見出し画像

連載 #夢で見た中二物語 66.5

※こちらの物語は、先日投稿した「連載 #夢で見た中二物語 66」の続きを読みたいというご要望がありましたので書かせていただいたお話です。


故に「実際に夢で見たもの」ではなく「夢で見たものの続きを書いた創作物」となりますので、ご理解いただけますと幸いです。


☆☆☆


怪しいキツネの洋館を歩き回っていた少年は、一番奥まった場所にある物々しい雰囲気の扉の前に辿り着いた。


少年がその部屋に入ると、部屋の中央に巨大な穴が空いていて、そこを覗き込むとどこまでも続きそうな真っ暗な深淵があった。

そのあまりの暗さに怖気づいて後ずさりしかけた少年だったが、入ってきた扉の向こう側からこちらに向かってくるような足音が聞こえてきた。


この穴に入る以外に逃げ道がないことを悟った少年は、意を決して深淵に飛び込んだ。



・・・少年が目を覚ますと、見覚えのある顔が複数、少年を心配そうに覗き込んでいた。


その事に少年が驚いて飛び起きると、周りにいた船工場の大人達がことのあらましを教えてくれた。


少年は船工場の階段を登っている時に足を滑らせ、落ちる時に頭を打ったらしい。


それからなかなか目を覚まさないので皆で心配していたが、ようやく気がついたようで安心したとの事。


その事実に少年は唖然とした後、突然笑いだした。


今までの出来事は全て自分の夢で起きた絵空事で、少年は相変わらず温かい世界の中で生きている。


その事に、心から安心したから。



・・・


・・・・・・・・・・


真夜中であるにも関わらず、とあるビルの一角に明かりの点ったままの空間があった。


ここはゲーム制作のベンチャー企業、つい最近新しく始動し始めたばかりの新参者達が集まって出来た会社だ。


社長はゲーム作りの初心者も初心者、元々プログラミングなんて名前くらいしか知らなかった。


それでもまぁ少しは勉強してきたのか、最近はそれなりに形が構築されつつあった。


だがプログラミング関係の専門学校を出ている俺からしたら、未だに始まりの段階でつまづきまくっている初心者だ。


俺は社長の作ったゲームのデバッグ作業を主に任されているのだが、何しろ修正しないといけない大きなバグが多すぎる。


仕方ないといえば仕方ないのだが、あまりにも酷すぎる気がするのだ。


これも元々友人であったこの社長と共に夢を語り合いすぎて、今まである程度安定した会社にいた俺が「自分達なら独立してもやっていける」と勘違いしてしまったバチなのだろうか?


まさか、ゲーム制作に関して何の知識もない社長自身が「自分が主体となってゲームを作りたい」と言い出すとは。



・・・結果的に、初めて作ろうとしたゲームは完全に挫折してしまった。


あまりにもバグが多すぎて、修正するにも初めから作り直すにも、ほんの数人しかいない社員が疲れ切ってしまったからだ。


先立つものは多くはないし、何だかんだ言いつつも無用な雑用に追われるばかりで時間もない。


何よりも一番ゲーム制作に関わらないといけないはずの俺が、例のゲーム制作に関して社長と大喧嘩になってしまい、しばらく仲違いしてしまったのだ。


社員達はどっちつかずの状態で、会社自体が既に危機的状況となってしまった。


だからゲームの主人公達には申し訳ないが、一度この『船工場見習いの少年と謎の洋館』というタイトルのゲームはお蔵入りとさせていただいたのだ。



・・・


あれから、十年ほど経った。


久しぶりに開いたPCに、当時のゲームのデータが残っていた事に驚いた。


もう古くて使わないPCなので、処分ついでに何かめぼしいデータでも残っていないかと思い付いただけの事だった。


もう例の会社は存在してないし、当時の社長も別の業種に鞍替えして久しい。


あの頃共に夢を見ていた社員達も、今や何をしているのかサッパリ分からない。


まぁ、その辺りは特に興味があるわけでもないのだが。


俺はといえば、一度は退社したはずの会社に出戻ってプログラミングの仕事を続けていた。


やはり、俺にはこの辺りの仕事が合うようだ。


まぁ、大変だったあの頃の経験も悪くはなかったのだろう。


一から始めるというのはどういう事なのか、ある程度は知る事が出来たのだから。



例のゲーム画面を開いてみると、あの頃からいじっていないそれが、如何にメチャクチャに作られたものなのか改めて理解出来た。


それは知識不足の為か経験不足の為か、その両方かそれ以外の要因か。


当時は斬新だった安価なソフトで作られたゲームのプログラムのソースコードはお世辞にも綺麗とは言えないし、画像データも大きすぎて画面に収まりきっていない。


キャラクターの動きはループして最終的に画面外に消えたりするし、ストーリーで重要な扉を開ける鍵は、どんなに試行錯誤しても取れないような場所に配置されてしまっている。


