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泣きまくった映画「糸」の感想と考察


時刻は午前9時。場所は初台。友人とのドライブ終わり。

すれ違うのはカジュアルな服装に身を包みオフィスに向かう女性やエリートな雰囲気を纏うサラリーマンばかりで、私服だった自分は完璧に場違いで、ここに居る事を許されていないような感じさえした。

この後どこに行こうか、何をして時間を潰そうと考えながら彼らの流れに逆らう形で足早に新宿駅を目指した。

少しでも涼しい空間に居たかったのと、考える時間が欲しかったためその日は山手線に乗って池袋を目指した。近頃何かを見て思いっきり涙を流したいな~と強く思っていたので、映画を見る事に決めた。確定で2時間近く潰せる点も魅力的だった。山手線に乗ったため、乗車時間は8分ぐらいだった。

前々から映画「糸」は気になっていたので、作品を決めるのに時間はかからなかった。


***


糸、とても良い映画だった。涙が止まらなかった。

傑作に出会ったので、つらつら文章にしていこうと思う。

ここからは映画「糸」を見て個人的にグッときた2つのシーンについて、考察を交えて適当に書いていく事にする。


※以降ネタバレを含む内容になるのでご注意ください

一部「君の名は。」のネタバレも含んでいます。


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1.青色のウィンドブレーカー

まず1番初めのシーン。菅田将暉さん演じる漣が自転車で坂を下るシーン。彼は青いウィンドブレーカーを羽織っていた。
これを見た時、あぁ、作中で誰かが亡くなるんだろうなと思った。

というのも、映画の中で(創作物全般かも?)青色は人間の死を示唆しているのだ。実際に、大ヒットした人気映画「君の名は。」でもやたら青い空や雲から隕石が降ってくるというシーンから始まり、実際に隕石によって街が丸ごと無くなったという描写がある。


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これは何も映画に限ったことではない。
平井堅さんの『瞳をとじて』のミュージックビデオでも同じである。

”Your love forever
瞳を閉じて 君を描くよ それだけでいい
たとえ季節が 僕の心を 置き去りにしても”

「愛した人を失い、忘れらずに思いを馳せるひとりの人間」の心情を大切に、繊細に綴った歌。

注目すべきは3分47秒~4分15秒の場面である。女性が河原で倒れるシーン。
ここでは、青色を水に変えて表現している。

実は青色を水に置き換えているパターンは他にもある。
映画「呪怨」は風呂場で死体が発見されるし、「貞子」は井戸から現れる。後はトイレの花子さんなんかも同じで、ホラー映画では結構定番の展開になっているっぽい。

どれもいずれかのタイミングで必ず観客に対して死の色を刷り込もうとしているのが分かる。

では、何故青色が死の色とされているのだろうか。
気になってgoogleで調べてみた。すると、Wikipediaさんが色々と教えてくれた。

”ローマでは青は喪服の色であり、何よりケルト人やゲルマン人などの野蛮さを象徴する憎むべき、もしくは回避すべき色であった。”
”中国でも青は人のものではないという意味合いがあった。道教であの世とこの世を結ぶ門であるとされる中国豊都鬼城の門は青色に塗られており、手を触れると死期が近づくされる。”

なるほどなるほど。青色はどこかこの世のものではない、他世界の象徴のような色とされていたのか。また中東やエジプトでは魔除けの色とされていて、死者を守る葬儀や死と結びついた色でもあったみたいだ。青色が持つバックグラウンドを知れて良かった。


2.「大丈夫?」

お次は派手に転んだ漣に葵が絆創膏を渡すシーン。痛がる彼に対して「大丈夫?」と声を掛ける葵。すると漣は彼女の腕に包帯が巻かれているのに気付き、すかさず「大丈夫?」と言い返す冒頭10分?ぐらいの場面。

もうこのシーンを見た瞬間に泣いてしまった(早すぎる)。自分の事は置いておいて、相手の事を気に掛ける優しさ。自分よりも他者。その気持ちには邪な感情なんて一切存在しなくて、ただただ暖色で彩られた思いやりがあるだけだった。決して一方通行で押し付けのものなんかではなくて、高純度の優しさが心に刺さった。ピュアと言ったらどこか安っぽくなってしまうような、それほどまでに眩しいものを目の当たりにして涙が出てきた。

彼のように自己満足ではない真の優しさを無条件で届けられる人間になりたいな~と強く思った。


***


3.全体の感想


印象に残ったシーンがあまりにも多いのでここらで全体的な感想を書いて締めようと思う。

まず、この映画の注目すべきポイントは対比である。北海道の地から一歩も出ることなく、どこか人間として成長できていないような感覚にコンプレックスを抱えている漣を中心に、お酒の席に毎回違う女性を連れてくる幼馴染であり親友の竹原、暴力が横行する家庭で育つもシンガポールでの事業が順調で社会的に成功する葵などと変わっていく人間と変わらない人間の差がリアルに描かれていた。

葵が共同経営者である玲子に裏切られ、帰りに立ち寄った小汚いホーカーで泣きながらカツ丼を食べるシーンなんかはもう「あぁこれが人生か」と思った。


人生なんてクソくらえ!とどこに向けたらいいか分からない怒りにも寄り添って、「生」を全肯定してくれる。応援してくれる。

何者でもない人間の「生」のありようを丁寧に描写したこの映画は、四六時中ヘイトが飛び交うこの世の中にぶっ刺さる人類賛歌なんじゃないかなと思った。



***


ご読了ありがとうございました。
他にも感想はいっぱいあるのですが語彙力の限界を感じたため書くのをやめちゃいます。見返してみたら乱文の極みで背筋が凍りました、、、


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おわり

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