マガジンのカバー画像

書評集

26
運営しているクリエイター

#cakesコンテスト

書評・エンターテインメントという薬

書評・エンターテインメントという薬

 シェイクスピアの喜劇『夏の夜の夢』の終幕、悪戯好きの妖精パックが観客に告げる口上は有名である。

われら役者は影法師、皆様がたのお目がもし
お気に召さずばただ夢を、見たと思ってお許しを。
つたない芝居でありますが、夢にすぎないものですが、
皆様がたが大目に見、おとがめなくば身のはげみ。
私パックは正直者、さいわいにして皆様の
お叱りなくば私もはげみますゆえ、
皆様も見ていてやってくださいまし。

もっとみる

書評・知ろうとすること。

 浅草観音に詣でた八五郎は、道端に人だかりを見つける。行き倒れの死体が見つかったというのだが、これが同じ長屋の熊五郎そっくり。
「こりゃ熊五郎に違いねぇ。そういやこいつ、今朝具合が悪いと抜かしてやがった」
 騒ぐ八五郎に役人が言う。
「こいつが死んだのは昨晩だ。今朝会える筈がなかろう」
「そんなら今、ここで死んでる熊五郎を連れて来やす」
 と長屋に飛んで帰り、熊五郎に言う。
「今し方、浅草の観音さ

もっとみる