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【教材レビュー】初級日本語 げんき

前回に引き続き、私が実際に使ったことがある教材についての紹介の記事です。

前回は「いろどり 生活の日本語」を紹介しました。

今回の記事も誰かの教材選びの参考になれば幸いです。

はじめに:『初級日本語 げんき』ってどんな教材?

まず、げんきの特徴と言えば英語で文法説明ページがあることです。

今は英語だけではなく、フランス語版もあるそうです。


『初級日本語 げんき』は初めて日本語を学ぶ人のための教材です。日本語の4技能(聞く・ 話す・読む・書く)を伸ばし、総合的な日本語能力を高めることができます。

『初級日本語 げんき』とは https://genki3.japantimes.co.jp/intro/


以前私が参加した凡人者オンライン日本語サロン研修会で【『初級日本語 げんき』の教え方】というセミナーに参加したのですが、そこでは

『初級日本語 げんき』は欧米の大学を中心に世界中で使用されている初級日本語の教材、ということで紹介されていました。(2021年9月4日開催凡人者オンライン日本語サロン研修会資料より)

なので、どちらかというと外国の日本語学習者(学生)向けの教材のようです。

もちろん、国内の日本語学習者に使えない、というわけではありません。

内容は場面シラバス×文法積み上げシラバスっていうかんじです。

登場人物が複数人いて、登場人物が様々な場面で使用する日本語を学んでいくイメージで良いと思います。

この登場人物も学生という設定なので、学生の日本語学習者は親近感を持って勉強ができそうです。

他にも特徴がいろいろありますが、詳しくは上記のURLのリンクからHPを参照ください。

では、私が使ってみてかんじたことを書いていきます。

1.英語(フランス語)で文法の説明が書いてある

これについては賛否両論あるかもしれませんが、時間が限られている中日本語を学ぶとなると、このように文法説明ページがあるのは非常に教師にとっても学生にとってもいい点だと思います。

『みんなの日本語』の本冊の中に英語版の文法説明ページが合体されているかんじです。

このページがあることで文法の理解が早く進むと思います。

ただ、英語(フランス語)がわかる学習者、英語(フランス語)で説明ができる教師じゃないと難しいかもしれません。

私も教える際には事前に文法説明ページを読んで、内容を落とし込んでいましたが、読んですぐ理解できないと教師の準備も少し大変だと思いました。

でも逆に英語で教えたことがない教師(私もです)からすると説明のいい勉強になります。

1つの参考書としても活用できると思います。

学習者に文法を早く理解してもらう(理解というか、だいたいわかる程度でもいいと思う)

そういうことができるのがメリットの1つですね。

2.反転授業に向いていると思う

みなさん、「反転授業」って聞いたことがありますか?

通常思い浮かべる授業といえば、先生が教壇に立って講義を行うものですよね。そして、復習として宿題を出されるのが一般的だと思います。反転授業は、その従来の授業形態をまさに「反転」させたもので、家庭でいわゆる「授業」を映像教材・動画を用いて予習の形で受講し、学校の教室で行う授業の時間では通常「宿題」として扱われる演習や、学習内容に関わる意見交換などを行うものです。つまり、学びのインプットとアウトプットの場を全く逆にするのです。

ベネッセ教育情報 https://benesse.jp/kyouiku/201609/20160902-1.html

つまり、事前に授業でやることを自分で勉強(input)してきて、クラスでは活動(output)をする、という従来の授業と「反転」させた授業のことです。

私は「初級日本語 げんき」のページ構成を見た瞬間、

「これ反転授業に使える教材じゃん!!」って思いました。

って言っておきながらまだ実際にそういう授業をしたことがないのですが(*_*;

初級の授業と言えばすごくざっくりとした流れですが、

①導入(場面・例文提示⇒口頭練習)
②基本練習(教科書の問題解く)
③応用練習・発展練習(勉強したことを使って活動する)

というような流れが多いと思います。

この流れだと1コマ45分で一つ、二つの文型を教えて、教科書問題やって、応用練習までってなると最後の応用練習の時間が短くなってしまうことが多いです。

これやりたかったのに・・・。

もっと時間取りたかった・・・。

という経験がある先生もいるのではないでしょうか。

せっかく学習者が集まって、たくさん練習ができる場(クラス)なのに、使ってみる時間が少ない、だと非常にもったいないです。

学生も不完全燃焼。今日話してなくない??

みたいに満足感を得られないかもしれません。

でも、反転授業をすれば授業前にある程度勉強する内容がわかり、文型や表現をいつ使うのか、どういう意味なのか理解してもらえるので、自宅で勉強した内容をクラス全員で確認後、すぐに活動に入るという流れを作ることができると思います。

それに、教科書文法ページを授業で説明するとなると時間がかかります。

教科書読むだけなら家でもできるわ!
学校に来てる意味ないじゃん!

