いつもと違う方法で景色を見てみよう
視覚障害を理解するために、視力、色覚とお話してきて今日は「視野」についてです。
なお昨日と一昨日の冒頭にも書き記しました通り、私は医学の専門家ではございません。正確さに欠いている箇所がありましたら、ご指摘よろしくお願いいたします。
また医療関係の質問等にはお答えできませんので、例えば眼病等に関するご質問等は必ず、眼科医など専門家のかたの意見を伺ってくださいますようお願いいたします。
視野と視覚障害
ものが見える範囲、「視野」について。
視覚障害の中には、ロービジョンのかたが多く含まれており視力の弱さや視野の狭さが障害というかたもおられる。なお眼鏡などを使っても、一定以上の視力が出なかったり、視野が狭いのが視覚障害だ。
例えば次の画像のように、左上の通常の風景に対して、右上のようにぼやけている、左下のように一部しか見えていない、右下のように一部が見えていないといったケースがある。
視力0.02ぐらいだと、手探りをしない歩行や行動ができるので家庭内の移動や、家族と交流する家庭生活は何とかなる。しかし、1m程先に人物がいるのは判っても、こまかな表情はつかみ取れない。
視野が10度ぐらいだと、1m程先にいる人物の顔は判ってもその人物の動作や周囲の風景は見えていない。逆に中心部に暗点がある中心暗点もある。なお、暗点とは視野の中に見えない部分があること。
視野が10度の風景を確認する方法として、使用済みのテレホンカードなどプリペイドカードの穴を片眼でのぞいて1m先を見た時の景色と言われていたのだが最近プリペイドカード自体を見る機会が減っているので、紙に直径1mm程度の針穴を開けて覗いてみて体感して欲しい。
視野の測定方法
視野の測定方法にはゴールドマン視野計や自動視野計が使われる。身体障害者認定にもこの方式が用いられている。
先ほど視野が10度の例をあげたが、これは「身体障害者福祉法」に基づく身体障害者手帳の障害程度等級2級、3級、4級で視野が10度以内という記述があることから取り上げた。
(前後するが視覚障害の等級は、視機能のうちの矯正視力、視野の程度により1級から6級に区分されている。)
認定に係る基準は都道府県によるところがあるそうだが、参考までにPDFによる東京都身体障害認定基準視覚障害の表へのリンクをご紹介する。
ロービジョンの症状は人それぞれ
ロービジョンには視野以外にもまぶしさに対するものや、薄暗いところで見えにくいといったいわゆる夜盲もある。またパソコンやタブレットなどで情報を得るときには、モニターに顔を近づけたり、あるいは文字を拡大・縮小して読みやすい大きさに変えるなどしている。
また、背景色を変えて自分が見えやすいように調整しているかたもいる。
一言で視覚障害といっても、症状は人それぞれだ。1つの症状だけではなく、いくつか組み合わさっている場合も多い。
自分が一番使いやすいよう、見えやすいようにしている人たちが困るのは、ウェブサイトによっては文字の大きさ、あるいは背景色や文字色を固定化し調整が効かないものがある時だ。線の細いフォントが固定で使用されていて変更ができないものもある。
デザインを優先するあまり「困っている人や不便さを感じている人」がいることを見過ごすことが無いよう、情報を提供する側に立った時は気を付けていきたい。
参考:
WCAG 2.0 達成方法集「G148: 背景色及びテキストの色を指定せず、その初期設定を変更するウェブコンテンツ技術の機能を使用しない」
なお、ウェブサイトによっては
・文字の大きさの調整ボタン
・数種類の背景色とテキスト色の組み合わせ切り替えボタン
・音声読み上げができる操作ボタン
といったものがある場合があるが、あれは不要な機能と私は考えている。
こういった機能を提供しているウェブサイトを持っているのは特に自治体が多いが、そもそもそこのウェブサイトに来るためには音声読み上げ機能を使用したり、文字色や大きさを自分用に変更してたどり着いてきているはず。一時の流行りで調達しその後継続しっぱなし、或いは納入事業者の勧めで機能を付けたりしているケースもあるようだが、むしろ閲覧者にとって使い勝手が良いようにカスタマイズできる、自由度の高い環境を用意して迎えることが重要である。
最後に
いつもの風景を違う視点でみてみよう。前述した針穴からご自分のウェブページを見てみるのもいい。タブレットやスマートフォンのアプリで色覚障害の見え方を体験できるように、そこに何かの気づきがあるかも知れない。
もちろん、ほんの数秒見たからといって決して全てが理解できるわけではない。私自身わかっていない部分はかなり多い。ただ、もし少しでも体感できれば例えば、パラリンピック競技をみた時あるいはマラソン大会で視覚障害のランナーを見かけたとき、街中やご自分の職場で視覚障害があるかたと接する機会を得た時の糧になると思う。
偶々、昨日興味深いツイート(仏教で「識」と呼ぶこと)を拝見したので貼っておく。もともとは障害等といった話と異なる話題から関連して呟かれたものだが、自分も時として自分が勝手に思っている"常識"とやらに捕らわれるので一歩引いて省みたいと感じたので。
ここまで、ウェブアクセシビリティについて組織内で講師を務めている中で調べた情報から抜粋して、少し紹介させて頂きました。3日間にわたり「視覚障害とは」にお付き合いありがとうございました。
次回は視覚障害のお話から、マイノリティについて考えます。
参考1: 視力の話
参考2: 色覚の話
参考3:国立障害者リハビリテーションセンター
視覚障害者の理解のために
(了)
ヘッダー写真 撮影地 ニュージーランド 南島ウエストコ―スト ©moya
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