【読書録】「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実/山口 慎太郎

育休中に積読を消化したい!
0歳の子が寝ている間に、ちまりちまりと読書中。
読み終わった本から、自分用に雑多なメモと感想を書く予定。

読んだ理由

  • 「家族の幸せ」について、定性的ではなく定量的に示されているデータがあるのならば読んでみたいと思った。

雑多メモ

  • 子供を持つ母親にとって、雇用保障のありがたみは大きい。なぜなら、諸外国と比べるとクビになりづらく職は安定しているが、ひとたび仕事を離れると次の仕事が見つかりにくい社会だから。

  • あまりに長い育休は復帰への逆効果。連休明けの月曜日に仕事に行きたくなくなる気持ちと同じ。顧客を取られたり、新しい知見や技術についていけなくなってしまったり、人脈が失われる要因になってしまうこともある。

  • 政策評価を用いたドイツでのABテストで、育休が子供の発達と母親の就業にそれぞれどのような影響があったかを確認。母親の就業には、1年以内ならむしろプラス、それ以上に長い育休は母親の就業にわずかにマイナスの影響があった。(仕事のスキルや習慣が失われることにより、長期的には母親の就業にマイナスの効果があった)子供の発達においても、(育つ環境は重要であるが)育児を行うのは必ずしも母親でなければならないという結果は出なかった。

  • 良い保育園を見つけることができれば、母親が働くことは子供の発達において悪影響はない。

  • 経済学が予測する育休3年制の効果・・・育休は3年もいらない。2年目以降は家計所得が大きく落ち込む。育休3年制が導入されたとしても利用したいと考える人は多くなさそう。

  • 父親の育休取得が子供が16歳になったときの偏差値に影響する(1ほど上がる)。生後1年間の親子のふれあいがその後の親子関係に大きな影響を及ぼす

  • 幼児教育は将来の高校卒業率・就業率を上げる。生活保護受給率・逮捕率を下げる。周囲の人々との軋轢を生じさせる問題行動を減らす。

  • 親が体罰を行うことで、自分の葛藤や問題を暴力によって解決して良いという誤ったメッセージを伝えることになってしまう。幼児期に親に体罰を受けた子供は、他の子供に乱暴しがちで、問題行動を起こしやすくなる傾向がある。

  • 保育園通いは母親のしつけの質も上げる。また、幸福度も上げる(24時間子供と一緒にいるストレスを減少させる、復職して働くことで金銭的な悩みも減少させる)ため、虐待の抑止力にもなる。

  • 「3組に1組は離婚する」の根拠は、「離婚件数➗結婚件数」。だがこれは「今年」の数なので、分母にある結婚件数は今年行われたものだが、分子にある離婚件数の夫婦の結婚は過去に行われたもの。この計算式だと結婚件数が減少している現在、離婚率が上昇してしまう。

  • 離婚しやすくなると女性の自殺率が大幅に減る。DVから逃れる手段としての自殺を試みる必要がなくなるから。ただし、学歴の低い妻・小さな子供がいる妻においてはその限りではない。

雑多な感想

  • 調査の「内容」についての記載はほぼ0に近く、「こういう結果が導かれました」という結果のみが記されていることが多かった。「経済学」と銘打っているからには調査方法、調査対象、仮説などの調査の細かな内容を知ることができるのを期待していたので、その点は消化不良だった。読みやすさというか、調査結果をたくさん、そしてわかりやすく、結論だけズバリ示すことに比重を置かれた本だと思う。

  • たくさんの調査結果が示されていたので興味関心の入り口として、そこから深く知って行こうとするには良い本だったのかも・・・。

  • 特に家庭においては変数が大きいと思う。筆者も本書の中で繰り返し言っていたことではあるが↑の調査内容だけで良い・悪いは判断しかねる部分が大きい。(そして筆者も断言を避けたかったのか、変数が大きいですからね!みたいな逃げの表現が多用されていてちょっと残念だった)たとえば「育休が短いとこう!」というわけではなく、「こういうセグメントにはこういう傾向がある」とふわっと捉えておくべき内容かと思った。感覚的に知っていることを、あらためてデータと調査で裏付けされているということを知るには良かった。

  • 筆者の言いたい「家族の幸せ」の定義が、「社会」にとってなのか「一個人」「一家庭」なのかが項によって定まっていないように思われたので、参考になる部分とそうでない部分があった(一個人、一家庭について知りたかった)。

  • 筆者の見解・体験談と、調査の結果・事実がやや混濁していたので読解しづらい部分もあった。

読んでいる人の仮説通りの内容が大半だと思う。「え?意外!」みたいな内容はほとんどなかった。
テーマに興味があり、このテーマについて諸外国と日本の比較をしたかったり、感覚的に知っていたことを改めて裏付けしたい、と思う人にはおすすめかも。

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