という学生を生まれないかなと思います。

なので、『初級日本語 げんき』は学習者にとっても、教師にとっても授業を進めやすい教材、クラスの時間を有効に使えるようにしてくれる教材だなと思います。

3.練習の種類が豊富

次は、教科書にある練習の内容が充実している、という点です。

練習問題の中には変換練習や絵を見て文を作る練習など、よくあるものもあるのですが、それに加えて

①自由度が高いペア練習が多い
②インフォメーションギャップがある練習がある

この2点が非常にいいと思いました!

『みんなの日本語』だと(比較ばかりすみません…)ペアで練習ももちろんできるのですが、教科書に書いてあることや、答えをただ読むだけ、というあまり考えなくてもできちゃいそうな問題が多いと思います。

ただ読むだけだとあんまり日本語で話せた!っていう感覚にはならないのかなと思います。

まあ、やり方次第ですけどね!

でも、『初級日本語 げんき』だとペアで質問文を考えて自分の答えを言う、という練習が多くあります。

パートナーに聞いてみましょう!っていう練習ですね。

さらに②ですが、インフォメーションギャップがある練習ができるのもすごくいいです。

ペア同士でお互い違う情報を持って、それを基に会話を進めるという問題も多くあります。

例えば、「相手のスケジュールを聞き、自分のスケジュールと照らし合わせていつ〇〇するか決めましょう」みたいな内容ですね。

友達と一緒に何かするとき、このようなやりとりは必ず生まれます。
そういう時にこのインフォメーションギャップの練習は役立ちますよね。

それにインフォメーションギャップの問題だと相手任せにできないから自分でしっかり考えて発言しなきゃ!みたいなモチベーションアップにもつながると思います。

ペアで発表してもらいます、にしたらもっと効果がありますね。

サボれなくなります(笑)

また、これらの練習で使われている問題文やイラストも自分で問題を作る時、参考になります。

いいことがたくさんありますね~。

でも、注意しなければならないことがあります。

それは「英語⇒日本語」の変換作業にならないようにすることです。

私達も英文を日本文にするのはある程度文法や語彙がわかっていれば誰でもできると思います。

でもそれをして実際に使えるかどうか。

使えないことがほとんどです。

日本語の運用能力をあげるには学習者には「英語」で「日本語が理解できる」ではなく、「日本語」で「日本語が理解」ようになってもらうのが一番です。

頭使って日本語脳になっていくんです。

作業にならないように問題の出し方も工夫する必要があると思いました。

4.誰でもすぐ使える


最後のポイントは「いろどり」と同様に誰でもすぐ使えるというポイントです。

『初級日本語 げんき』にも教師用ページがあり、そこでは動画による教材の説明動画を見たり、補助教材をダウンロードすることができます。


補助教材は有料と無料のものがあり、無料の物の中には音声データもあります!

いや~、うれしいですね。

有料教材だと「絵カード」や「文法説明(日本語訳)」などがあります。

教科書の文法説明を日本語で読めるとなると授業準備の時短になってとてもいいですね。

でも、有料か~。って思いますよね。

有料教材が購入できるページでそれぞれ値段を見てみたのですが、絵カードは1冊分で2,000円、文法説明は1,500円でした!

これぐらいなら必要経費として購入してもいいかも!って思いました。

正直日本語教育関係の本って高いじゃないですか・・・(泣)

なかなか参考書とかもすぐ買えないんですよね。

読みたい本はたくさんあるのに・・・。

でも、他の教材に比べて『初級日本語 げんき』は手に取りやすいかもしれません。

詳しくは上記URLからご覧ください!

まとめ:学習者も教師も使いやすい!

ということで、私が使ってみて感じた『初級日本語 げんき』の感想でした。

私も使ったことがあるといっても、げんきの教科書の問題を学習者とオンラインで一緒に練習しただけで、クラスで使ったりという経験はないのですが、1課から最後まで使って教えてみたいなと思いました。

教師にとっても、学生にとっても使いやすい教材だと思います。

しかし、前にも書いたように使うにあたって気を付けないといけないこともあります。

・英語(フランス語)がわかる学習者・教師向け
・「英語(フランス語)」⇒「日本語」の変換練習にならないようにする

『初級日本語 げんき』だけではありませんが、どの教材を使うにしてもそれぞれメリット・デメリットがあります。

それを知らずになんとなくよさそうだから使ってみるか~、って思って使っていくうちに

なんか使いづらい・・・。
学習者にあってないのでは・・・。

というように途中でなることもあるかもしれません。

そうならないためにも、いろんな教材について知っておくってことは大事なことです。

なので、まだ『初級日本語 げんき』を使ったことがない人はまずはHPを見てみてください。


そして私のこの記事も少しでも参考になればうれしいです。

次はNHK(Easy Japanese Grammar Lessons)について紹介する予定です。

では!

サポートしていただけるととてもうれしいです! これからも引き続きいい投稿ができるよう頑張ります!