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キミノ瞳に映る夕焼けが揺れている


秋は夕暮れ
夕日のさして山の端いとうつくしうなりたるに烏の寝どころにいくとて三つ四つ二つ三つなど飛びいそぐさへあはれなり
   
昼下り
国語の教師の朗読の声が
教室に響き渡る


少女はの窓の外を見た
秋の空は
あおあおと高く
いわし雲を従えている

校庭の木々は
風になびいて葉を揺らし
気のはやい葉は
わずかに色づき始めている

秋は
心惹かれる装いで
少しすました表情をしていると思う

清少納言は
どうして夕暮れを選んだのだろう
秋の風景は
どこを切り取っても
趣き深さをたたえているように感じる

エモいなぁ〜

少女は呟く

この言葉のおかげで
古文にでてくる

あはれ
いとをかし

などの古人の感覚が
自分のような中学生の世代にも
幾分
身近に感じられるのかもしれない

それでも
昔の自然とともに生きていた時代と
ずいぶん
変わってしまった部分もあるに違いない

ふと
少女は教室を見回してみた

電子黒板に
電子教科書が写っている
タブレットに一人ずつ
自分の感想を書き込むと
個人の意見は
ミラーリングで
すぐに
全体にシェアされる

その横で
うとうと眠りに誘われて
目を閉じている級友もいる

給食あとの
古典の授業は
心地よい子守唄だ


近い未来
バーチャルの世界で
生徒たちは自分のアバターを
学校生活させているかもしれない

それを教える教師もアバターで


ふう〜

ため息をひとつ

時代は
エモさを忘れて
急速に未来に向かって
加速しているのだろうか

枕草子に
描かれる世界観は
現代には理解されない部分が
あるかもしれない

しかし

秋の夕焼けは
今も美しい

その美しさに
気づく人でありたいと思う

少女の瞳に
夕焼けは揺れて
その美しさを映し出す


エモさ燃ゆ
タブレット片手の時代生き
キミノ瞳に映る夕焼け






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