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カラフルな抽象世界の散策 -大城夏紀[project N 94]@東京オペラシティアートギャラリー
東京オペラシティアートギャラリー。
こんなふうに、廊下に広がる「風景」があった。
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風景、その抽象化
風景のように見えるその展示に置かれている作品は……しかしカラフルに抽象化されている。
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見立ての変遷 大城夏紀の視覚的連歌
平面や立体に加えて、壁面自体も作品の一部とする大城夏紀の展示空間に足を踏み入れると、ある風景の中を歩いているかのような感覚を覚える。実際、大城の制作過程には風景、そしてそれを見た特定の人物の心情が密接に結びついている。といっても、自然界にあまり見られないパステルカラーで統一された抽象的な作品群から即座にそれを見て取るのは容易ではないだろう。大城の作品とは、幾重にも重ねられた「見立て」と「展開」の結晶で、その出発点となるのは伝統的な和歌をはじめとする詩歌、すなわち言葉によって紡がれた情景である。大城の仕事は、その情景を視覚化し、それを展開させていく試みであると言う。(続く)
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視覚的連歌の世界を散策
(続き)実際の制作にあたって、大城は詩歌をよみながら、そこに動きや空間を感じとる。言葉の順番、場面の切り替え(和歌の場合上の句と下の句で行われることが多い)、描写された風景や心情など、詩歌から感じ取った動きと空間を抽象化し、まずは想像上の立体図を思い描く。言葉による情景やリズムに加え、詠まれた詩歌の文脈や詠み手の背景も意識しながら、それらすべてを抽象化し、パターン化した模様をつくっていく。またに、詩歌に関連する象徴的なモチーフをドローイングで具象的に描いて反復させ、プリンターやレーザー彫刻によって包装紙のような模様を作る。こういった要素のなかから組み合わせたものが一番目の作品で、抽象的ではあるが詩歌の大城なりの再現であり、見立てである。
難しい……理解は無理なのだろうかと一瞬感じて、いや、そんなふうに下を向くべきではないのだろうと思った。だって、アウトプットされた世界はこんなに楽しいのだから。
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(続き)大城の制作はさらに進み、次はこの作品を展開させていく。一番目の作品の一部分を抽出して色や形を変化させたり、位置を入れ替えたりするが、ここからの制作は視覚面への注目に重きを置き、見立てをずらしていく。時には詩歌に戻って新しい構造を探ることもあり、前の作品に応じて次の作品へと、そして詩歌の世界と往復することによって作品は複雑に展開していく。最終的に5、6点にのぼることもある作品群は、さながら作家一人による視覚的な連歌とも言えるだろう。
カラフルな風景の一部に
カラフルな風景を愉しみながら、ぐるぐると散策する。「詩歌」を意識して、上の句と下の句、詠んだ風景、連歌などをイメージしてみたりする。
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道端の草花に目をとめて、じっと覗き込んでみるように。
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歩いたり、かがんだり。寄ってみたり、引いてみたり。
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ふしぎなことに、まるで自然のなかを散策してきたような清々しさがこみあげてきた。
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