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ロシアはわるくない?

全国の英語学習者&受験生のみなさまコンニチワ。
かつて某英語学習のカリスマは言いました。
日本人が英会話をマスターする上でネックになるのは、ロジカルシンキング、つまり日本人は論理的思考ができないことだ、と。
そこから話は「ディベートのススメ」のような展開になっていくのですが、たしかに国会中継や各種報道、記者会見などを見ていても危うさののようなものを感じてしまいます。
質問に対する答えになってないのは、議員の逃げのテクニックなのかとも思いましたが、ひょっとすると本気で答えてあのありさまなのかもしれないと最近心配になってきました。
そもそもああした返答でも詰めずにおわる日本のジャーナリズムやマスコミも問題です。
それって辻褄あってる?なんて報道もしばしばですが、
なんで意見が1種類しかないのか?というのも気になります。
今回のウクライナ危機のことです。
え?
だって10:0でロシアが悪いんだから
そこらへんは議論の余地はないでしょう?
などとnoタイムでそう強弁するあなたに問いたい。
そもそも今回のロシアの軍事行動の動機は何なのさ?と。

実際に問い詰めてみると
そこらへんをちゃんと説明してくれない人が多い。
でもムリもないかなぁとも思うのです。
たのみのセンモンカといわれる方々は炎上を恐れてるのか
歴史的な文脈にはあまりふれず、たまにふれても
競歩に近い早歩きでササっと流しながら
「もちろん悪いのはロシアですよ」
という趣旨のフレーズを、過剰なまでに、はさむんで情報が薄まってしまうのでした。
あの池上彰さんなんぞは雑誌の連載で
「ミンスク合意が鍵」
などと、一応、バランス感覚も教養もありまっせみたいなタイトル掲げてるんですが、
元からミンスク合意を知る人以外が読むと、ロシアだけがいっぽう的に不履行なのだと誤解するような書きかたになってたりします。

さて、この「ロシアは悪くない」というタイトルは、
私の意見ではありません。
TBSラジオの「デイキャッチ」という番組の中の曜日替わりのコーナーで
小西克也という国際ジャーナリストの方が2014年9月2日にお話したときのタイトルなのです。
フルなタイトルはこうです。

「ロシアは悪くない~有力国際政治学者の主張」

番組ではこの主張は反体制の陰謀論者のものなどでは決してなく
アメリカはシカゴ大の国際政治学者であられる
ジョン・ミアシャイマー氏の主張なのだとまず紹介します。
なんでも、アメリカの国際政治学には大きく分けると
リアリスト派リベラル派の2大勢力があり
彼はリアリスト派の重鎮なのだとか。
彼の、これまた権威ある専門誌「フォーリンアフェア」
「なぜウクライナ危機が西側のせいといえるのか」
と題した論文がその放送のひと月くらい前に掲載された
のだと↓


ハナシは1989年のベルリンの壁崩壊までさかのぼります。
世の中は、欧州における駐留米軍はもはや不要ではないのか?という議論にもなったのですがロシアとしては逆にいてくれてもかまわない、いや、むしろいてくれ…だったそうなのです。
なぜか?
ロシアは統一されたドイツが怖くてしょうがなかったのだと。
これは見落されがちなことですが、2度の大戦その他の戦争でいちばんの犠牲者を出したのは日本でもアメリカでもなくロシアなのです。
(「日露戦争」などというのもありましたが、これがしばしば「にっぽんスゴイ」の文脈で語られるのはあまり好ましいとは思えないのですがどうでしょうか。ちなみに正露丸はかつては征露丸という表記でした)
そもそもロシアは歴史上、侵略するより、される方が多かったのです。(スラブ民族のスラブと奴隷(Slave)は同源だと考えられています。)
大きな三つはナポレオンのフランスとドイツ帝国、ナチスドイツ。
そうロシアはドイツには二回も侵略されているのです。
 今回の戦争のことで、フランスのマクロン大統領がプーチン大統領に対して仲介役を買って出てみたりドイツのショルツ首相が電話会談をしたりしましたが、ロシアにしてみれば一番説得力のない二国ではないでしょうか。「おまいら、どの口が言っとんねん」てなものでしょう。
 そんなわけで、アメリカは冷戦下では敵でしたが、米軍がいわゆるところの「セカイの警察」気取りで欧州にとどまっていてくれたほうが恐ろしいドイツも逆にへんな気おこさんだろう…いてよし、ということらしいです。

