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ムーミンの本に関すること

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ムーミンの本について書いた記事
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#読書

『たのしいムーミン一家』の沼にはまる

今週は『たのしいムーミン一家』を読みに読んだ一週間でした。あらためてじっくり読んでみて、今までいかにあっさり読んでいたか気づかされました。 前後の作品ともっとも関係を持った作品であるがゆえに、少し矛盾もありました。 モランについて、「ムーミン谷であの女のすがたを見かけたのは、これが最後でした」と書かれているけど、『ムーミン谷の冬』でもムーミン谷にくるよなあ、とか。(『ムーミンパパ海へいく』では島で会う) ムーミンパパの自伝が出来上がっているけど、『ムーミンパパの思い出』

最近感じたこととトーベ・ヤンソンの言葉たち:なくしたものはもう一度、よい出来事は何度でも

20代の頃は怒りっぽい性格でしたが、最近は負の感情を不要に抱きたくない、と思っています。もちろん、時には怒ることも必要ですが、それは本当に必要な時、「ここぞ」という時だけにしたいです。 そんなことを考えていたら、トーベ・ヤンソンの短編「嵐」(1971年)を思い出しました。 夜中の嵐を1人部屋で過ごす女性を描く、非常に短い作品です。作品の終盤で、嵐が吹き込んでめちゃくちゃになった部屋で誰かと電話で話します。描かれる視点は主人公側のみで、電話の相手が話した内容はわからない書き

【原書講読感想】『ムーミン谷の仲間たち』「目に見えない子(Berättelsen om det osynliga barnet)」②:「いつも希望を胸に生きるって、いいことよね」(リトルミイ)

「目に見えない子」原書講読の感想2回目です。今回はミイの台詞について書きます。 ↓原書講読の感想1回目はこちら(足と鼻の表現について書いています) 書く予定を立ててはいなかったのですが、Instagramでムーミンカフェの投稿を見ていた時に、「目に見えない子」の中のミイの台詞を見つけて思い立ちました。「いつも希望を胸に生きるって、いいことよね」という台詞はすごく見いっぽい!と思います。 日本語訳の変化と英語訳のこと※ムーミンカフェの写真での記載は「~いいことよ」ですが、

【原書講読感想】『ムーミン谷の仲間たち』「目に見えない子(Berättelsen om det osynliga barnet)」①

半年くらい前の話になりますが、スウェーデン語のグループレッスンで私ともう一人の受講者の方がそれぞれ読みたいスウェーデン語の本を少しずつ講読することになりました。 一緒にレッスンを受けている方は、アストリッド・リンドグレーンの『やかまし村の春・夏・秋・冬(Mer Om Oss Barn I Bullerbyn)』から、「やかまし村のクリスマス(Hur Vi Firar Jul Bullerbyn)」を選びました。冬に読み始めたので、私もクリスマスの準備をしている気持ちになりま

ムーミンが私を魅了し続けてやまないことに、なんだか悩んでしまっている。

先週、「トーベ・ヤンソンがムーミンだけじゃないのはわかっているけど、卒論も修論もムーミンになった話」と題しての研究テーマがムーミンであり続けている経緯を振り返りました。 今週も、相変わらずトーベ・ヤンソンの本と私との関係をぐるぐる考える時間を過ごしていました。 以前、「ムーミンを研究対象に始めたきっかけ」を書きました。『ムーミン谷の仲間たち』を読み、私にとっては片手間で向きあえるような作品群ではないことに気が付いて、卒論で扱うことにしました。 そして先週書いた通り、大学

ムーミン本読み方のすすめ⑦『ムーミン谷の冬』

1. ページ数(講談社文庫の新装版のページ)や章の数や構成の特徴第1~6章、214ページ。 主人公はムーミントロールですが、第5章では犬のめそめそ・はい虫のサロメちゃんの視点で進行するところがあります。 2. 主な登場人物ムーミントロール、ちびのミイ、おしゃまさん(トゥーティッキ)、ご先祖さま、めそめそ、ヘムレンさん、サロメちゃん(ちょこちょこばしりのサロメちゃん) 3. 内容の簡単な紹介(ネタバレに注意しながら)まだ春は遠い冬の夜、冬眠中のムーミントロールは不意に「目を

ムーミン短編「もみの木」に救われたこと:"考えさえ正しけりゃ、それはあってもなくてもたいしてちがいはない"

新年あけましておめでとうございます。2021年1回目の投稿です。今年も週一の投稿を目標に、ムーミンに関することやムーミンに関連して考えたことなどを書く予定です。 私、冬の行事が苦手です私はクリスマスとお正月が苦手です。クリスマスの飾りをしたり、お節を準備したりすることがとても負担に感じてしまって、年々やらなくなってしまいました。今年は伊達巻を買ったくらいでしょうか。こういう性格なのだと自分を少し受け入れてもいますが、「他の人と同じようにできない自分」を情けなく思う気持ちも少

