見出し画像

私は「私」を取り戻す

『ありがとう、愛してる』を続けて半年が過ぎた。


夫は相変わらず、嫌なことがあれば怒鳴り、机を殴っていた。

生活費もまだまだ両親と折半で過ごしていた。


それでも、腕をかきむしる苛立ちも感じることも減り、心の変化を実感しながら、日々を過ごしていた。


そんなある日の日曜日。


洗濯物を畳んで、タンスに仕舞っている最中に、夫が、ローソファに乗っていた2歳の娘をソファごとひっくり返した。

「何やってるの!??」

娘は泣きながら私に抱きつきに来た。
私は座った状態で娘を抱きしめた。

「うるさい!!そいつが悪い!!」

いつもの悪い悪い悪い悪い!もう、うんざりだ。

「どれだけ悪くてもソファから落として何かあったらどうするの!」

「どうにもならん!ちゃんと怪我しないようにやった!」

「そういう問題じゃない!!」

「うるさい!!」


ガンッ!!

と顔面に痛みと衝撃が走った。丸められたタオルを顔面にぶつけられたのだ。


投げつけてきた。全力で。

メガネをかけている私は、何度もメガネ越しの衝撃は痛いと伝えているのに。

夫は私の顔に向けて投げてきた。

あ、ダメだ。もうダメだ。

力が抜けていくのがわかった。

病気前の夫なら、こんなことしない。
メガネが痛いこともちゃんとわかってくれてた。
なにより、私を「傷つける。傷つけていい」対象にされたことが、悲しくて仕方ない。

どうして、どうして、こんなことになったんだろう…

ただ、みんなで笑って過ごすだけで、幸せなのに、それだけでいいのに…


昔の夫に戻って欲しい。病気前の夫に戻って欲しい



そんな一瞬の時間に、私の中で誰かがつぶやいた。


『じゃあ、昔の「私」はどんなんだったの?』


私は目を見開いた。


昔の私。

夫と出会った頃の中学生の私は、活発で、夫のことも追いかけわまして、男の子の喧嘩にも負けなしで、理不尽なんて絶対許さなくて。

そんな私に一目惚れした夫

それが、夫が惚れた「私」だ。


気がついたら、私は、メガネを夫に投げつけていた


「ッな!!!」

「メガネに当てんな!!痛てぇっていつも言ってんだろうが!!」


言い返されると思っていなかった夫が、体を震わせて、落ちたメガネを広い、庭に捨てた


「捨てんな!!いくらすると思ってる!!」

「俺の金で買ったものを投げつけたお前が悪い!!」

「先に物投げたのはお前だろうが!!」

「うるさい!お前が悪い!!」


夫は、どかどかと座ってる私の頭上にある小さな小物入れを、私めがけて落とした。


娘を抱きしめてる私に向かって、


娘がいるのに、当たるようにものを落とした!!


私は泣きじゃくる娘を離し、キッチンの食器洗い棚を倒し、リビングの机をひっくり返した。


食器の割れる音と、子どもたちの泣き声が響き渡る。

私は夫に向き直った。


「お前が悪いんだろう!!!!!」


夫は何も言わず、外に飛び出していった。


私はソファで泣きじゃくる子どもたちを両腕で力いっぱい抱きしめた。


子どもたちは私が守るんだ


そんな思いでいっぱいだった。


少しして、いつもより早くに、玄関が開く音がした。


夫がリビングに入ってきた。

子どもたちはまだ泣いている。


絶対に謝るものか。

私を「傷つける対象」にしたんだ。

たとえ、丸められたタオルでも、こいつは、私に暴力を振るった




「…………ごめん…」


聞こえてきたのは聞き慣れたセリフ。

でも、私は言ってない。


びっくりして夫の顔を見た。


目は合わない。

暗い夫の顔。


それでも、うつ病になってから、初めて聞いた夫の「ごめん」


「、っ、…ふ、…ぁああああああ!!!」


子どもたちの泣き声と一緒に声をあげて泣いた。

嗚咽も我慢せず、子どもたちと一緒に泣き続けた。


夫は、そんな私を、抱きしめることも、撫でることもできなかったけど

何も言えず、ずっと俯いていたけど


それぐらい、苦しい状態でも、夫は「ごめん」と謝ってくれた


「ご!、っごめ、んね!!つ、辛い、のに、謝らせて…!」


嗚咽と涙でぐちゃくちゃになりながら、子どもたちと夫を抱きしめた。



その後は、一通り泣いて、落ち着いて、

お互い、自分が壊したもの、投げたものを片付けた。


あぁ、お気に入りのラーメン屋が締まるときに貰ったおそろいのラーメン皿壊れちゃったな……


ゴミ袋に割れた皿を入れて、朝食がこぼれたカーペットを洗濯に出して


ソファで呼吸の荒くなる夫を見た。


「大丈夫?」

「………、こん、なに…お前が怒るなんて…思わなかった…」

「怒るよ。怖かった?」

「……こ、怖かっ…」


そのまま夫は過呼吸になった。

紙袋を渡し、抱きしめながら、背中を擦った。


「誰だって、怒鳴ったり、ものを壊したら怖いよ。だから、もうやめようね」

「…………ぅ、ん」

「よしよし、大丈夫だよ。お気に入りのラーメン皿は割れちゃったけどね」

「…………つ、辛…い」

「そうね。残念だね」


小さく縮こまった夫の背中を擦りながら、抱きしめ続けた。


夫だって、人間だ。

病気だろうと、なんだろうと、人を傷つけちゃいけない。

家族ても友人でも。


その日以来、夫が理不尽にキレることは目に見えて減っていった。




あとがき
子どもたちが生まれてから、言葉使いを気をつけていたんです(笑)

夫のことは結婚当初「お前」と呼んていたけど、父に「それはちょっと…」と言われてから、言葉を直して3年。

爆発だぁー!!💣💥🤣

子どもが真似するから、気をつけていたんですが、昔の私を思い出したら

「あれ?なんで私こんな従順になってる??」

っとしっかり疑問が生まれてから、夫の小言にも

「え?そんな私に一目惚れしたのは誰?」

「そんな清楚な女性期待して、私のこと好きになったの!?牛肉食べたいのに、魚買ってきたくらい畑違いよ!」

と笑い飛ばすようになりました。
夫も何も言い返せない🤭
幼なじみの特権ですね🤣

今まで、「夫は病気だから」と気を使いすぎてたんですよね。

それで、何でも受け止めて上げていたら
「あぁ、こいつはここまで言っていいんだ」
「こういうこと言っても傷つかないんだ」
と思われていたんです。

自分の扱い方を、他人に教えるのは自分なんだと、教えてくれた事件でした。

さあ!ここから、事件ばっかり続きます(笑)

                 ・・・
本当に、「ありがとう、愛してる」を唱えるだけでお金持ちになれる魔法の言葉にしてください誰か🤣





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?