ムーミン本読み方のすすめ⑥こう読むべしということはない(ひとやすみ)
ムーミンの本をおすすめする投稿をこれまでいくつか書きました。ムーミンの本について書いた投稿は、マガジンにまとめています。
本を勧めるときは相手がどう感じるか知りたい!
当然といえば当然ですが、私が書いたことがムーミンの面白さのすべてということではありません。
本を勧めるってどういうことなんだろう?とふと疑問に思ったので、考えを少しまとめてみたいと思います。結論は見出しのとおり、「本を勧めるときは相手がどう感じるか知りたい!」ということです。
経験上、漫画を勧めること・勧められることがいままでくさんあったので(最近は人にあまり会わないからか、めっきりない…)、漫画で少し思い出してみると、勧めるときも勧められるときも、「ここをわかってほしい」というような理解や共感を期待することも期待されることもあまりないように思います。結果的に同じところで感動したという話をすることはありますが。
自分が面白いと思った本を勧める時、自分が感じたことを同じように感じて欲しいというよりは、相手なら作品から何を感じ取るのか知ることの方が楽しみで、私が気づかなかったことを教えてくれたらもっと嬉しいというような気持ちで勧めているような気がします。私の研究に対する姿勢でも同じで、私の読み方が正解と言いたいのではないですし、先行研究を読んで私になかった視点を知るととてもわくわくします。
私のおすすめ文章を読んでくださっている数名の方には(ありがとうございます)、私の書く文章がムーミンの本を手に取る、あるいは再読するとっかかりとか、踏み台みたいなものになればいいなと思っています。
私の好きなムーミンの感想
月刊書評誌『子どもの本棚』の2015年1月号はトーベ・ヤンソンの特集でした。ここに、「ムーミンと出会った中学生たち」という記事を学校司書の中村由美子さんがお書きになっています。この中で、中学2年生の『ムーミン谷の十一月』への感想がとても印象的でしたので引用し紹介します。
「おれさあ、掃除のできなくなったフィリフヨンカの話が(心に)残ってるんだよね」
(中略)
「いろいろ(登場人物が)いる中で、自分が仕切りたいとか、自分が一番だ、って思ってて、そんな所が妙にリアルなんだよね」
(中略)
「あの話、あんまり面白い、って思わなかったのに、やけに後に残ってるんだよな」
中村由美子「ムーミンと出会った中学生たち」『子どもの本棚』第44巻第1号、子どもの本研究会、2015、p. 20
面白くはなかったけど心に残っているという率直さが好きです。きっと率直な感想を引き出せる素敵な司書さんなんだろうと思いました。
本を読んだ時、好きにならなくて印象的なのもいいし、全体の雰囲気は好きでも印象的な場面がとりわけなくてもいいのではないかと、頭がほぐれた記事でした。
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