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出向という選択肢

本日は日経COMEMO企画です。「出向」というテーマで私の経験をお伝えしたいと思います。

販社への出向経験者です

呼び方はさておき、販売会社への出向というものを2年間経験しています。結論から言えば、素晴らしい経験でした。今の私の血となり肉となる大事なキャリアの一つです。

当たり前ですが、販社は市場と一番近い接点、ビジネスの最前線です。日々、顧客に出向き、課題を把握し、ソリューションを提案し、そして目標の数値達成に向けて、頑張る。そうした営々とした日々。

いきなり脱線ですが、前職が営業だった自分からすると、赴任初日から、あぁ嗅いだことのある空気〜!という感じでした。電話が鳴り響き、どことなく忙しないオフィス。誰かは必ずいるが、誰かは必ずいない島。一山当てようという熱気。あぁ懐かしい雰囲気、懐かしい人種、お久ぶりですと言いそうになります。

さて、余韻はここまでとして、当時の出向に至った背景を説明したいと思います。理由は2つでした。一つは転職してまだ間もなかった私に現場を経験させ勉強させるため。一つは販社の営業人員の人手不足を補うため、そこそこ若くて動けそうな奴を欲していたため。

そうして、原則2年間という期間を設けて出向したのでした。

出向のメリットとは?


出向して得られたメリットは何個かありました。

一つは販社そのものに関することです。
販社のカルチャーや雰囲気、やりがい、大変さ、経営課題を知れます。さらに販社の人と人脈が構築できます。出向後もお互いに困った時に声を掛け合えます。

もう一つは市場、顧客を知ることです。元々の自分の仕事の立場以外から、その業界のこと、商品やサービスのこと、自分が置かれている職場や役割が外からどう見えるのかを見てみること、新しい発見がいっぱい見つかります。

以上のメリットを聞いてどう感じられたでしょうか?実は今の2つのメリットは表層的メリットでして、私から伝えたい出向の本質的メリットは、実は別にあります。

出向の本質的メリットは、「あくまでも二重籍だ」という点です。

私よりも先に出向して、もう何年も戻らず、事実上販社の人状態の人はおられます。でも、戸籍は本社にあったりして出向状態が続いてたりする。もちろんぶっちゃけ給与形態が違うこともあるかもしれません。しかしそれを差し引いても、二重籍であることは、大きな意味を持ちます。

この「お前はどっちの人間なんだ?本社か?販社か?」と時に波紋を呼びそうな曖昧さ、あやふやな態度、独特のバランス感覚、これぞ出向のメリットです。

あやふやな態度などと言うと、いい加減な感じに聞こえますが、でも曖昧さは重要です。なぜなら、本来は「本社」VS「販社」という構造はおかしな話だからです。本来は、本社と販社は協力関係であることが両社にとっても望ましいはずです。

長々説明しましたが、要は出向者は、橋渡し役、つなぎ役なわけです。全社的に一致団結し、強くなっていくには、部門と部門を接着し、連携し、統合し、統制する人材が必要なのです。そういう意味では、出向は絶妙に良いバランスです。

私の場合、先ほどの先輩たちとは違い2年間で本社に戻りました。それでも曖昧ないいとこどりの態度が重要です。出向が終わった後も、販社に必要な施策を本社で集中して作りたいなと思う原動力が、出向を通じて養われるわけです。あるいは販社の良いカルチャーや強みを本社に持ち込んでかき乱したりしてみる。

こうして垣根を越えた動きが生まれるチャンスを出向は与えてくれます。

出向のデメリット

以上は大変幸運に恵まれた私の話でした。何が幸運かといえば、業界は違えど、私が前職は営業だった点です。ある種、販社出向は、いつか来た道でした。なんとなく、販社の営業スタイルを掴んでいく方法は、分かっていました。

しかし、営業経験が全くない人が、いきなり販社に出向するのは、良し悪し表裏一体です。自分の力をストレッチさせる意味ではとても良い経験になる可能性もある一方で、慣れない業務、営業という独特の人とのコミュニケーションスタイルが辛すぎて、潰れてしまう人も出るかもしれません。

出向は、よくよく本人の適性や出向の狙いを見極めて行う必要があります。悪く言えば、二重籍は、宙ぶらりんで危うい立場です。販社でもダメ、本社でもダメ、なんか中途半端。そういうことになってしまっては、本人もかわいそうですし、会社にとってもいらぬ火種をかえって増長してしまいます。

販社には、営業を極めるんだ系の叩き上げ職人営業さんがいます。本社には大局観に優れた企画マンや、開発一筋の技術者もいます。できたら、彼らにこそ、広い知見を得てもらうため、出向や逆出向があっても良いと思います。

でも、そこにその人たちがずっといる理由を考えるのなら、いきなり出向ではなく、まずは部門異動なり、よりソフトな対応でも良いかもしれません。

あるいは出向に向く人材、出向させるべき人材というプールの中から出向組は選択すべきかと思います。

あ、ちなみに僕は、営業はもういいかな〜と思って転職したら、いきなり転職先で販社出向で営業するよう言われて、正直相当ごねました、ぶっちゃけ。「約束とちゃうやんけ」と。

もちろん、出向すると決まったからには全力で出向先のミッションに取り組みましたし、冒頭書いた通り、結果的にはこのようなキャリアを用意してくれた会社にとてもとても感謝しています。。

出向については、お互いに丁寧なコミュニケーションを。

ということでまた。

#日経COMEMO #出向という選択肢

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