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アカシック・カフェ ―全知と珈琲の番人―
「もうアカっちゃいなよー!」
「でも、あたし的にはエージ信じたいし」
常連の女子高生のいつもの恋バナ。しかし、どうも雲行きが怪しい。シュウカがアカシックレコードを提案したのだ。一方ハヅホは曖昧な返事。そりゃそうだ。『世界の真実』によって浮気が確定したら目も当てられない。
十数年前、人類はついにアカシックレコードに接続した。が、蒸気機関やインターネットのように社会が激変することはなかった。一般市
アカシック・カフェ【二つの扉】
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その瞬間、表情は、はっきりと変わった。あからさまに変わった。ここまで変われば、どこまで朴念仁だろうと一目でわかるだろう……。表情を作るのが苦手な俺にとっては、いっそ羨ましいくらいにはっきりと、彼は落胆した。
「……あくまで過去、ですか」
「……えぇ。過去の真実。未来予知はできません」
あまりの顔色の変わり具合に、思わず説明を止めて数秒。他に誰もいない店内に、ぽ
アカシック・カフェ【3-1 アイスコーヒー・リーディング】
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よく晴れた、土曜の昼下がりだった。
「明窓館の…高等部、新入生か」
「え?」
「あっ」
……やらかした。普段からなるべく口には気を付けているんだが、今日はお客が少なくて気が緩んでいた。
注文を取りに来た俺に、口を開く前に素性を言い当てられた少年は、目を丸くし、そしてすぐ輝かせる。あーあー、嫌な予感がする。ご無沙汰の展開が来るぞ。
「……まさか、アカシッ
【アカシック・カフェ 3.5】ゆるり香れり、赤羽の鶴。
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午後三時。お客のいなくなった店内には、常連女子高生三人組だけだ。
バックヤードで洗い物を片付け終わったところで、ハヅホがいかにも「やらかした」雰囲気で呻いた。大人びた彼女のこういう「失敗」は珍しいな。
「永愛ちゃん、ヘアゴムとかシュシュある?」
「あ、ごめんごめん。ちょっと持ってくるね」
「私の使いなよ、ハヅ」
なるほど、厨房に入るには髪を纏めるべき、と
アカシック・カフェ【4 現実と幻想のクリスマス・アカシックス】
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からんがらんからんがらん。いつもよりも多い、いや手加減なく言えばうるさいドアベルの音が響き、新たなお客だ。
12月初頭から付けっぱなしにしていた特別なベルは、景気がいいからと聖夜が終わってもそのままにしていたのだが、流石に年を越す前には外さないとだよな……。門松とか鏡餅の置物も出さないと。
「いらっしゃい……って、なんだお前らか」
「あれ、二人ともいらっし