ムーミン本読み方のすすめ⑥こう読むべしということはない(ひとやすみ)

ムーミンの本をおすすめする投稿をこれまでいくつか書きました。ムーミンの本について書いた投稿は、マガジンにまとめています。 本を勧めるときは相手がどう感じるか知りたい!当然といえば当然ですが、私が書いたことがムーミンの面白さのすべてということではありません。 本を勧めるってどういうことなんだろう?とふと疑問に思ったので、考えを少しまとめてみたいと思います。結論は見出しのとおり、「本を勧めるときは相手がどう感じるか知りたい!」ということです。 経験上、漫画を勧めること・勧め

ムーミン本読み方のすすめ⑤『ムーミン谷の仲間たち』

読み方のすすめ、ようやく5回目です。今回は、7作目『ムーミン谷の仲間たち』をおすすめします。 1. ページ数(講談社文庫の新装版のページ)や章の数や構成の特徴270ページ(9つの作品からなる短編集で、1話につき30ページ弱) 9つの短編は、下記のとおりです。 春のしらべ ぞっとする話 この世のおわりにおびえるフィリフヨンカ 世界でいちばんさいごの竜 しずかなのがすきなヘムレンさん 目に見えない子 ニョロニョロのひみつ スニフとセドリックのこと もみの木 各作品はそんな

ムーミン本読み方のすすめ④『ムーミン谷の十一月』

ムーミン本読み方のすすめ。前回からまた時間が経ってしまいました(汗。 今回は『ムーミン谷の十一月』をおすすめします!!1970年に刊行された、ムーミンの小説の9作目です。小説では最後の作品となります。 1. ページ数(講談社文庫の新装版のページ)や章の数や構成の特徴307ページ(長め) 第1章~第21章(ひとつひとつの章は短い。場面や章によって1~3人がピックアップされ、登場人物の組み合わせによって会話の内容や雰囲気が異なる) 冒頭にムーミン谷の地図あり(フィリフヨン

ミムラねえさんの赤いマグカップに書かれた文のこと

今回は、この前紹介したミムラねえさんのマグに書かれている英文について少し書きたいと思います! 絵は『ムーミン谷の夏まつり』のおなじみの挿絵ですが、後ろに書かれている英語は『ムーミン谷の十一月』のミムラねえさんの台詞の英訳です。 『ムーミン谷の十一月』のどの台詞?You seem to be yourself again. Actually, you’re nicer that way. グッズを見たとき、『ムーミン谷の十一月』っぽい予感はしましたが確信が持てなかったので

ムーミン本 読み方のすすめ③『ムーミン谷の彗星』

ムーミンの本を初めて読む人に向けておすすめする文章を作品ごとに書いてみようを決めてからしばらくたってしまいましたが、前回は項目を決めました。 今回は、9冊あるムーミンの本(文章で書かれているもの)のうち、2作目の『ムーミン谷の彗星』(1946)の紹介と個人的なおすすめポイントを書きます。 1. ページ数(講談社文庫の新装版参照)、章の数や構成の特徴 240ページ(短くはないが、長すぎもしない分量) 第1章~第10章 巻頭にムーミン谷の地図あり 2. 主な登場人物 ムーミ

ムーミンママのエプロンについて

ムーミンママといえば、赤白ストライプのエプロンと黒いハンドバッグが思い浮かびます。見慣れてしまって何とも思っていませんでしたが、家事をするときのエプロンを身に着け、お出かけ用のバッグを持っているのは変ではないかと友人から指摘を受け、率直に、確かに変だと思いました。今回はムーミンママがエプロンを付け始めた経緯をまとめてみることにします。 最初はバッグだけ ムーミントロール、ムーミンママ、ムーミンパパがみんな何も身に着けたり持ったりしていなければ、区別がつきません。アニメなどで

ムーミン本 読み方のすすめ 今後の書き方の話(おまけ:藤咲彩音さんのムーミン75thコメントについて)

各ムーミンの本をおすすめする文章を今後書いていく予定ですが、項目をまず決めることにしました。 1. ページ数(講談社文庫の新装版のページ)や章の数や構成の特徴 2. 主な登場人物 3. 内容の簡単な紹介(ネタバレに注意しながら) 4. 挿絵の雰囲気(作品によって違います) 5. 小林の「ここが好き」 6. 小林は「こんな時に読みたくなる」 これで書いてみます!毎日を過ごしながら本を読み返して文章をサクサク書き進めることはできなさそうです。しかし、毎週記事を上げる目標は引き