ことが、「わかる」につながる。だとすると、酒井さんがあちこちで喋りまくるしかない。

自分なりな判断を持てることが大事

消費者がどこに価値を見出すか、それが判断基準。
その判断基準を決めるのは、今まで生きてきた中で得た知識や情報を基にしているのだけれども、結局その人の体験であったり、経験に勝るものはない。

子どもを教えていて思うこと。
体験も経験もしたことがないことに対しては、なかなか興味を持たないし、自主的な学習には結び付かないし、その先の行動にもつながらない。

今は情報にあふれていて、どんなことも調べればわかる。
情報は知っているけれど、体験したことがなければ、「自分ごと」には決してならない。

同じことが消費する私たちにも言えるのではないだろうか。
循環を体験する方法。これをどうしたらいいのだろう。
地球規模の活動は、そのスケールが大きすぎてよく見えない。

「必要なものを必要な時に」「他の人への思いやり」→その気持ちをみんなが持ったら環境は必ず変わるはず!
そしてこれは、学校現場でも実体験できるような気がする。

食品ロスの最新データ

今日の講義の冒頭で校長の平井先生から示された、2021年4月27日発表の食品ロス最新データ。

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画像引用:農林水産省 食品ロス量の推移(平成24~30年度)

2017年:612万トン → 2018年:600万トン
3年前の状況が、今ようやくわかる。この集計作業、小泉大臣の発言では「日本は、ごみの集計をかなりまじめにやっている」。

2020年からはコロナ禍で飲食店からのごみが減ったことは予想されるけど、家庭からのごみが増えた報告もある。そして、賞味・消費期限切れで廃棄される食品も相当数あったのではないかと予想する。

一方で「食品ロスを救え」という活動が活発になっていて、ネットで積極的に売買されているし、私もかなり利用している。

食品が廃棄されるスピードと、それを救おうと購買する消費活動。どちらが勝っているのだろうか。この数字がどのように変化したか、非常に気になる。

腐敗ビジネスはないのか?

今日の講師の酒井先生の取り組みのように、もしこの食品ロスが全て次の資源に代わるのだとしたら、それはものすごいエネルギーだ。
一方で、微生物自身が発酵と腐敗を区別していないのであれば、腐敗だって相当なエネルギーを生み出す、はず?

気になって「腐敗ビジネス」を調べてみたら、「耐腐敗」「腐敗防止」と、腐敗を防ぐための情報はたくさんあるけれど、腐敗が直接エネルギーにつながる情報は得られなかった(生ごみがメタンガスになるのは腐敗かと思ったけど、メタン発酵菌群で発酵だったことを知ってびっくり)。

あ、そうか。「人にとって有益」なものはすべて「発酵」になるから、「腐敗」で「有益」がそもそも成り立たないのだ、と。なんだか、言葉のアヤのような気がして、モヤモヤする。

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