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神楽坂・江戸川橋エリアの現代アートギャラリー aaploit の情報発信 note で…

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神楽坂・江戸川橋エリアの現代アートギャラリー aaploit の情報発信 note です 展覧会に関する情報、考察を発信するほか、アートライティング実践ドリルのマガジンも発行しております https://aaploit.com

マガジン

  • アートライティング実践ドリル

    月刊aaploit(ポッドキャスト)と連動企画 いいディスクリプションは真理に迫る! アートライティングドリルで投稿された展覧会や作品についてのアートライティングを公開するマガジン

  • 月刊aaploit

    研究者の北さんとaaploitディレクターの斉藤がトークをするポッドキャスト、作品について、ギャラリーについてなどを発信

最近の記事

道又蒼彩の個展

道又蒼彩(みちまたあおい)はメディアと風刺に着目し、武蔵野美術大学大学院で版画研究に取り組んでいる。学部時代に制作した“カフカの階段”シリーズは、学部卒業を控えた自身と同級生がこれからの人生をどのように歩むのかを示した作品シリーズである。 初めて道又蒼彩の作品を見たのは学部の卒業制作展、2023年の年初だった。鷹の台駅から20分ほど歩いてきてキャンパスの門をくぐり、左手側の一番奥、壁一面を使ったカフカの階段の展示、見せているものと同等にコンテキストも立ち上がってきた。 絵

    • 植松美月「月に浮かぶ、」について by K.U

      ギャラリーに足を踏み入れると、紫と淡い赤色で染め上げられたシートを何枚も重ねて4つに折り畳まれた束が、いくつも床と展示台に無造作に置かれていた。それぞれの束は異なる柄に染め上げられていて、とても滑らかで美しく、布なのか紙なのかまったく見分けがつかない。その美しい表面には4桁の数字が印字されていた。聞くと、このシートはコピー用紙とのこと。「紙」ではなく、あえて「コピー用紙」と説明したのは、何らかの意味があるのだろう。 ギャラリー左手の壁に目をやると、そのうち一つの束が開かれて

      • 植松美月の個展「月に浮かぶ、」開催によせて

        2023年の初夏に aaploit で植松美月の個展を開催した。そして、2024年の3月に植松美月の二回目の個展を開催する。 植松の作品を初めて見たのは、東京藝術大学の博士審査展なので、2022年の年末になる。植松は陳列館の二階で作品空間を構築していた。展示されていた作品は三点《咲きひらいて》、《吹き下ろす》、《瞬き》である。巨大な植物あるいは海洋生物のようにも見える《咲きひらいて》は紫と青のグラデーションが見える作品であり、様々な色と形から思考が広がる。陳列館の三分の一の

        • 岡田 佳祐「地球の波動ノ曲」について by K.U

          「グロテスク(grotesque)」は「奇怪な」「異様な」などと訳される英語の形容詞ですが、この語源はイタリア語で洞窟を意味するグロッタ(grotta)に由来します。15世紀末に発掘された古代ローマ皇帝ネロによる黄金宮殿「ドムス・アウレア Domus Aurea」、この室内に描かれていた奇妙なフレスコ画を参照した室内装飾が爆発的に流行し、「洞窟にある装飾」という意味で「グロッテスカ/grottesca(グロテスク様式)」と呼ばれ、「奇怪な」あるいは「滑稽な」という意味が「グロ

        道又蒼彩の個展

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        • アートライティング実践ドリル
          49本
        • 月刊aaploit
          12本

        記事

          ギャラリーaaploit―岡田佳祐個展「地球の音と色の距離」作品について by S

          2024年1月28日まで開催されている岡田佳祐「地球の音と色の距離」個展を観る。 ギャラリーaaploit の壁面の全てを使って大小20数点の作品が展示されていた。どの作品も色鮮やかで、ギャラリーに足を一歩踏み入れた瞬間、賑やかに溢れる色の洪水に圧倒されていたところ、背後から「これらは、道端で拾った石をすりつぶした顔料で描かれています。」と静かで穏やかに話かけられた。作家岡田氏だった。 使用している顔料について話を聞くことができた。自ら作る顔料の発色をより鮮やかにさせるため