さて、こうなってくると、元の論文のほうをのぞいてみたくなります。
To understand why the West, especially the United States, failed to understand that its Ukraine policy was laying the groundwork for a major clash with Russia, one must go back to the mid-1990s, when the Clinton administration began advocating NATO expansion. Pundits advanced a variety of arguments for and against enlargement, but there was no consensus on what to do. Most eastern European ?migr?s in the United States and their relatives, for example, strongly supported expansion, because they wanted NATO to protect such countries as Hungary and Poland. A few realists also favored the policy because they thought Russia still needed to be contained.
(西側、とりわけ米国のウクライナ政策がロシアとの衝突の原因になっていることを理解するにはNATO拡大をかかげたクリントン政権下の90年代までさかのぼらねばなりません。
 当時はNATO拡張の是非についての統一見解はなかったものの、たとえばハンガリーやポーランドのような国がNATOに守られるべきと考える東欧系の移民たちとごく少数のリアリスト派は拡大を支持しましたが、大半のリアリストは反対していました。)

ニュースなどで時折、NATOの拡大について「プーチンは裏切られたと主張していますが、アメリカは外交文書を交わしたわけではないといっている」という説明がよくされていましたが、ウラをかえせば、たしかにそういうハナシそのものはあったということです。

あれぇ?そんなこと言ってましたぁ?でも契約書はつくってないですよねぇ
…な~んていうのは悪徳業者が庶民をだまくらかす時のやり口です。

それでも「戦争はあかんやろ」ってことにはなるのでしょうが、過去100年で3度もの侵略を受けてきた国ならではの視点からのトラウマ的記憶について表現したくだりがあります。↓

Putin’s actions should be easy to comprehend. A huge expanse of 0at land that Napoleonic France, imperial Germany, and Nazi Germany all crossed to strike at Russia itself, Ukraine serves as a buffer state of enormous strategic importance to Russia.
(プーチンの行動は理解しやすいはずです。ナポレオンのフランス、ドイツ帝国、ナチスドイツといったすべての侵略国がロシア侵攻の際に横断した広大な土地であるウクライナは、ロシアにとって非常に戦略的に重要な国として緩衝地帯としての役割を果たしています。)

そして↓

Washington may not like Moscow’s position, but it should understand the logic behind it. This is Geopolitics 101: great powers are always sensitive to potential threats near their home territory.
(ワシントンとモスクワのちがいはあれど、理屈は理解できるかと思います。これが地政学の基礎の基礎です。大国というのは隣国の潜在的な脅威に敏感なものです。)

つまりこういうことです。↓

Imagine the outrage in Washington if China built an impressive military alliance and tried to include Canada and Mexico in it.
(想像してみてくださいな。中国が軍事同盟を構築し、それにカナダとメキシコを加入させたなんて場合の怒り心頭のアメリカを。)

great powerは大国
super powerなら超大国です
そして
101は入門講座というような意味です。

超大国ってどこのこと?ときかれれば、かつてのソ連とアメリカってことになるのでしょうが、今のロシアのGDPは中国の10分の1
ある意味、NATOの無節操な拡張は冷戦の勝者による敗者への弱い者いじめです。
島国の日本にとっては、国境のもたらす脅威はなかなか想像しずらいかもしれません。
たとえるならナニワ国とエド国が対立するときに、カナガワンとサイタマンとチバニアンがナニワ同盟に加入しました…みたいなことでどうでしょうか。
さて
ロシアにとってのもうひとつの許せん!はウクライナのクーデターのことです。
2004年の大統領選挙で一度は親ロシア派ヤヌコーヴィチ氏が選ばれますが、
不正選挙だなんだと難癖をつけられ親欧米派ユシチェンコにとってかわられました。
The new government in Kiev was pro-Western and anti-Russian to the core, and it contained four high-ranking members who could legitimately be labeled neofascists.
Although the full extent of U.S. involvement has not yet come to light, it is clear that Washington backed the coup
(キエフの新政府は、親欧米で反ロシア的であり、高官にはネオファシストと呼ばれるメンバーが含まれていました。米国の関与の全容はまだ明らかにされていませんが、ワシントンがクーデターを後押ししたことは明らかです。)

