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「正しいKPI」再定義を避けては通れない

本日はこちら。ジョブ型雇用で変わることは何か?

営業と職務規定書

僕は前職では営業をしていました。担当営業の職務はわりとわかりやすく、その年度の売上金額と営業としての損益を書いてました。「自分が扱っている製品の市場や担当客先の需要量を予測し、そこから何%のシェアを取るとすると、これくらいの金額になる。」「工場から出てきた製品の原価に、営業の取り分としてこれだけマージン率として取るから、売り上げ金額にマージン率を掛け合わせると、来年度は手元にこれだけの金額が残る、そこから人件費や出張費を引くと、会社に残せる税引前利益はこれくらい。」と言った具合です。

職務規定書も書いていました。何が普通かはわかりませんが、担当者自身(つまり僕)が書いていました。もちろん上司と相談し何回か精査の上で最終形にし、僕と上司のハンコを付いて共有フォルダに保管しておりました。9月と3月になれば達成具合や改善策を上司と相談する機会もありました。

もちろん上司からは「この金額までやるように!ここまではできるはずだ!」という圧力はあり、「そんなにできるわけないでしょ!」という担当者の声とのせめぎ合いの中で、目標金額は設定されていくわけです。

一番雑な理屈で言えば、会社が年率10%の成長を求めていれば、部課長職はスルーパスで担当営業に10%の成長を求めます。担当営業からすれば、錦の御旗なので反発しづらいですが、そこは徹底的な市場調査により反論材料を集めていき、「10%はむりでも8%だったらできそう」みたいに主張します。或いは「2%の不足を新規で攻めるが、これだけの下振れリスクも抱えながらやることになる」というエクスキューズをつけるなど、相当な頭脳戦を行ってきました。

もちろん成果主義ではありませんので、担当営業レベルでは(達成しないと上司から詰められることはあっても)、達成具合では給料に大きな差は出ませんでした。もちろん、大きく結果を出し続ければ、課長や部長への昇格という形での給料アップや権限の拡大はあります。しかし30歳前後では、致命的な差はなかったと思っています。

まとめると、僕が考える日本の営業は以下の通りです。

・職務規定書の制度設計はシンプルで難しくない
・数字は経営側と担当側の入念な協議事項で決めれる
・成果は良くも悪くも給料に反映されない(昇格には影響)

セールスエンジニアの正しいKPIとは何か?

現在は転職して僕はセールスエンジニア(以下SE)となりました。エンジニアというほどテクニカルではなく、営業支援といったほうが近いかもしれません。限りなく営業さんと向いている方向は近く、最終ゴールは物件の獲得数=売上金額と言えるかもしれません。

しかし、ここを職務規定書で線引きするとなれば、我々SEのKPIは売上金額で規定することは難しいように思います。当然ながらそれは営業が設定する数値だからです。或いはその営業の売上金額のうちどれだけの金額分を貢献したか、という指標もあり得ますが、これも区分けは容易ではありません。加えて、営業からすれば、自分の成果を横取りされるに等しいですから、「あのSEには●●万円分だけお世話になった」なんて口が裂けても言わないでしょう。営業も売上金額の達成に必死です。

それでは物件数でしょうか?しかしこうなると100万円の商談と1億円の商談、どちらも一件でカウントされるため正しく測定できません。

直接キャリアとして経験したことはありませんが、間接部門の方もなかなかKPI の設定自体に苦慮をされておられるのでないでしょうか?もちろんとりあえずのKPI設定は可能だと思います。

採用なら雇用した人間の数、知財なら出願した特許件数、といった具合です。しかし、その数字が誰のためにどのくらい役立ったのか?・・・というか誰のためにどのように自分たちは役立つべきなのか?という本質的な自分たちの存在意義を考え始めると、その役立つべき相手にどれだけ貢献できたかを直接図る指標=KPI設定の難しさにぶつかります。

まとめると営業以外の日本の仕事は以下の通りです。

・職務規定書の制度設計はなす術がなく本質に至らない
・数字は経営側も担当側も正しい設定値を知らない
・成果は良くも悪くも給料に反映されない(ここは営業と一緒)

