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表記ゆれ対策、どうしてる?<小説の書き方>

表記ゆれ、特に漢字を「ひらく(平仮名)」か「とじる(漢字)」かは、小説を書く人なら、誰でも悩む問題だと思います。
「かける」「賭ける」「懸ける」のような。
おそらく多くの人が記者ハンドブックのお世話になっているのではないでしょうか。

私も記者ハンドブック(共同通信社)を持っています。作家になった頃は一時、手放せませんでした。同じ言葉なのにあるページでは平仮名、あるページでは漢字、あるページでは違う漢字というのを、なんとか避けるための拠り所にしていました。

でも数ヶ月すると自分の「ひらく」か「とじる」か迷う言葉の癖がわかってきます。
(何度も同じ言葉で辞書やハンドブックを引くのでいい加減覚えます)

今日も私がやってみて良かったと思うことをご紹介します。
それはいちいち辞書やハンドブックを引かずにすむように
自分だけの【表記ゆれリスト】をつくってしまうことです。

リストの内容は二種類になります。

①迷わず「ひらく」もの

無い ない
様だ ようだ
位 くらい
為 ため
等 など
迄 まで
程 ほど
及び および
従って したがって
故に ゆえに
更に さらに
既に すでに
事 こと
所 ところ
他 ほか
筈 はず

※これは一般的なものです。自分が迷う言葉でつくってください。
この表を見えるところに貼っておけば、それだけで効率が上がるはずです。

②微妙だけど、自分の小説では、こちらにすると決めたもの

これは、エクセルに自分の迷う言葉とそれを「ひらく」か「とじる」かの
リストをつくりました。

「おとなしい」⇒「おとなしい」
「おそれる」⇒「恐れる」
*「こわい」⇒「怖い」
のような簡単なものです。100ワードくらいでしょうか。
あいうえお順にソートしました。


この二つのリスト(一覧表)が手元にあれば、もうほとんど表記ゆれの確認のためにハンドブックを引かずに済むと思います。
もっと早くリストにすれば良かったと思います。
同じ悩みをお持ちでしたら試してみてください。

難しく考えずとも
・迷って調べた言葉をどこかにメモしておく
・ハンドブックや辞書には付箋や印をつけておく
・ある程度溜まったら表にする
・ひらくかとじるか決める

これでもう自分だけの表記ゆれリストになります。

記者ハンドブックを使うときの注意

記者ハンドブックは基本的に新聞記事用なので誤解のないように「ひらく」ことが多いです。
でも小説に使う言葉は漢字だからこそ雰囲気が出たり、イメージを喚起する場合があります。
たとえば「俯く」「頷く」「苛立つ」のような言葉たちです。

この三つの言葉は私のハンドブックでは「ひらく」指示になっていますが、こういう言葉をすべて平仮名にしてしまったら、ちょっと寂しいですし
幼い感じになってしまうかもしれません。その点は気をつけた方が良いと思います。

※記者ハンドブックは、「ひらく」「ひらかない」のルールブックだけではなく、正確な言葉の意味とそれに相応しい漢字はどれか? その正しい用例を教えてくれます。
それを知る、チェックするというのが、本来の使い方だと思います。
私は今も重宝しています。

いろいろ書きましたが、ひとつの小説の中で「ひらく」か「とじる」か
ブレないようにしたいですね。

そのためにも、自分だけの【表記ゆれ用リスト】をつくることをおすすめします。

そうは言っても日々、勉強

よく使う言葉をリスト化すると言うことは、新しい言葉には対応できないということです。しかし、語彙を増やす、表現の幅を拡げる、ということが、作家にとって大事なのは言うまでもありません。

自分だけの【表記ゆれ用リスト】を追加して育てましょう

そして表記ゆれだけではなく、日々、執筆や読書で出会った言葉を忘れずに知識として身につけ、実際に使ってみることで、自分の言葉にしたいものです。


私はTwitter(X)で毎日、『そうだっけ日本語』という言葉クイズのようなものを続けています。最近はnoteでも紹介するようになりました。
毎朝問題を出すのですが、実は私が日々出会って「うん? そうだっけ」と思った言葉をお題にしているのです。

おかげで、何度も目に触れさせて、使ってみることで記憶に定着させることができます。
(定着しないものもありますが……)

覚えた言葉は実際に使ってみることをおすすめします。日常の会話、メール、SNSなど、使う場面はいくらでもあります。

※執筆中の小説に使うのは、自分の中でこなれてからにした方が良いです。

それでは今日はこの辺で。
お付き合いいただき、ありがとうございました。

noteの記事をまとめた『そうだっけ日本語』と『小説の書き方』のマガジンをリンクしておきます。

11/29追記 
MIYAKKOさんからコメントをいただいて、思い出しましたが、記者ハンドブックには他にもためになることがあります。
共同通信社のハンドブックですが、後半にある「誤りやすい語句」がとても秀逸で、私はこれをテキストにして勉強したことがありました。


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