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小説

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noteに投稿した小説をまとめたマガジンです。
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記事一覧

『 ” モ テ ” な る も の 』

「これが企画書?」  疑わしげな目で見てくる上司に、はいそうです、と彼は自信満々に即答し…

津田槙達
2年前
2

淡く揺れる、思春期の想いたち

『しょーらいのゆめはねー、お嫁さん!』  屈託のない笑顔。  ありきたりだ。  ……本当に…

津田槙達
2年前
1

愛のカタチ

 山、畑、田んぼ、平屋。見かけたのはお年寄りとトラクター、軽トラくらい。  とにかく緑が…

津田槙達
2年前
3

人間が三十歳で死ぬ世界

「俺らも今年で二十四歳。来年は老人ホームか」  身長百センチに満たない者から、二十代の者…

津田槙達
2年前

虫取りとパンデミック

 さやかちゃんとケンカしちゃった。  うちの学校の構築空間って、アバターだから顔が見えな…

津田槙達
2年前

 壁。これほど象徴的なものが、他にあるだろうか。  その向こうが見えることはない。部屋の…

津田槙達
2年前
1

なつやすみ

『お待たせぇ~二人とも』  江菜と凜花が覗き込むスマホの画面に、眼鏡の女の子が何かを齧りながら戻ってくる。  新幹線のテーブルは不安定だったので、江菜は立て置くのを諦めた。 「美味しそう! 何食べてんのー!?」  隣の凜花がグイッと顔を押し付けてくる。 「うぉおい、そんな寄らなくても映ってるから!」 『五平餅! 美味しいよ~。この辺だと有名なんだって』  もしゃもしゃと頬張りながらゆるーく話す子は卯月。  半年前に引っ越した幼馴染、卯月の家で一週間お泊りにいくため、夏休みを使

「別れたのは俺のせいじゃない」

 振られた。 「なんで……」 『だから、仕事が忙しくてあまり二人の時間が取れないし、私も親…

津田槙達
2年前

六年越しの、勝手な失恋

 帰省って、距離が中途半端な人ほどやらない気がする。  いつでも帰れる、そう思ってしまう…

津田槙達
2年前
3

私がパパ活で若い男を選ばない理由

 私は仲谷絵里。ハタチ。大学生。  ここのところ月四回くらい、タワマンパーティに行ってい…

津田槙達
2年前

「楽」と「夢」

「なぁ、二億か三億くらいあれば人生アガれんだっけ?」  休みの日だからと十四時間ほどダラ…

津田槙達
2年前
1

死して時間が止まるまで

 優子が死んで、一年。明るいムードメーカーで太陽のようだった彼女は、赤ちゃんの時から瀬奈…

津田槙達
2年前

女子高生に感謝した日

「――やっぱセレブやばいわぁ、超憧れる」 「誰これ?」 「エレナ・パーカーだよ! インスタ…

津田槙達
2年前
4

青い春。その先

 外見の印象が強い人は、損をしやすいと思う。 「はーあ」  昼休み、陽子は一人でいつもの定食屋に来ていた。ほかほかの中華飯セット、味噌汁にまず手を出す。  地方都市も数駅離れれば、寂れ具合は加速度的に増す。駅ビル近くのこの店は老舗で、味も量もちょうどよくて、何よりあまり混まなくて静かだ。昼時なのにサラリーマンが三人と、春休みだからか高校生っぽい二人組がいるくらい。店主が穏やかなのも、居心地よく感じる理由の一つだろう。  そう、穏やか……。 『陽子は物静かな感じだからさ、そうい