報道もあったかと思いますが、内閣ドラフト的な内容の電話録音などもリークされたようです。アメリカによる他国の政権の転覆を狙った工作なんて、そもそもお家芸のようなものです。興味のある方は図書館にいけばいくらでもネタは拾えます。それらは都市伝説の類ではなく近現代史の事実です。他国の主権侵害をしたここ最近の代表的な例はイラク戦争でしょう。
 インドがロシアへの制裁に消極的なのは後進国がゆえの経済重視と思っているかもしれませんが、それだけではないと思います。インドもまた植民地という名の被侵略国です。欧米が正義だなんてとうてい思えないのでしょう。
彼らにして見れば「武力による一方的な現状変更」は許されないってどの口が言ってんだってハナシでしょう。
アフガニスタン
ドミニカ
二カラグア
グアテマラ
グレナダ
パナマ

アメリカによる軍事侵攻という名の主権侵害の例はそれこそ枚挙にいとまがありません。
 ニュースなどではアゾフ大隊のことを「先回り的」にとりあげ、ロシアはこうした些細な部分をあげつらってウクライナがナチ化されているなどとでっちあげる材料にするかもしれない…などといっていましたが、そもそも政権発足時の高官にファシストがいるじゃんというハナシです。些末でもイレギュラーでもなんでもない、がっつりと中枢に。

大前研一氏の週刊ポストの連載によれば2019年に就任したゼレンスキー大統領は「ミンスク合意」を履行しなかったばかりか、ドンバス地域への挑発を続け、さらには30%にまで下がってしまった支持率の挽回策としてEUやNATOへの加盟を画策し、その結果、プーチン大統領の堪忍袋の緒が切れたと指摘しています。戦争のトリガーを引いたのは他でもないゼレンスキー大統領自身なのだと大前氏はいうのです。モンスター親が売ったケンカを子供たちが戦わされているような構図でしょうか。 
 そしてバイデン大統領には森友疑惑ならぬ、ウクライナ疑惑がありいまだ真相は闇の中です。
 先述のクリントン氏のNATO拡張政策もアメリカや欧州の未来図の選択肢のひとつとして決断したというよりは東欧系移民の票欲しさだと舛添氏が先月の「朝生」で説明していました。(冷戦の勝者による敗者への配慮を欠いた驕りの結果がウクライナなのだとも。)
 クリントン氏といえば「不適切な関係」スキャンダルの騒ぎの際には世間の注意をそらすために「空爆」をしたなどといわれてる人です。
 イメージとのギャップといえばノーベル平和賞のオバマ大統領はベトナム戦争以後もっとも空爆をした大統領だそうです。
 みなさんスルーしてるかもしれませんが中東や中南米でも人はたくさん死んでるし湾岸戦争にかぎっていうならアメリカにわたした90億ドルの日本の税金は爆弾となってイラクの民間人を殺してるかもしれないのです。
 ゼレンスキー大統領は各国にウクライナ復興のための「戦争税」をと呼びかけていましたが、これにはうーんとなっしまいます。
 ただ実際にたくさんの市民が亡くなったり酷い目にあったりしているので、この状況で理屈っぽいつっこみはなかなかしずらい状況ではあります。これこそ「人の盾」です。
 しかしながらウクライナ国民や全世界が三人+一人の政治家の保身のために窮地に陥っているとするなら少なくとも真実は皆が知るべきではないでしょうか。

追記:
地政学的な視点で思い出したのですが、3月18日にNHK Eテレで「世界10代ウクライナ通信」という番組がありました。日本を含む世界各国の10代がリモートで討論…というよりは置き手紙的に動画をあげてウクライナ危機について意見を交換し合う企画だったのですが、なかでも台湾の17歳ステイシーちゃんはともすれば台湾もウクライナのようになってしまいかねないという緊迫した状況にもかかわらず冷静な分析をしていたのです。
 結果としては皆と同じように「プーチンno、戦争no」なのですが、地政学的観点でいえばプーチンがビビるのもムリはないよねというような現状分析も淡々と語っていたのです。日本の無責任なコメンテーターにも見習ってほしいものです。これ是非再放送してほしいです。え?もうしたのかな?

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