          ギャラリーaaploit―岡田佳祐個展「地球の音と色の距離」作品について by S

          aaploit の2023年

          2023年も終わりを迎えようとしている。aaploit は12月の展覧会で通算16回の展覧会を実施した。2023年に限定すると11回の展覧会を実施したことになる。ほぼ毎月展覧会を実施していたことになる。 aaploitはオープンから1年半経った。年が変わる節目のタイミングできちんと記録と反省をしておかなければいけないと思った。 2022年6月にオープンしたギャラリー、手探りの状態だったけれど16回も展示を経験すると知識と実践のレベルが上がってくる。展覧会で何を見せたいのか、

          aaploit の2023年

          #013 「ソウルへみんなで行っていろいろすごかった話」ゲスト:中澤賢(PHOTO GALLERY FLOW NAGOYA )

          Frieze SeoulとKiafを視察、そして韓国・ソウルのギャラリーと提携の話をするためにソウル、現地で北さん、中澤さんと合流する。行き当たりばったりのアート旅、ひたすらアートを巡る旅。やはり作品などの説明が必要だと思った。 最初に目に入ったEsther Schipperのブース、いきなりピエール・ユイグのRole Announcerが提示されていた。というよりもパフォーマンス、ブラックタイの男性が入口を通過する人の名前を聞いて、通り過ぎた時に名前を叫ぶ。 ブースの壁

          #013 「ソウルへみんなで行っていろいろすごかった話」ゲスト:中澤賢(PHOTO GALLERY FLOW NAGOYA )

          松下みどり 「彼此方の」より《けむる》、《けぶる》、《たつ》、《暮》、《種》、《沸》について by K.U

          12月1日(金)から12月17日(日)までaaploitで開催された、日本画家 松下みどりさんの個展「彼此方(ひしかた)の」から、《けむる》、《けぶる》、《たつ》、《暮》、《種》、《沸》という6枚の作品群を紹介します。 これらの作品群は、百人一首の八十七番、寂連法師による「村雨の 露(つゆ)もまだひぬ 槙の葉に 霧(きり)立ちのぼる 秋の夕暮れ」に着想を得て製作された作品で、参照された和歌は、にわか雨が通り過ぎたあと、まだ雨の滴が乾ききらない槙(常緑針葉樹の総称)の葉から霧

          松下みどり 「彼此方の」より《けむる》、《けぶる》、《たつ》、《暮》、《種》、《沸》について by K.U

          #015 「芸祭をいっしょにまわったよ」の回【月刊aaploit】

          月刊aaploitの#015は芸祭をまわったときの話、見てきたその日の夜に収録を行った。後から聞き返してみると、斉藤はかなり疲れていた様子だった。そんな疲れた様子が気になったものの、作品に関する説明が少なかったという反省が去来する。従ってnoteで補足しておこうと思った。 ヘッダーイメージにあるのは、鈴木萌絵さんの作品、だるまにペイントをしている。実際には存在しない風景を描いている。小さなだるまと少し大きめのだるまにペイントを行っており、これは実験段階であるという。 描か

          #015 「芸祭をいっしょにまわったよ」の回【月刊aaploit】

          ギャラリーaaploit―松下みどり 個展「彼此方の」作品について by p

          ギャラリーaaploit で開催されている松下みどりの個展「彼此方の」では、日本画の作品が展示されている。中でも最も大きな作品(1620×1620)に吸い寄せられた。 具象とも抽象とも受け取れるその作品の画面は、明るい色調で色数は少ないが存在感がある。それは、画面の三分の一を占める大きさで描かれた須弥山のような山が目に入ったからだ。緋色の朝焼けのような背景を背にそこにあるその大きな山は、緑の孔雀石色で、勢いよく輪郭が描かれている。幅のあるその輪郭線はまさに孔雀石のように濃淡