・・・さすがに、このまま世に出してしまわずに正解だったなと思う・・・。


しかし画面内でキャラクター達が動いているのを見ると、何とも言えないような感情が湧き上がってくる。


ただのゲームとはいえども、かつては人々を楽しませたいと本気で考えながら作り始めた作品だった。


結局は挫折してしまったとはいえ、このゲームのキャラクター達も世に出て活躍したかったのではないだろうか。


ただの画面の中だけの存在とは言え、今更ながら妙に感情移入してしまう。


「・・・自己満足でもいいから、ちょっとずつでも修正しながら世に出してみるかぁ・・・」


そんなことを呟きながら、ゲームの中の主人公を動かしてみた。

どことなく、主人公は嬉しそうにしている。


・・・それにしてもこの主人公、もっと幼い子供だったと思うのだが・・・。


☆☆☆



最後の文章は、別にホラー的な意味ではありません(笑)


ただPC内で放ったらかされている間に、元々意思をもっていたらしきゲームの主人公(例の少年)が成長していた、みたいなイメージです。


多分、誰もプレイしていないのにゲーム内では時間が経っていて、主人公はゲームストーリーを繰り返しながら徐々に成長していったのではないかと思います。



この物語にはゲーム世界と現実世界が存在しますが、それぞれが連動しているような設定です。


簡単に言うと、


・ゲーム世界のバグ回避少年(主人公)=現実世界のデバッカー君(デバッグ作業をする人)

・ゲーム世界の洋館の主(キツネ)=ゲーム制作初心者の社長(結果的にゲーム世界にバグをばら撒くこととなった人)

・洋館のメイドや執事(ウサギ達)=ゲーム制作会社の社員


といったところでしょうか。


(デバッグ作業とは、プログラム内のバグを見つけて修正する作業の事です。


 『船工場見習いの少年と謎の洋館』と銘打たれたゲームはバグが多すぎた為、世界が崩壊しかけていたりストーリーがループしたりしていたワケですね。


 ストーリーの内容はともかく、このバグ的な事象は私自身のゲーム制作経験と被る部分が多いです(笑))


※ドット絵の画像は、「ウルフRPGエディター」というゲーム制作ソフトのサンプル素材を元に作ったものです。



ここからは余談ですが、ゲームといえば子供向けの娯楽と考えられている側面が強いかと思います。


ただゲームの黎明期から現在に至るまで、ストーリーやキャラクター、デザインや音楽やシステムそのものに深く注目してみると、眼を見張るような素晴らしい作品も数多く存在していて魅了される事が多々あります。


そういった意味ではゲーム制作なども含め、今まで自分が知らなかった世界や興味のなかった分野に足を踏み入れてみるのも良いのかもしれません。


それが何かの良いキッカケとなったり、平凡だと感じている日々の思いがけない刺激になるかもと・・・。


(自分は何かのプロでも批評家でもありませんので、あくまでもそこら辺にいる一個人の感想です。)



最後にもう一つ余談ですが、今回のように自分が見た夢から創作で続きを書くといった事を「夢で見た中二物語」では敢えて避けていました(若干の修正や加筆は行なっています)。


ただ以前連載していた「宿命物語」や次回連載予定の物語は、子供の頃に見た「夢で見た中二物語」を拡張させまくった集大成みたいなお話です。


ただこれらの物語辺りになるとキャラクター達との付き合いが長くなりすぎて、もはや創作というよりはキャラクター達が自分の意思で進む方向を決めてしまうようになっています(言わばキャラクター達に丸投げ)。


なので私自身の創作と言っていいのか微妙になってしまった為、自分はあくまでも彼らを見守っているだけといった立ち位置にいるつもりです(勿論リアルな調べ物などは私がしていますが)。


今回書かせていただいた夢の続きの創作に関しましても、今はこういった結末に至りついただけで、また時が経てば別の結末に辿り着く話になるかもしれません。


ですが、いずれにしても私自身の脳の働きによるものには違いない(超常現象じゃない事は確か)ので、今回の物語の続きを書くキッカケとなったコメントをくださった方に改めて感謝申し上げます。


本当に、ありがとうございました m(_ _)m


これからも、楽しみにしていただけると幸いです。



いつも読んでくださっている皆様、今回もご愛読いただき誠にありがとうございました (^^)






いいなと思ったら応援しよう!

東南浅葱@夢と絵と物語に関する記録
中高生の頃より現在のような夢を元にした物語(文と絵)を書き続け、仕事をしながら合間に活動をしております。 私の夢物語を読んでくださった貴方にとって、何かの良いキッカケになれましたら幸いです。