「プログラマーアイドル」に何を求めたか?
2020 年中頃、「プログラマーアイドル」という造語がツイッター界隈で話題になったのだが、私はそれを知らなかった。「世の中にプログラミングを拡散するアイドルを誕生させる」という話らしい。歌って踊るアイドルでありながら、玄人プログラマーでもある稀有な存在。当時の反応は様々で、賛否両論があり、肯定的に応援されたり、否定的に拒絶されたりしたようだ。
「プログラマーアイドル」という造語を目にして、先ず私の頭に浮かんだのは、『ABEMA Prime』にも出演している池澤あやか氏だ。本人も「はい、わたしが今流行のプログラマーアイドルです(?)」と反応していた。500 件を超える”いいね”、50 件を超えるリツイートという反響だ。
「現役のプログラマーをアイドル化」して活動する目的を考えてみると、「IT 業界・現場の実情認知」や「プログラミング講座の開催」「勉強会への参加・周知」など、関連する仕事は多そうだ。しかし、それらはもう池澤あやか氏を含め、先駆者がいる。歌って踊る要素がないだけで。
いけあや氏の「なお、歌って踊れません」というツイートにどんな感情が込められているのかは、赤の他人の私には分からないが、玄人のプログラマーが「プログラミングを拡散する」ことを目的とした場合に「歌って踊る」スキルを新たに獲得する意義・必要性に対して、疑問を抱いた人も少なくないのではないだろうか。「アイドル性」は備えたら良い方向へ進むかもしれないが、「歌って踊るガチのアイドル化」がどんなメリットや効果を生むのだろうか、と。
そう、例えば「グラビアアイドル」は「グラビア」を武器にしていて歌って踊るアイドルではないように、「プログラマーアイドル」も「プログラミング」を武器にするだけで歌って踊るアイドルになる必要がないという着地にならないだろうか。やはり目指す先がいけあや氏ということになる。
断っておくが、私は否定をしたい訳ではない。「プログラマーアイドル」を「この方向は割と需要がありブルーオーシャンだと感じてた」と捉えた人もいる。当時の話題には乗り遅れたが、今更(二年半経過)ながら、私も肯定したい派だ。
しかし、私が「プログラマーアイドル」に求めるなら、いけあや氏の”逆”だ。私なら、「プログラミング未経験」の「現役アイドル」が「玄人プログラマーに育っていく」様を見たい。プログラマーがアイドルになるのではなく、アイドルがプログラマーになる、その過程がコンテンツだ。
最近、アイドルグループ『日向坂46』のガチファンから、こんな話を聞いた。
歌って踊るアイドルとは無関係の企画にも全力で取り組んでいて感動した
長年の目標であった東京ドーム公演を達成して一緒に泣いた
メンバーの趣味がいつの間にか自分の趣味になっていた
「プログラミング未経験」という素人と同じスタート地点、アイドルの成長を楽しみ、応援し、同時に自分(ファン)もプログラミングに興味を持つようになる、という親和性、まさに「プログラミングを拡散する」手段のひとつとして、「アイドル」は非常に適していると思えた。
いけあや氏タイプのアイドルを量産する方向も否定はしないが、「プログラミングを拡散する」には方向が違う気がする。いけあや氏は素人にとって、遠い存在と言える。いけあや氏の話は素人には理解できず、玄人には面白いからだ。「プログラミングを拡散する」には子供もターゲットにして素人を幅広く取り込んでいく必要があるだろう。その入口が「アイドル」と同じ目線なら、楽しそうだと前向きに期待できないだろうか。
「プログラマーアイドル」という造語に対して、色々な意見があり、批判があり、様々な期待もあった。
二年半が経過して、求められたものを、「プログラマーアイドル」たちは、応えられたのだろうか。
「彼女たちからプログラミングの勉強をしている様子が微塵も見られない」「プログラミングを披露するのが稀なプログラマーアイドル」と、愛(?)のあるイジりを受けながら、「プログラマーアイドル」は今後も関西では継続するそうだ。
解散した関東の想いも背負った「プログラマーアイドル」に、改めて、今、何を求める?
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