全社QAで改善する、人事制度というプロダクトづくりの話
こんにちは。Web3領域のファンコミュニティサービスを提供するスタートアップ、GaudiyでHRを担当している安部(@abe_motivator)と言います。
僕は今、コーポレートサクセス(以下、CRS)という、HR/PRの役割を担うロールを務めているのですが、その中でも特に「組織を良い感じに整える」というミッションを担っています。具体的には、エンプロイーエクスペリエンスの向上やオンボーディングプログラムの設計~運用、働き方の制度設計、カルチャー・コミュニケーションデザイン、評価・報酬制度等です。
同じような業務を担っている方であれば、共感いただけるかもしれないのですが、HRの制度やカルチャー作りはプロダクト作りと一緒です。完成という概念は無く、ユーザーに使ってもらいフィードバックを元に、その瞬間に組織に適した形に改善することが求められます。このHRにとってはユーザー=従業員というイメージです。
今回は、実際にGaudiyのCRSが、プロダクト作りで良く用いられているQA(Quality Assurance)を用いて、全社を巻き込んだ制度作り事例を述べていければと思います。僕自身、過去数社でHRを務めてきましたが、これはGaudiyだからできるというわけではなく、汎用性のある手法だと思うので、良いなと思った方はぜひ使ってほしいです。
人事主導で制度設計をする際のジレンマ
HR主導で制度設計をする際、よく起こりがちなのが、全体を巻き込むことによってスピード感が非常に落ちてしまうということ。
というのも、冒頭で述べた働き方の見直しや評価制度に関しては全社が影響を受けるので、当然ながら多くの人を巻き込む必要があります。ですが、社内政治のように確認の連続という状態になると、スピーディーに進めることができません。
結局、でき上がった時には事業と組織のフェーズが変わっていて、一部のメンバーが使いづらかったり、会社が抱えているissueが変わっていたりして「あれ、この制度はなんのためにつくっていたんだっけ?」という本末転倒な事態に陥りがちですよね。
一方、HRがスピード感を求めすぎて先走りし、現場メンバーの納得感がない制度になってしまうという事態もよくあることだと思います。いわゆる推奨されない、応援されない制度ですね。
制度設計をする際のゴールは、従業員体験をよくすることなので、きちんと従業員のメリットを最大限に引き出すような設計が不可欠です。また、従業員に寄り添いすぎて、事業がまったく伸びない設計になるのも要注意。事業が伸びなければ、結果的に従業員の悪い体験に繋がるわけですからね。
プロダクトと同じように人事制度をつくる
では、どうすればそういった課題を解決することができるのか。ここで大事なのは、「人事制度には完成という概念はない」という思想を、全社の共通認識として持っておくことです。
一度作って終わりではなく、その時々の事業課題や組織課題を改善するためのアップデートが大事。中途半端なアウトプットでOKというわけではありませんが、完成系でなければいけないという考えは捨てていいと思っています。
ここからは、実際にGaudiyで今取り組んでいる事例をご紹介します。
Gaudiyでは、人事制度をつくる際に、提案→全社で仮運用期間→正式採用という流れで運用しています。
その仮運用期間に、全メンバーを対象にしたQAを行っています。実際に使って感じたissueやモヤモヤを、Notionのデータベース機能を使って集約しています。
イメージとしては、プロダクト開発と同じようにMVP(Minimum Viable Product)をHR主導で作り、それを全社に使ってもらいながらブラッシュアップを重ね、最適なものにアップデートをしていく形になります。
集約されたissueを確認する際には、意見を出したメンバーのロールが偏っていないかを気をつけて見ています。理由は「とあるロールのメンバーは自分事化しにくく意見が出せない」可能性があるからです。
例えば新しい働き方(近日公開します)の提案を挙げた際には、上記の方法で11個のissueが集まり、3週間で正式採用に至りました。issueをあげてくれたメンバーを見ると、開発・Bizdev・CS・CRSなど満遍なく意見が出ており、一部のメンバーが犠牲者になるというリスクは避けられたと感じています。
実際に上記に関して、MVPの時点では表現の仕方や内容が最小限だったものが、全社QAを通じて
これらをアップデートすることが出来ました。制度の是非ではなく「どうやったらこの制度を上手く運用できるのか」を全員で考えることができたと思います。
QAをすることの一番のメリットは、メンバー自身が自分事化できるということです。もちろんプロダクトオーナーとしてHRが先導することは必要ですが、メンバー自身が自分たちの体験を良くするために自律的に意見を出し、反映することが出来るような状態が理想です。
※Gaudiyは元々全員QAの文化があり、スムーズに導入できたのも大きかったです
全社提案ではWhyを明確にし、”守”を徹底する
CRSから全社に対して提案をする際、特に意識したのは大きく2つです。
1つ目はプロダクトの目的=Whyを明確にすること。
Gaudiyでは、提案のガイドラインとして「誰に(対象)、何するため/何を解決するため(価値)、どうするか(手段)」というのを最初に記載します。基本的なことかもしれませんが、これが抜け落ちていると、何のためにやっているのかを見失い、途中で努力の方向性がブレてしまうリスクがあります。
社内で今、誰がどんな課題を抱えているのかを明確にし、その課題をどのように、何をすることで解決するのかを言語化することで、社内に伝わりやすいです。
また、個人的に最も重要だと思うのは「すぐに実践可能な提案内容」までしっかり考え抜かれているということ。最近、YOUTRUST社の岩崎さんが出した下記noteのタイトル「考えるだけでは、価値がない」という言葉は本当にその通りだと思っていて、非常に共感しました。
HRは特に、思想や価値観をアウトプットすることが多くなってきている気がしますが、自分自身を含め、どれだけメンバーが行動に移せるレベルのアウトプットを出せているかに尽きると思います。
なので、課題→どのように解決するのか→提案(すぐに実践できるプロトコル)をちゃんとセットで考えることが、大切だと考えています。
そして2つ目は”守”を徹底するということ。上記で挙げた課題や解決策に対してどんなリサーチをしたのか。リサーチしたものの中で、どんなデータや事実を参考に、今回の施策を提案したのか。
Gaudiyのバリューの一つに「NEW STANDARD」というものがあるのですが、読んで字のごとく自社起点で世の中の新しい常識を創ろうという意味です。しかし、ただ新しいことをやったらいいという意味ではなく「先人の成功事例を徹底的に分析したうえで、次の時代を見すえたチャレンジをしよう」という意味なので、「なんとなく良いと思ったから」「とりあえずやってみよう」という感覚ベースのものは、社内の納得感を醸成させるのは難しいはずです。
そうなるとメンバーの中でも納得感のある人とそうじゃない人が混在してしまい、社内浸透しない結末になってしまう可能性が高くなりますよね。
まとめ
今回は、実際に弊社で行ったQAを用いたHR主導施策の進行方法をご紹介しました。
会社にとって新しいチャレンジということは、実際やってみないと価値がわからない状態だと言えます。そうなるとプロダクトと同じように、実際にメンバーに使ってもらってフィードバックを元に改善をすることが何より一番大事ですし、一度やって終わりではなく、改善し”続ける”ことが求められます。いわばUXデザインと一緒かもしれません。
実際今我々は、このQAを用いた制度作りにおいて、とあるNew Standardにチャレンジしています。どのような制度なのかは、実際に運用が始まり、少し経った頃に公開出来ればと思いますのでお待ちいただけると嬉しいです。
また、Gaudiyでは絶賛採用を強化中です。少しでも興味を持ってくださった方はいつでもTwitter DMやMeetyでご連絡お待ちしております。転職する気は無いけど会社には興味があるという方ももちろんOKです!