何が変わるか?それは相関データへの関心度

以上を見てみると、営業はジョブ型を取り入れやすいので、うまくすれば適応していけるかなと思います。大きな抵抗感なく受け入れられる担当営業も多いのではないでしょうか?(もちろん給与との連動をどこまでにするか、という大きな論点は残ります。が、多くの人は現在の給与体系について大きく変化して欲しいとは思っていないのではないでしょうか?むしろ安定していて欲しいと思ってると考えます。そうなれば、営業数値達成への報いは当面の間、給与体系の変更よりも昇格というやり方がシンプルで良いように思います)

一方、それ以外の部署はKPIの設定に悩まされると思っています。そこで注目なのがデータの分析です。コロナの影響で先行して進んでいるDXの整備が落ち着いてくると、これまで紙を書き起こしたレベルで止まっていて、共有フォルダに眠っているエクセルなどのデータ活用が進んでいくと思います。或いはSFAやCRMといったパイプラインのデータの活用も進むでしょう(というか進んでますね)。

これらのデータをAI やBIの力を使って解析することで、どの数値が何に効いているのか?が少しずつ解明されていくと思います。

例えば、「電池に関する特許を多く保有することは、EV での開発力の強化につながっている」という内容があるとしましょう。これくらい当たり前だとあまり驚きはありませんが、それがデータとして浮かび上がってくれば、説得力が上がります。「電池十件の特許が、他社よりもEV製造原価について10%のコストダウンに貢献している」というデータが出れば、その会社ではもしかすると、知財という部署は、電池関連の特許を集めることをKPIに設定すべきなのかもしれません。

そういった「経営力強化への貢献」と「各部署が保有するデータ」との相関を探すといった、新しいKPI設定が必要となると思っています。これはすなわち、当面の間は「評価される人材」=「正しくKPI設定できる人」となると思います。つまりその部署のツボを分析できる人材です、ここが正しく設定できれば、正しくアクション事項や施策が練れますので、必然的に成果も上がりやすくなると思っています。

経営企画など「非」事業部系部署の発展的解体

現在は経営企画という部署があって、そこには職人的に基幹システムのデータを加工・編集・解析する人材がいます。彼らは今後も機能するでしょうか?彼らにデータと経営方針の両方を持たせおくのは今後はリスキーかもしれません。上述の通り、職人の精度を上回る機能を、各人が手に入れることができる可能性を有しているからです。

或いはデジタルマーケティング推進部、イノベーション推進部、働き方改革推進部・・・といった今をときめく部署があると思います。彼らはDXのスペシャリストの集まりです。

しかし、その●●推進部に集まってしまっていることこそ弊害になる可能性があります。本来、彼らは事業部署そのものに分散し、直接手を下し、責任をもち、事業そのものを深く知り、部署のことも深く知り、開発者、エンジニア、品証、製造、間接などの人と一体となって正しいKPI設定の仕方を共に見つけて行かなくてはならないと思いますが、実際はそうなっていないところがほとんだと思います。データ分析の研究部隊として独立して切り出されいることが多く、残念ながら宝の持ち腐れです。

例えば、最新のDX研究 が●●推進部の部内だけの試験運用にとどまっていたり、色々思いを巡らしても結局大方針しか描けず個別解がなかったり、ということにどうしても陥りがちです。なので、こうした点の改善が今後は進むのではないかなと思っています。

まとめるとジョブ型雇用で起こる変化は以下の通りだと思っています。

・事業部の各部署は自らで「正しいKPI 探し」を行うことになる。

・経営企画がデータと経営方針を独占する時代は終わる。

・データ分析のプロは事業部に相当細かく入り込むようになる。

・「昇格」でKPI達成に報いればそれで皆満足する気がする。

ということで、また。

火曜日ですが、今回は金曜日待たずに発表しちゃいます。

#COMEMO #ジョブ型雇用で変わることは

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