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10代の幼いわたしに「死」への新しい価値観を与えた一冊

自己啓発本は「読書」にカウントするのか。
確かに「読書」というよりは「勉強」に近い気もする。


新しい考え方を取り入れて自分の成長を促すため、事業に成功した実業家の成功までの道を知るため、自己啓発本を読む方はおおよそこういった目的を持って読書に励む方が多いだろう。

そしてわたし含め小説やエッセイを好む方はあくまで趣味や娯楽としての読書を楽しんでいる。
もちろん自己啓発本を読む方全員が勉強のため"意識的"に本を読むようにしている方ばかりではないが、自分自身の成長のために本を読む方は少なくない。

では、小説やエッセイではためになる知識や考え方は得られないのか。
少なくともわたしはそうは思わない。

分かりやすく〇〇という考えを取り入れよう!とは言わないものの登場人物の考え方や価値観に「なるほど、そういう考え方もあるのか」と思わせてくれる場面が少なからず存在する。

人生を変えたとまではいかなくても、「死」というものに対する考え方が変わった作品がある。

それが梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」と言う作品だ。

主人公である" まい "が不登校になり田舎に住むおばあちゃんの家でしばらく過ごすことに。
この物語はそこでの日常を描いている。

おばあちゃんは、まいに自身が魔女であることを告げる。
まいは「魔女」という存在に憧れを抱き、自身も立派な魔女になるためにおばあちゃんと2人でささやかな魔女修行をすることに。


庭に生えている草木に囲まれながらのおばあちゃんと2人での生活。
植物の恩恵を十分に受けながら平和な日々を過ごす。

ある日、まいはおばあちゃんに「人は死んだらどうなるのか」と問いかける。
まいは小さな頃、父親に死後の世界のことを聞いたことがある。その時に
「死んだら最後の最後。もう自分というものも分からなくなる」
と父に言われたことにトラウマを抱えていた。

そんなまいにおばあちゃんが自身の思う死後の世界を話すシーンがある。


「人間は身体と魂が合わさってできている。
身体は生まれてから死ぬまでのお付き合いだけれど、魂はもっと長い旅を続けなければならない。

新品の赤ちゃんの体に入り、歳をとって使い古した身体から離れる。
死ぬということは今まで身体に縛られていた魂が自由になることだと思っている。

けれども魂は身体を持つことでしか物事を体験できないし、体験をすることによって魂は成長する。
なので身体を持って生まれるということはまたとないビッグチャンスなのだ」
と言っていた。

なるほど、つまり死=終わりではなく自由や開放。

少しスピリチュアルな話だが、これを初めて読んだ高校生のわたしは戦争やドキュメンタリー映画で「死」に対して少し敏感になっていた。


死ぬ瞬間は苦しいのだろうか、自分の体が冷たくなっていくのをどんな気持ちで見届けるのだろうか。


定期的にくる「死」に対する大きな恐怖心がこの日を境になくなった。
むしろ、死ぬその時までに学べるだけ学んで経験できることを出来る限り全部経験して悔いなく死のうとまで思えるようになった。

人生を変えたとまではいかなくとも、価値観を変えて前向きに生きるきっかけになった大切な一冊だ。

#人生を変えた一冊

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