亀谷航平(感染症医/旅/世界遺産マイスター/ダイブマスター)

沖縄県(本島/石垣)→ 東京都で感染症内科医として奮闘中。患者さんの人となりや、社会に…

亀谷航平(感染症医/旅/世界遺産マイスター/ダイブマスター)

沖縄県(本島/石垣)→ 東京都で感染症内科医として奮闘中。患者さんの人となりや、社会における立ち位置とじっくり向き合い、問題を解決していくことが生き甲斐です。バックパッカーとして、今までに49カ国を訪問しました。国際保健、旅、海、デザイン記事に反応します。うどんは冷やに限る。

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世界遺産検定マイスター解答例(第1,2問)

2021年末に世界遺産検定マイスター試験を受験し、一発で合格することができました。自分が合格したタイミングでは、マイスター認定者は日本全国で550人くらいしかいないようで、持っているとかなり話のネタにはなります。 マイスター試験は全問記述かつ模範解答が存在しないというハードな試験です。 その中でも、第1,2問は時間をかければ対策が可能ですが、自分で解答集を作らないといけないという苦行が待っています。このリストで、できるだけその手間を省いていただきたい。そんな願いを込めて今回

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    • 慰霊の日2023〜AI世代は「戦争」をどう伝承するか

      今日は慰霊の日。78年前の今日、沖縄で行われた日本唯一の地上戦が集結した。毎年6月23日は、沖縄の公休日。その日には、誰もが歴史を振り返り、自らのルーツの尊さを再確認するという。 沖縄には自分は5年間という短い間だけしかお世話になっていない。ただその5年で、あの生ぬるくて気高い空気を、両の肺いっぱいに吸い込むことができた。 沖縄での研修はキツかったが、毎年この日は業務とは別に、病棟のベッドで微睡む大先輩たちに戦争のお話を聞いていた。もちろん、ある程度を相手を選んでいるつも

      • 青春の叫びが地域を動かす〜Z世代の叫び、ふたたび。

        2022年12月。エイサーの街・沖縄県うるま市。「季節が2つしかない」といわれるこの島にも、ようやく冬が訪れようとしていた。 前回のイベント(リンク有)からはや4ヶ月。沖縄県の「Z世代」が、文字通り1から100までイベントを自分たちの手で作り上げる高校生団体、「Manabi-ya(学び夜)」が再始動した。第2弾は学び夜フェス、略して「まなふぇす」と銘打って、地域の活性化にコンセプトを絞った音楽祭企画をぶち上げた。 たったふたりから始まった「まなふぇす」 今回のコアメンバ

        • 世にも素敵な大失敗をした話〜謙虚さと権威主義のはざまで

          取り返しのつかない失敗だった。しかし、心から人に感謝の念を抱いた。 そんな、かけがえのない失敗をする機会を得た。そんなお話。 剥き出しの嫌悪感を患者に投げつけられた こんな剥き出しの嫌悪感を患者さんからぶつけられたのは、医師になってから全く初めてのことだった。翳りゆく病室。ショックのあまり、自分はしばらく、その場に突っ立ってしまった。 ある重い感染症(コロナではない)のために入院した山田さん(仮)。たらい回し気味に遠方から搬送されてきた。到着時は重症であることも相俟って

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          青春の叫びが地域をつなぐ@沖縄〜高校生による発信の持つ威力とは〜

          沖縄の高校生が手作りで成功させた「第1回Manabi-Ya文化祭」 2022年8月吉日、沖縄県うるま市勝連において、「地域活性化と多様性」をテーマとして開催された「第1回Manabi-Ya文化祭」。 イベントの持つ価値は何と言っても、この「言いたいことも言えない世の中」にあって、高校生という若い高エネルギー集団が、手作りイベントという形で発信したということだ。 ちなみに筆者は2016年から5年間沖縄に在住し、研修医として医師人生のスタートを切った人間である。 沖縄以上に自

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          慰霊の日2022

          「仲の良かったおじさんが泣きながら近づいてきて、急に頭にナタを振り下ろした。あの日島民は、互いに殺し合って死んだ」今年も慰霊の日がやってきた。日本唯一の地上戦が行われ、甚大な人的被害が出た沖縄戦が、77年前の今日終結した。このことを記念し、沖縄では公休日になっている。 自分は沖縄本島で4年間の激しい研修を過ごした。寝ても覚めても、とにかく患者を診続けた。しかし、どんなに疲れていても、病棟や外来を彩るオジィやオバーと接しているうちに、それも少し忘れることができた。 明るく朗

          ゼレンスキー大統領スピーチ全文和訳

          【ゼレンスキースピーチ 全文文字起こし、全文翻訳 Japanese⇢English below】 ウクライナのZelensky大統領がロシア国民に向けて絞り出した、まさに悲痛な叫びとも言うべきスピーチです。心打たれたので、自分で文字起こしをし、翻訳してみました。若い大統領がここまで腹を括って、誇りを失わず、あくまで対話を模索している。その姿を、我々の目に焼き付ける時です。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 今日、私はロシア連邦の大統領との電話会談

          医療者は存在自体が「傲慢」である

          医師にとって患者は何人もいるが、患者にとって担当医は1人だけである。患者は医師の一挙手一投足、何気ない一言に大いに翻弄され、一喜一憂する。当たり前のことだ。 医療者はどのようなことに気をつけて患者と対話すべきなのであろうか。 医療者と患者が話をする目的は、大きく2種類あると考えている。 ① 合意形成を目的とする対話 医療には「答えのない問」がいくつもある。「患者の退院先を自宅にするか、施設にするか」や、「がんの患者さんに対して、Aという治療を行うか、Bという治療を行う

          新型コロナウイルスとの戦い、真の最前線は医療者ではない

          重症COVID-19(新型コロナウイルス感染症)患者さんを、自衛隊の皆様のご協力の元、沖縄本島にヘリコプター搬送してきました。重症者の方がすでに院内に複数名いらっしゃり、人的資源・医療資源が不足する離島でこれ以上見切れないと病院が判断したためです。もちろん、常に重症者の輸送ができるわけではなく、基本的に「運べば助かる可能性のある状態と現在の医学で判断され」、かつ「受け入れ先の病院があり」、「自衛隊が許可し」、「ヘリを飛ばせる天候である」という厳しい条件を満たした時のみ可能です

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          なぜ、医療者は救急外来で「ダメ人間」を助ける必要があるのか? 〜悪人なほ往生す。いかにいはんや善人をや〜

          「ダメ人間」?ほんと? 忙しい救急外来で働いている際、ふと考えた話。 沖縄県で働いていると、救急外来はまさに「戦場」といった様相を常に呈しており、患者さんの中には何度も同様の理由で受診する、いわゆる貧困層に属する方々が大勢いらっしゃった。 ある医師は、彼らを見て言った。「ああ、またダメ人間が来た」と。 ダメ人間。一見すると、確かに彼らは自分で自分のことをコントロールすることすらできない、「ダメ人間」にも見える。ただ、本当にそうだろうか。 仮に彼らがそうだとして、それは

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          合理的な意思決定をするためには

          合理的な意思決定をするために、人間の不合理性を理解する  医療者も患者も、治療や予防の効果を最大化するために、すべてにおいて合理的(rational)に行動する。一見、医療はそのような基本的通念の上に成り立っていると思いがちであるが、実はそうとは言い切れない。人間の行動、とくにmaking healthy decisionsにおいては、合理的な考えとは到底言えない価値判断基準、すなわち不合理性(irrationality)が強く影響しているからだ。 人間は皆、めんどくさが