          ギャラリーaaploit―松下みどり 個展「彼此方の」作品について by p

          素材が語ること、松下みどりのアート by M

          松下みどりは日本画を学ぶ大学院生である。学部から修士課程まで伝統的な日本画の技法、画材を学んできた。制作に水や火も活用し、画面に現れる表情を豊かにしている。彼女が見せる画面は抽象的であり、和紙の表情、膠、顔料が主張してくる。 松下は大きな作品と小さな作品を制作する。個展「彼此方の」で展示した大きな作品は、一辺162cmを超える正方形の画面であり、小さな作品の一辺18cmとは9倍ほどの差がある。大きな作品は簡略化された抽象的な面で構成される。紅色と緑青との対比的な画面左側と画

          素材が語ること、松下みどりのアート by M

          メディウム・スペシフィシティの呪いを解く by J

          「何か」という特定は、それ自体が「呪い」ともなり得る。何かを定義する行為は、世界に切れ目を入れ、全体の中の一部を隔て、理解したと錯覚させる。しかし、これは真実の本質ではなく、見る者の恣意的な区切りに過ぎない。モダニズムと結びついたメディウム・スペシフィシティによるアートのカテゴリ分けは、今日においてもアーティストを美術教育の既成概念に縛りつける「封印」として作用している。では現代の「日本画」が意味するものは何か。ロザリンド・E・クラウスが説くポストメディウムの観点からすれば、

          メディウム・スペシフィシティの呪いを解く by J

          itokawa en "Copy & Paint''について by K.U

           イラストレーター/NFTクリエーター itokawa enの作品 "Copy & Paint" は、18cm×18cmの正方形キャンパスに描かれた16枚の女性の顔が、4×4のグリッド状に並べられた作品です。  モチーフとなっている女性はおそらく同じ人物で、4種類の異なる表情に描き分けられ、この4種類を連続させると瞬きの動作に見えることが、一緒に展示されている動画で確認できます。一方で、16枚の髪型と目を瞑っている4枚を除く12枚の眼の色はそれぞれが異なり、特に髪型が特徴的

          itokawa en "Copy & Paint''について by K.U

          「引用と複製」 by S.N

          NFT での活動を中心としている、糸川円の個展「t◯ken」が文京区のギャラリーaaploitにて開催されているので、鑑賞レビューを以下に記す。 糸川は、2023 年 1 月頃より、NFT にて活動を始めた、イラストを中心に制作をするアーティストである。 中でも印象的なのは、「Day100Act◯r」である。この作品は、100 日チャレンジという他 NFT 作家の作品(キャラクター)を引用して、自らの作品に取り込んでいき、1 日 1 枚。 計 100 枚のイラスト群である。

          「引用と複製」 by S.N

          ギャラリーaaploit―糸川円 個展「token」について by p

          糸川円(itokawaen)はNFTクリエイターで、少女アニメ的イラストを世界観ある背景と共にデジタルで描いているアーティストである。 コンテンポラリーアートのリアルなギャラリー空間「aaploit」において、NFTクリエイターの「token」というタイトルの展示とは何を意味するのか。 そもそも、今更だがNFT(Non-Fungible Token)とは、偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータであり、コピーや改ざんされやすいデジタルデータに唯一無二の価値をもたせた

          ギャラリーaaploit―糸川円 個展「token」について by p

          itokawa en 「t〇ken」で見せたデジタル・フィジカル by M

          糸川円の展覧会「t◯ken」が現代アートギャラリーのaaploitで開催されている。糸川円は2023年1月から活動を開始したNFTクリエイターである。名前の表記は漢字とアルファベットがあり、展覧会会場の入り口ガラスには漢字名で記載されているが、各種SNSの発信には itokawa en とある。 iPadで絵を描き、NFTマーケットプレイスで作品を発表する。ほぼ無名の状態からフォロワーを増やしていき、広く大きなコミュニティを築き上げた。NFT作品の発表にあたり100日チャレ

          itokawa en 「t〇ken」で見せたデジタル・フィジカル by M