新しいOOPARTS
みなさんは、「OOPARTS(オーパーツ)」という単語を聞いたことはあるでしょうか?
OOPARTSとは「out-of-place artifacts(場違いな工芸品)」の頭文字を繋げた語です。主に出土品などが、考古学上その成立や製造法などが不明であったり、当時の文明の加工技術や知見では製造が困難もしくは不可能に見える場合に使われます(wikipediaから要約)。
簡単にいうと、「その時代ではありえない物が発見された!」というもののことです。元々は工芸品のみを指していましたが、現在は広義で、遺跡や技術も含みます。
・「OOPARTS-001」
私たちAATISMOは「OOPARTS」という言葉を「場所や時代を超えて素材や技術が出会ったもの」と捉え、その名を冠したプロダクトシリーズを、愛知県西尾市の金属切削加工会社である株式会社セイワさんと共同で開発、製作しています。
第一弾である「OOPARTS-001」は、金属の塊から削り出された、石器のような開梱ナイフです。
この製品は、旧石器時代前期から中期にかけてのハンドアックスと呼ばれる打製石器をモチーフとしつつ、「素材を石からアルミニウム」に、そして「製法を打製からマシニングセンタによる切削」へと、それぞれアップデートしています。
打製石器が石を叩いて剥離した形が意匠となり形をなしているように、エンドミルの動き自体をコントロールすることで、その軌道がそのまま切削痕として文様のように表れ、全体を形作るようにしています。
ここで目指したことは、製法と表現が一体となったある種の原始的な精神と、現代の素材やテクノロジーを融合した新しい「OOPARTS」です。
※現在、「OOPARTS-001」はクラウドファンディングにてテスト販売を行っています。そちらにも詳しい説明を載せているので、興味があればご覧ください。また、続く製品「OOPARTS-002」も開発中です。
・OOPARTSの分類
(画像はアンティキティラ島の機械)
さて、ここからは、その「OOPARTS」というもの自体について、詳しく見ていきたいと思います。
「OOPARTS」は一見不可思議に見えても、その物自体が発見されて存在している以上、つくることが不可能ということはあり得ません。
そこで、所謂「OOPARTS」と言われているものを、以下のように分類してみます。
1:これまでに分かっていたよりも、高度な技術があったと判明したもの(アンティキティラ島の機械、ネブラ・ディスク)
2:途方もない手間と時間をかけて作られたり、その目的が不明な為、現在の感覚からは不可能に思えるもの(ナスカの地上絵、コスタリカの石球)
3:当時はつくる技術があったが、その後に失われてしまったもの(ダマスカス鋼、曜変天目)
4:意匠が抽象的だったり用途を曲解したりして、現代的なもののように見えるもの(コロンビアの黄金ジェット、バグダット電池)
5:自然物が人工物のように見えるもの(南アフリカの金属球、与那国島の海底遺跡)
6:現代に作られたものが、なんらかの理由で古いもののように見えたもの(コソの点火プラグ)
7:現代のものを、あたかも発掘されたもののように細工したもの(水晶髑髏など多数)
以上の分類で言うと、「OOPARTS」と言われるもののうちの多くは、残念ながら4〜6の勘違いか、7の捏造に分類されます。
(勘違いだからと言って、そのものの価値が落ちるわけではありませんが)
そして、更に1〜3はそのもの自体の解明され具合によって説明することができ、
1:用途と目的、製法がほぼ解明されているもの
2:用途と目的が、物によっては製法も不明なもの
3:製法のみが不明なもの。ロストテクノロジー
と考えることができるでしょう。
従って、「OOPARTS」と言う言葉は、「過去の遺物のうち、用途や目的、製法などが分からないもの。そして分かっても高度な技術が使われているもの」の総称と言えることがわかります。
・現代のOOPARTS
上記のように「OOPARTS」をみた時、ふと現代に目をむけて見ると、実は身の回りにあるものも、「用途や目的、製法などが分からないもの」が多いことに気付きます。
現代では、様々な技術が発展し、細分化・専門化されてしまったためブラックボックス化し、いつも自分が使っているものですら、どのように作ったか分からず、分かったとしても自力で再現するのは到底不可能です。
例えば、特定の作業に特化した、専門の道具や機械などは、一見するだけでは何に使うか、どうやって使うかは一般の人には分かりません。
また、技術の変化が早いため、少し昔のものになると、フロッピーやカセットディスク、ダイヤル式電話など、どんどん使い方の分からないものになっていきます。
もし、正確な情報が残されていないほど遥か未来に、現代のものが発掘された場合、研究者達がもう動かないスマホをみて、何に使ったか頭を悩ませる姿を想像すると、同情を禁じ得ません。
・最後に
「OOPARTS」という言葉は、初めて耳にした子供の頃から、古代の謎を象徴する浪漫溢れる単語でした。
遥か昔に作られたものが、一体何故、何のために、どうやって作られたのか。
大人は何でも分かっていると勝手に思っていた子供時代に、世の中にはまだ解明されていない謎が沢山あるんだ、と教えてくれたものでもありました。
その時から何年も経ち、その間に解明された謎もありましたが、身の回りにある現代のものについても、分からないことが無数にあると知りました。
そしてそれは未来の人々にとってはより大きな謎となるでしょう。
AATISMO 海老塚
*画像引用リスト
https://en.wikipedia.org/wiki/Out-of-place_artifact#/media/File:NAMA_Machine_d'Anticyth%C3%A8re_1.jpg
https://www.apple.com/jp/macbook-air/
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